【短歌連作19首】まんじゅうこわいを信じる人を信じてみるのはどうだろう
鬼の目のように満月光る夜テーブルに隠れて悪だくみ
化粧水毎日床にこぼしてる私ですら星座は守るかな
ばかでかいショーウィンドウで爪とぎをする将来のために積み立て
信号ですっと目を逸らした彼が聖☆おにいさんとか読んでたらうれしい
顔よりも大きな花束抱きながら喋るのは花束の腹話術
当てずっぽうのこたえが当たるわけないねあのちゃんのデスボイスありがとう
雨風に濡れた新聞とアスファルトはげしく愛し合うむごい夜
どんぶりに顔をうずめて泣くことが異界の入口とは思わずに
母親の母親がわたしではない流氷の割れる音きこえない
ねばねばの悲鳴に絡めとられても高くつくのが一人カラオケ
いないシスターへのコンプレックスががんじがらめのチャックをおろす
舟のことは豪雨の電話ボックスにまかせて名乗るまえに帰った
少女らの悪口はずむカフェにいて夏より秋のかみなり贔屓
由緒ある裏切りといえば四季だから街をよごした逃げ足の数
涙腺が陰謀論に囚われて汗でも流すように流すの
ねじなんか最初からない見ればわかるだろって髪の毛をかきあげる
クレーンがぬいぐるみを取り出し口に落とす瞬間お利口になる
紙吹雪まみれで歌う友だちの毎日も紙吹雪だといい
エンドロールでにこやかに叫んでるひとに私もなりたくなった