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【短歌】初句「たのしみは」で様々な日常の喜びを詠んだ江戸時代の橘曙覧『独楽吟』、令和の世でもめちゃくちゃ沁みる! +毎日短歌11月17-26日分

 デイリーポータルZの林雄司さんのポストがバズっていた。下の句を「それにつけても金の欲しさよ」で統一し、上の句を変えていく江戸時代の遊びを紹介していた。

 これは狂歌というやつで、「金欲し付合」と呼ばれる遊びだったらしい。誰でも簡単に狂歌を作れるということで、今で言うミームで爆発的に流行ったようだ。

 短歌の作法としては14文字が固定化されるのは詰め込める情報量が減るため、コスパは相当に悪い。ただ、定型だからこそ、切実さが伝わってくるという魅力にあふれている。

 似たようなものに初句を「たのしみは」で固定し、日常のいろいろな楽しみを詠んだ江戸時代のシリーズがある。橘曙覧の『独楽吟』で、かつて、クリントン大統領がスピーチで「たのしみは朝おきいでて昨日まで無かりし花の咲ける見る時」を引用し、話題になったとか。

 わたしはこれを俵万智さんの紹介を通して知った。五文字を無駄に使う点でもったいないように思われるけれど、その作品を見ていくとこの定型だからこそ、伝わってくる素朴さが堪らなくいいということだった。

 それで気になって、武田鏡村さんの解説付の本を入手し、実際に読んでみたのだが、なるほど、これはめちゃくちゃ染みる。

 例えば、こんな歌がある。

たのしみはまれに魚烹(に)て児等皆がうましうましといひて食ふ時

 歌人として、貧しい生活に耐えていた橘曙覧。魚は贅沢品だった。それでもたまにお金が入れば買ってきて、お母ちゃんが醤油やみりんで煮付けたものが食卓に上がったらしい。そして、子どもたちが美味しい美味しいと言う姿を見るのが人生の楽しみなんだと詠んでいる。たしかにそうだよなぁとしみじみ感動してしまう。

 他にもこんな歌もわたしは好きだ。

たのしみは常に見なれぬ鳥の来て軒遠からぬ樹に鳴きしとき

 珍しい鳥が家の近くの木にやってくる瞬間を楽しんでいる。こういう暮らしの隙間に訪れる予期せぬ出来事をいかに楽しめるかが重要なんだよなぁと、日々、忙しさにかまけて、身近な変化をスルーしている自分のあさましさが恥ずかしくなる。

 一方、こんな図々しい歌もあって面白い。

たのしみは銭なくなりてわびをるに人の来たりて銭くれし時

 金がないときに誰かやってきて、金をくれたら最高だなぁって元も子もない内容。ただ、そりゃそうに決まっているという開けっ広げに可愛らしいさを感じてしまう。短歌って、どこかクールさを演じてしまうもの。いまだったらエモい雰囲気を演出してしまいがち。なのに、ここまで俗っぽさを示せてしまうのは、逆に、カッコいいと感嘆しちゃう。

 なんというか、橘曙覧の『独楽吟』はどれも等身大の歌ばかり。しかも、初句「たのしみは」でわかる通り、難しい言葉を使わないので、サッと読んで、スッと入ってくる。この素直さは気持ちがいい。

 一応、狂歌ではないけれど、狂歌に通じる庶民派のセンスが光りまくっている。テクニックやら社会的メッセージやら、いわゆる短歌の世界で評価されるものではないかもしれない。でも、権威と関係ないところで短歌を愛好しているわたしみたいな素人にしてみると、「こういうんでいいんだよ」ってしみじみ頷き味わいたくなる。

 なんというか、落語を聞いたときに吹いてくる江戸の香りに満ち満ちている。理屈抜きで好き好き大好き!

