ドーナツの穴は存在するのか?
村上春樹作「羊をめぐる冒険」で主人公が言います。
「ドーナツの穴を空白として捉えるか、あるいは存在として捉えるかはあくまで形而上的な問題であって、それでドーナツの味が少しなりとも変わるわけではないのだ」
ドーナツの穴は、ドーナツの一部というよりは、ドーナツの外部。ただの空間。そこには何も存在していない。
しかし、ドーナツの穴がなければ、ドーナツの存在を作り得ない。ドーナツの穴があってこそ、ドーナツを存在させている。
ゆえに、私たちは、ドーナツの穴という存在を作り出し、ドーナツ自体を存在させているわけです。
目に見えないけど存在する。存在していることを知る。その存在を知ることで私たちは豊かになっている。そう、新しい価値を発見しているのです。