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水車 第三章 エピローグ
森の麓に水車車が来ていた。見張りに立つ森人はその車に見覚えがあった。以前見た時にはピカピカに磨き上げられていた車体は薄汚れアチコチがベコンベコンに凹み部品のもげたらしい破断面もある。森人は隠蔽から姿を現し手招きをした。今森の客人となっているクウグンの長の車だからだ。
参謀長が出迎えた。
「長官ご無事で」
「司令君はどこ?」
まだ戻ってきてはないが、森人と組んだ陸戦隊の救出班が確保に成功して
水車 第三章 第10話
(ここは、ウロの中、只の人が神樹と交信出来る唯一の場所)シャオ!どこに居るんだ。みんな心配してたぞ。
(迷子?)小首を傾げるシャオを幻視する。
神樹からレコードのアーカイブに分け行って飛竜の事を調べてたら抜け出せなくなったらしい。
「食事とかどうしてる」
(問題ない、欲しいものが好きなだけ出てくる)ギクリとした。これは、あれだ、肉体が滅びて精神が神樹と融合したとかのパターンじゃね?
水車 第三章 第9話
参謀長からストップが掛かった。
「あの中を飛ぶ気ですか?」空一面カゲロウだらけだ。あ、むりだわこれ。
「発進中止!掩体へ戻せ!」兵曹の誰かが仕切る。
命令の先取りは駄目だよ。てか、ウチじゃ普通だけど。コンマ一秒争うような戦闘ばかりしてたからねー、仕切れる奴が仕切るみたいな習慣ついちゃった。うぉっと、ブレスだ。森、盛大に燃えてるなぁ、神樹大丈夫か?て、いきなり火、消えたし。え?真空魔法の応用?そ
水車 第三章 第8話
「え?あれが欲しいの?」森人が来て、竜骨をくれと言う。大型ドックに据えた巨大飛空艦のそれだが、やっと据え終えたばかりで今回の敗戦?まあ、放置になったわけだ。入手する筈の多数の大魔石もこの情勢じゃ無理だし。
いっか、持ってっていいよ。てか、重たいよ?ん?丸太空軍全部引き連れてきた?牽引するの?空を見上げて良く見れば、カゲロウのように揺らいでいる。てか空全部カゲロウじゃん。これみんな丸太?やべーな、
水車 第三章 第7話
連合軍を奇襲した騎士団の分隊は大きく迂回しながら本隊との合流点に向かっていた。追尾がないか時折振り返る殿の騎士から声が上がった。
「6時、敵飛空艇、多数!」
「散開!固まっていると殺られるぞ!」
騎士団の敵空軍との交戦は少ない。それも比較的低速の羽気球だけである。水素反応の矢をつがえた弓を向ける者がいても可笑しくはない。複数の騎士がそうした。そして唖然とした。狙う間もなく殺到し一連射で飛び去っ
水車 第三章 第5話
神樹は人間ではない。定義にも依るが森人の言うように、一柱の神の現し身とかでもない。勿論、精神生命体とか知性体とかでもなく、ただの結接点だ。
情報を取り込み固定化して蓄積する仕組み=アカシックレコードを保護し情報を選別する。その過程で情報を得るための経路やその経路の保護を行う機能もまたレコードの一部で、結接点である神樹を経由して作動しているのだ。
そこではシャオのような重要な情報源として紐付け
水車 第三章 第3話
水上機母艦の司令は苦虫を噛み潰した様な顔をしていた。この危急の時に何機かの水戦のエンジンが不調なのだ。酷いのになると離水すら出来ない。離水出来ても高度を取るのに難渋するようでは、とても戦闘に使えない。
訊けば魔素の吸い込みが悪くなっていて付与のブレイクもまるで機能していないと言う。やむを得ず、無事な水戦だけで編成し変則二個中隊十五機で発進させた。が、すぐに戻ってきて着水するものが一機。
エン
水車 第三章 第2話
長官には戦闘を慎めと言われたのであって戦闘をするなとは言われてない。なので偵察くらいなら問題ない。仮に迎撃されて戦闘になったとしても、慎んだけれどなっちゃった戦闘なので問題ないのだ、ないったらない。てかさ、空も飛べずに空軍司令名乗れないし。
「司令、2時、特殊艦、ありゃ水軍の母艦だな」操舵手君、君、もう敬語使う気ないでしょ。
「水軍の新型、揚がってきます!」前部射手君、何装填してるの、友軍なんだ