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【料理エッセイ】野菜が高い! 高過ぎる! だから豆苗を食べては育て、食べては育て、キッチンで怪しい草を栽培しているみたいになってるよ
野菜が高い! 高過ぎる!
キャベツ1玉330円とか、レタス1玉350円とか、ネギ2本で300円とか、スーパーの野菜売場に行くと震えてしまう。どれも自分の中で適切価格と思っている金額の1.5〜2倍なんだもの。ちょっと手が出せなくなってしまった。
とはいえ、野菜を食べなかったら身体に悪いような気がする。ただでさえ寒くなり、乾燥し、風邪をひきやすくなっているというのに栄養を摂らないというのはアレだよね。
で、どうなるかと言うと豆苗が輝いて見えてくる。いまのところ値段は変わってない。1袋100円ぐらいで緑のものを食べられるのはいまやめちゃくちゃ嬉しい。しかも、再生栽培をすれば2倍楽しめる。これはもう奇跡のような食材だ!
そんなわけで、いま、我が家では豆苗を食べては育て、食べては育て、4株分がキッチンで水に浸かっている。散らかっているから引きの写真はあげられないけど、アップで森林みたいに生い茂っている様子はなかなか圧巻。すくすく伸びてて愛おしい。
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これはだいたい最初の収穫から10日目ぐらい。2〜3日に1回豆苗を食べるようにしているので、4株あればうまいこと循環していく計算になっている。
基本的には放っておけばいいんだけど、一応、水の入れ替えだけは朝と夜、毎日2回はやっている。たまに忘れると水位がけっこう減っているので、見た目に反して大量に水を吸っているんだなぁと驚かされる。ただ、あのシャキシャキっぷりを考えれば、荒れ地育ちなはずがないんだけどね笑
ちなみに豆苗の食べ方はニンニク炒め一択。
薄切りにしたニンニクを冷たい状態のフライパンに入れ、ごま油を垂らし、輪切り唐辛子を加えてゆっくり加熱していく。油に香りを移していくイメージ。
その間、合わせ調味料を用意しておく。最近は顆粒の鶏がらスープ、塩、胡椒、砂糖、味の素を日本酒で溶くだけのあっさりテイスト。そこに醤油だったり、オイスターソースだったり、コクを足すようにしていたんだけど、足し算のし過ぎで豆苗自体の味がわからなくなっているきらいがあった。もちろん、美味しいんだけど、せっかくなら素材の味を引き出したい。
だから、ニンニクが色つきだしたタイミングで収穫しておいた豆苗を大胆にふぁさーっと投入してやる。とりあえず菜箸で平らにはしてあげるけど、あまりガチャガチャかき混ぜないのがポイント。動かせば動かすほど、細胞が崩れるのか、べちゃべちゃしてしまう。表面が焼けたら調味料を流し入れ、アルコールを飛ばしつつ全体を軽く蒸してあげれば、もう完成!
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こればっかり食べている。
まず、好きだから食べている。中華料理のお店に行ったとき、豆苗炒めがあったら必ず頼むぐらい好きだ。空芯菜炒めがあったら空芯菜炒めを注文しちゃうけど、その後、追加で豆苗炒めもいってしまう。
中には、外食で葉っぱを食うぐらいなら、麻婆豆腐とか青椒肉絲とか、そういう手間のかかった料理の方がいいと主張する方もいる。気持ちはわかる。だって、豆苗炒めなら自宅で簡単に作れそうだもんね。
ただ、実はそうじゃないから面白いのだ。なにせお店の火力は半端ないからね。家で作るものとはまったくの別物。むしろ、外食の凄さが如実に現れる一品と言っても過言ではない。
それでも研究に研究を重ね、わたしなりに家庭用コンロの火力でもお店っぽい豆苗炒めを再現すべく、先述の作り方にはたどり着いた。なので、個人的には満足のいくできになっているので、つい、リピートしがちなレシピとなっている。
しかし、本当はこのニンニク炒め以外に豆苗の食べ方を知らないのだ。
真面目な話、みんな、豆苗ってどうやって食べているの?
ネットで検索すると豆苗サラダとか、豆苗ナムルとか出てくる。なるほど、たしかに美味しそう。でも、いざ自分が作るかと聞かれたら、ニンニク炒めが間違いないと知っているせいで、冒険できなくなっている。
まずい。保守的になっている。
人間が保守的になるのは年齢のせいというより、死を恐れているからだという説を読んだことがある。
これに基づいて考えれば、たぶん、経済的な問題から豆苗を多用するようになっていることが関係しているのだろう。
大袈裟かもしれないけど、食費が1.5〜2倍になるというのはエンゲル係数の爆増を意味し、家計に尋常ならざる打撃が加わっている。人生はお金じゃないけれど、お金がないと人生は成り立たない。どうしたって不安が募ってしまう。
思えば、いま以上に貧乏だった学生時代から豆苗を食べては育て、食べては育てをやっていたのはいつでも生活が苦しい時期だった。気づけば、豆苗としんどさは自然と結びついていた。その向こう側には死の影がチラついている。
これって、豆苗に対して失礼だよね。だって、豆苗は悪いことをしていないんだもの。なんなら、こんなときでも低価格を維持している点で、貧困に抗っている野菜と称賛すべきではないか。
だから、もっと豆苗に対して、わたしは冒険しなきゃいけないと密かに焦っている。いつまでも保守的じゃダメ。豆苗の新しい面に目を向けなければ。
なのに、今日もまたニンニク炒めにしてしまった。
……次こそはサラダにしてみよう。
次こそは。そう、次こそは。
マシュマロやっています。
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