"目的意識を持て" の罠
多くのビジネス書や自己啓発本で、"目的意識を持て"という言葉がよく見られる。この言葉は一見、前向きで重要な教えに感じられるかもしれないが、その背後には見逃しがちな罠が潜んでいる。それは、単に目標を掲げるだけでは真の目的意識を持つことにはならないという点である。多くの人は、目的がなにかを意識すれば、目的達成できると考えているのはないか。違う違う。
本当の意味で目的意識を持つというのは、単に"何を成し遂げたいか"を考えることにとどまらず、その目標に対して責任を持つことを意味する。ここで言う責任とは、成功したら自分のお陰だし、失敗したら自分のせいであると受け止める覚悟を持つことだ。失敗は、無給、資産を失う、信用が地の底に落ちるというところまで考えなければいけない。それ以外は、ただ目的意識を持っているフリである。成功しても失敗しても自分の生活が変わらないのであれば、そりゃ人は頑張らんだろう。自分がその行動や結果に対して全面的な責任を負う姿勢というのは、そこまで考えることであり、そこまで考えないと、行動できない。まれに、理想を掲げて、その理想を実現するために行動できる人がいるが、今回はそういった類の人に関しては言及しない。
責任を持つことが目的意識を持つということ
例えば、プロジェクトのリーダーとして任命されたとき、ただ"このプロジェクトを成功させる"という目標を持つだけでは不十分である。その目標に対して"自分がやり遂げる"という強い責任感が必要である。成功したときは"自分のお陰である"と胸を張れる。対して、失敗したときは"自分のミスや判断が招いた結果"と認め、家、お金、家族、友人、恋人すべてを失う覚悟がいる。この姿勢こそが、真の目的意識を持つということに繋がる。
言い過ぎじゃないかって?確かに極端かもしれないが、目的意識を持てと言われて、そのつもりになって成功した人はどのくらいいるんですか。リスクを負った人が実現したい未来をつかみ取っている事実には変わりない。もちろん、そこまでの気概を持ちたくない人はいる。それはそれで、幸せな生活を送れるだろうし、そのままで無問題と思う。しかし、そういった選択をした人たちが、自分が成功しないことを政府や会社、他人のせいにして、ブーブー言うなら、10時間説教してやるから来い。
責任感があると、行動も自ずと変わってくる。自分の言動や判断が直接、結果に影響することを理解していれば、もっと注意深く行動し、周りとのコミュニケーションにも気を配るようになる。例えば、チームメンバーが困っていたら自分ごとのように支援するだろうし、進捗が滞っている箇所に積極的に介入するだろう。
責任の重みと成長の関係
責任を持つことが、個人の成長にも繋がる。責任を背負うと、失敗がより重大な意味を持つようになる。単なる"失敗"ではなく、"自分が原因で失敗した"という事実が突きつけられる。しかし、この失敗をきちんと受け止めて反省し、次にどうすれば改善できるかを考えることこそが、成長への道である。
例えば、営業担当者が大きな契約を失ったとする。その失敗が上司の指示に従った結果ではなく、自分の判断ミスや準備不足だったと認識できるなら、その教訓は次に活かせる。逆に、責任を誰かに押し付けてしまえば、自分の成長は止まってしまうだろう。
具体的な実践方法
結果に直接影響を与える報酬制度を提案する 会社員として自分の仕事に対する責任感を強く持つためには、仕事の成果と報酬をリンクさせる仕組みを作るのが一つの手段である。例えば、「もしこのプロジェクトが失敗したら今月の給料がなくなる」といった極端な仕組みを導入するのは非現実的かもしれないが、歩合制やインセンティブ制度を交渉してみることは現実的である。自分の業績が直接報酬に反映される仕組みを持つことで、仕事に対する責任感が一層高まり、モチベーションが強化される。
例えば、営業職であれば、契約を取れば取るほど給料が上がる歩合制を提案してみる。または、プロジェクトリーダーとして特定の目標を達成した際にボーナスが支給されるようなインセンティブを設定する。このような報酬体系にすることで、目標達成に対する責任感が強くなり、結果を出すための意識が高まる。
自己投資のリスクを背負う もう一つの実践方法は、自己投資にリスクを伴わせることである。例えば、仕事に役立つスキルを学ぶためのセミナーや資格取得に自己資金を使う。もし自分がそのスキルを活かせずに失敗した場合、単に時間を無駄にしただけではなく、金銭的な損失も感じる。こうしたリスクを取ることで、投資に見合うリターンを得ようとする意識が働き、責任感を伴った行動が促進される。
具体例としては、ある資格試験のために高額な講座を受講し、そのスキルを活用して成果を出さなければ、その支出が無駄になるという状況を自ら作り出す。これにより、自然と仕事に対する目的意識が強化される。
目標に対して個人的な責任を課す さらに、自分の業務目標に対して他の人の責任を排除し、個人的な責任を明確にすることが重要である。たとえば、チームでの成果が問われる場面でも、自分の担当部分が失敗した場合には、自分の判断ミスや行動不足が原因だと認め、改善策を探る姿勢を持つ。
例えば、プロジェクトが遅れている場合に「上司の指示が悪かったから」とか「メンバーのサポートが足りなかったから」と言い訳せず、あくまで自分がコントロールできた部分に目を向け、どう改善できたかを分析する。このような姿勢を持つことで、どんなに小さなタスクでも目的意識を持って取り組むことができるようになる。
結論
目的意識を持つというのは、単なる"目標を定める"ことではない。それは、成功や失敗の全責任を自分に帰すという覚悟を持つことである。目標を達成する過程で、どんな結果が出ようとそれを自分自身の行動の結果と捉えることが重要である。この責任感を持つことで、より高い目的意識を持って行動できるようになり、成長へと繋がっていくのである。