【短歌連作14首】ヒロイン
落書きの箱の中身を考えて、これって神様からの告げ口?
失敗の自撮りで埋め尽くされてても母星がどこかすぐ言い当てる
お手紙 とおもって包みをひらいたらおりものシートで星のお姫さまはしょげました
雪の下にある自転車と直線に伸ばされたト音記号のきもち
亀裂に向かってそれはあざやかなヒッチハイク 月が止まっていれない夜に
乗り捨ての車にもひみつの名前 からあげをお菓子みたいに食べて
「壊れたラジカセ見たことがない 壊れてないラジカセも」 姫は水飲みが下手
星のお姫さまが紙ナプキンに書く電光石火の未来小説
君が背負う後光は缶詰の蓋じゃないからぎりぎり皮膚は切れない
虹を浴びるのにつかれて差す傘の恐竜柄の掠れの具合
遠目にはわからなくても音でわかる、除雪機の目つきはお人好し
雪解けのおおきな水たまりを跳んで君も神隠しが得意そう
切り取る手つきのまどろむような喫水線 あんまり大事じゃないことを訊く
☆
いきさつを忘れたら (この世が灰にまみれても?) いきさきを忘れたら