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俳句、短詩

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自分の俳句作品や、鑑賞、思いなど気ままにまとめています。また、短歌などの短詩形作品などについても触れています。
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2024年11月の記事一覧

誰かへの手紙:広渡敬雄句集『風紋』

誰かへの手紙:広渡敬雄句集『風紋』

『風紋』は広渡敬雄さんの第四句集。
本句集は、現在発売中の角川『俳句』12月号(2024年)で特集されている。
広渡さんは俳句だけではなく俳論やエッセイの分野でも活躍されており、
本noteでも取り上げた『全国・俳枕の旅62選』は日本詩歌俳句協会評論部門優秀賞を受賞した。

以下に感銘句を引く(全8章、1章ごとに1句ずつ)。

白牡丹剪りて空気を断ちにけり
団地老ゆ給水塔に夏の雲
ケルンより離れて

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【俳句10句】鼻唄~夏目友人帳 漆 第八話「月夜の夏目」に寄せて

【俳句10句】鼻唄~夏目友人帳 漆 第八話「月夜の夏目」に寄せて

鼻唄

おぼろより人形の指あづかりぬ
分かち合ふ秘密よ春の夜のぬくし
切れ切れに友の言葉は透明に
もうゐない人のてのひら朧月
鼻唄に春星ほどの仄白さ
寄り道は春満月の滑り台
真夜中の儀式のやうに散るこぶし
置き去りの人形の眼は月の色
花こぶし笑つてくれる友のゐて
今は言はず春満月の高々と

※俳句10句は、放映された物語からインスパイアされて作者(私)が詠んだものです。
今回、映像から季節は「春」

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【俳句12句】君を待つ~夏目友人帳 漆 第七話「苦手なふたり」に寄せて

【俳句12句】君を待つ~夏目友人帳 漆 第七話「苦手なふたり」に寄せて

君を待つ

ため息を掠めて紋黄蝶の羽
不愛想な自転車の兄春の昼
鳥ぐもり祖父と妹はるけくて
報酬はエクレア一つ夜半の春
手に載せし鍵に朧のけはひかな
ひこばえや兄の言葉のぎこちなし
ひとり守る家の廊下の陽炎へる
永き日や用心棒は猫のふり
鳳凰の書棚春陰の鍵穴
二人なら開く扉よ風光る
君を待つ春夕焼の兄と祖父
未来より降りやまぬ花いつまでも

※俳句12句は、放映された物語からインスパイアされて作者

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【俳句雑感】言葉が言葉を呼び、拓く世界~100分de名著「百人一首」第2回を観て

【俳句雑感】言葉が言葉を呼び、拓く世界~100分de名著「百人一首」第2回を観て

※以下は、筆者の私見であり備忘録です。間違いなどある場合はご容赦くださいませ。

現在、NHKのEテレ「100分de名著」では「百人一首」が取り上げられています。
先日放送の第二回では枕詞や掛詞、縁語や見立てなどの和歌のさまざまな技巧が紹介されていました。
31音を細かく見ていくとさまざまな技巧が繊細に組み合わされており、短い音数の詩型を存分に生かし、世界を膨らませるための効力の素晴らしさがよくわ

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【俳句12句】ふたたび霧~夏目友人帳 漆 第六話「廃駅・ふたつの輪」に寄せて

【俳句12句】ふたたび霧~夏目友人帳 漆 第六話「廃駅・ふたつの輪」に寄せて

ふたたび霧

鳥籠のこゑ霧よりもやはらかく
廃線やしのつく雨へ緑の眼
トンネルは黄泉比良坂蛇行せむ
妖の咆哮すさまじき木霊

左目のほほゑみ薄く滴りぬ
空割れてきこきこと木偶の肢体
傘を広げて祓ひ屋は花の下
禁術の匂ふ夕闇孕みけり
とこしへに欠けし右目よ天炎ゆる
泰山木散るほほゑみに影の色

雨上がるふたたび霧となる人よ
夕焼に縁の少し見えさうな

※俳句12句は、放映された物語からインスパイアさ

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【俳句10句】皆ゐて~夏目友人帳 漆 第五話「ちょびの宝物」に寄せて

【俳句10句】皆ゐて~夏目友人帳 漆 第五話「ちょびの宝物」に寄せて

皆ゐて

落日に閃く龍よ山眠る
鯛焼を食む先生のまろき頬
たからもの割れて友の手冷たくて
捨てられず冬の夕べを一人ゆく
ひとひらの龍の鱗を追ふ冬野
寒晴や脱線しつつ仲間たち
そつけなき先生の援護冬ぬくし
冬天の摑めば光なる鱗
虹色の櫛永遠の冬の虹
歓声の寒夕焼や皆ゐて

※俳句10句は、放映された物語からインスパイアされて作者(私)が詠んだものです。 映像より季節は「冬」と判断しました。
インスパ

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【俳句を読む】第28回炎環賞受賞作&『俳句四季』2024年10月号・精鋭16句「水切りネット」

【俳句を読む】第28回炎環賞受賞作&『俳句四季』2024年10月号・精鋭16句「水切りネット」

毎年、秋に発表される結社賞「炎環賞」。
20句の未発表連作を対象とした俳句結社「炎環」のコンクールで、今年は二作が同時受賞となった(筆者は本賞のスタート以前より炎環に在籍しているが)二作受賞は珍しいのではないかと思う(いや、もしかして初めて?)。

お二方、おめでとうございます!

受賞者のお一人は同人作家・北悠休さん。
作品「ノクターン第二十番」は、御母堂を見送られるまでの日々を抑えた表現で丁寧

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