マガジンのカバー画像

俳句、短詩

183
自分の俳句作品や、鑑賞、思いなど気ままにまとめています。また、短歌などの短詩形作品などについても触れています。
運営しているクリエイター

2024年12月の記事一覧

2024日日俳句 自選10句&雑感

2024日日俳句 自選10句&雑感

【自選10句・2024日日俳句】律動

柏柳明子

半仙戯ティンカーベルの尖る羽
卒業のバスの後ろの二人かな
罰として腹話術師は緑蔭に
初蟬や後部座席に母を乗せ
風に風触れて青水無月の朝
大ねぶた闇の律動してゐたり
黒猫の振り返らない秋気かな
白線の外側にゐて愛の羽根
開店を待つ数へ日の商店街
探梅の声の眩しくなりにけり

【雑感】note「日日俳句」では、2023年1月1日から毎日・1つの俳句(

もっとみる
【俳句16句】縁~夏目友人帳 漆 第十二話「夢路より」に寄せて

【俳句16句】縁~夏目友人帳 漆 第十二話「夢路より」に寄せて



てのひらの友と仰ぎし大夕焼
夏夕べ用心棒は肩に乗り
黒板にうつすら残る恋歌よ

短夜の銀河は海に溶けてゆく
さくらさくら悲しいほどにふくらみて
紅葉かつ散る山奥の神の滝

まなうらに虹おなじ夢より覚めて

不器用な花壇褒められ夏の朝
夕飯へ走る先生草いきれ
妖のかそけき声や月涼し

自由てふ先生の眼は夏の空
「また明日」と言へる暮らしよ夕焼川
夏の夜の仲間や賑やかな誤解

うすばかげろふほど

もっとみる
【俳句14句】かなしき遊び~夏目友人帳 漆 第十一話「名前を教えて」に寄せて

【俳句14句】かなしき遊び~夏目友人帳 漆 第十一話「名前を教えて」に寄せて

かなしき遊び

とほき日の花野は蒼きレクイエム
いつもひとり彼女は色なき風の中
秋の蝶笑顔の仮面はづさずに
爽やかに恥づかしさうに名を訊かれ
勝負しませう秋虹の少女たち
約束のやう手のひらの青きアメ
寝転べば呟き秋の雲となる
秋しぐれ名乗ればふたたびの独り
花の降る花野こころの鍵捨てて
草の花かなしき遊びはじまりぬ
妖のこゑの届かず秋暮るる
待つうちに少女は秋夕焼の果て
八千草にあをく残りし祖母の

もっとみる
言葉と季語の新鮮な邂逅:嵯峨根鈴子句集『ちはやぶるう』

言葉と季語の新鮮な邂逅:嵯峨根鈴子句集『ちはやぶるう』

いてふちるちはやぶるうのやまひかな

「ちはやふる」といえば、百人一首の「ちはやぶる神代も聞かず竜田川からくれなゐに水くくるとは」(在原業平)、そして同名の漫画作品が思い浮かぶ。
でも、そもそも「ちはやふる」とはどういう意味なのだろうか?

こんなにダイナミックで厳か、かつ人間の表現とも関係のある言葉だったのか、と今回初めて調べて驚いた。

と同時に、鈴子さんの俳句作品とこの句集に相応しい言葉だな

もっとみる
【俳句12句】あの日~夏目友人帳 漆 第十話「約束の残る家」に寄せて

【俳句12句】あの日~夏目友人帳 漆 第十話「約束の残る家」に寄せて

あの日

日盛をくねりて神の訪へる
忘却の呪詛に覆はれ夏座敷
淡々と負ふ祓ひ屋の理を
解術のことば瀑布となりにけり
恩返ししたいと炎ゆる目に涙
雷鳴と化し放埓な神の四肢
約束の果たされ空蟬の屋敷
振り向きもせず祓ひけり灼けながら
恋ひとつ胸の泉へそれつきり
夕焼けて独りの自由吸ひ込みぬ
暮れかかる空にあの日の枇杷の色
受け取つてきつと今度は甘い枇杷

※俳句12句は、放映された物語からインスパイア

もっとみる
【俳句10句】のつぺらぼう~夏目友人帳 漆 第九話「儀式を阻む者」に寄せて

【俳句10句】のつぺらぼう~夏目友人帳 漆 第九話「儀式を阻む者」に寄せて

のつぺらぼう

血の絶えし屋敷や枇杷の燦燦と
振り返る先生の眼の黒南風に
夏座敷儀式を語る柔き貌
約束の神待つ廊下長くながく
一門を統べる泉の声をもて
ふと思ひ出したがごとく枇杷のこと
祓ひ屋のふたり下闇ほどの業
風死すや今はのつぺらぼうの家
炎昼の奥より毬の転がり来
小面の昏きまなこへ墜ちにけり

※俳句10句は、放映された物語からインスパイアされて作者(私)が詠んだものです。
今回、映像から季

もっとみる
暮れの綺麗なご挨拶:俳句誌『ユプシロン』No.7

暮れの綺麗なご挨拶:俳句誌『ユプシロン』No.7

昔、「暮れの元気なご挨拶~♪」という歌が印象的なCMがあった(調べたら日清オイリオギフトらしい)。
毎年このCMがテレビで流れるたびに「そうか、もう今年も終るか」と思ったものだ。

そして現在。CMはめっきり見なくなったが、年一回『ユプシロン』がこの時期に我が家のポストに届くたびに今年の終わりをしみじみ感じている。

さて。『ユプシロン』とは関西在住の四人の女性俳句作家たちの俳句誌。
No.7とあ

もっとみる