 わたしもこういう短歌を詠みたいなぁ。


◇毎日短歌 11月17-26日分


11/17 お題「クレヨン」

ボールペン見当たらなくてクレヨンで
遺書綴ったら元気出てきた

 言葉って、どういう内容を書くかだけではなく、なにで書かれるかによって印象が大きく変わる。遺書にしたって、ボールペンとクレヨンでは深刻度が別物になってしまうだろう。

 これはメディア論で知られるマクルーハンの「メディアはメッセージである」というやつ。さらにその考え方を発展させる形で『メディアはマッサージである』という本があり、予言的なことが書かれている。

 短歌にしても紙で読むか、SNSで読むかで伝わってくるものに違いが出てくると思っている。媒体に合わせていかないとだね。


11/17 テーマ「ピザ」

なるほどね分けやすいのはいいけどさ
普通頼むか? 葬式でピザ

 先日、父方の祖父が亡くなった。葬式はあげなかったけれど、その後、食事をすることになった。父方の家はファンキーというか、常識がないというか、普通は選ばないだろってお店が候補に上がっていた。

 結局はお寿司に落ち着いたけど、こういうのって、難しいよなぁと思った。例えば、葬式にピザがなぜダメなのかと聞かれたら、答えはけっこう難しい。分けやすいという意味ではいいような気もする。ただ、頼まないよねって感覚はある。


11/17 一字題「錆」

頑丈な金庫で守り抜いた夢
もう開かない鍵錆びついて

 やりたいことを口に出さないともったいない。大事に、大事に、心の中に留めていると、いざというとき表に出せなくなってしまうかも。

 たしかに夢を語るとバカにされたり、ダメ出しされたり、嫌な気持ちになることはある。ただ、だからって閉じ込めっぱなしにしていたら宝の持ち腐れになってしまうので悩ましいところだ。


11/18 お題「初恋」

初恋はいつだったとか聞かないで
これが恋ならあれは戯れ

 初恋の定義って難しいなぁと思う。誰かを好きになるときって、自分史上、最大風速でキュンとくるものだから。これが本当の恋だったのかと価値観がガラッと変わることも多い。

 そう考えると、この瞬間こそ初恋で、むかしの話なんてどうでもよくなってしまう。なのに、むかしの話を聞かれても困るよ。わかるでしょ。いや、わかってよ。


11/18 一字題「家」

三十歳実家の敷居またぐとき
「お邪魔します」が不意に出てきた

 学生時代、一人暮らしを始めたのが二十歳の頃だった。それから十年が経ち、三十歳の年末に実家へ帰ったとき、まるで他人の家を訪問したみたいな感覚になった。

 どこが自分のホームなのか。なにが自分のホームを決めるのか。未だによくわかっていないけれど、最初は不安だった新しい街にもいつしか慣れていた。室生犀星の「ふるさとは遠きにありて思ふもの、そして悲しくうたふもの」が身に染みる。


11/18 テーマ「感謝」

なによりも感謝が大事と人前で
語るあんたは二重人格

 偉そうに「なによりも感謝が大事」と語っている上司に腹が立つ。だって、お前は一度だって社内の人間は「ありがとう」を伝えたことがないんだもの。

 サイコパスなのかな? それとも本気では思ってないけど、世間的にはそう言っておいた方がウケると思っているのかな? なにも言動が一致していなきゃいけないわけではないけれど、あまりに違い過ぎると怖くなるよね。


11/19 お題「雪」

雪解けの味がするねとふきのとう
食べしばあちゃんご飯おかわり

 母方のおばあちゃんは料理が上手。山菜だって、アクを抜いて華麗に調理してくれる。ふき味噌は本当に絶品。春になると食べたくなる。

 おばあちゃんはそれを「雪解けの味」と表現していた。いつもよりご飯を多めに食べていた。


11/19 一字題「息」

待ち合わせ場所で本読み澄まし顔
余裕な君のぜえぜえハアハア

「待った?」

「全然」

 そんなベタなやりとりがカッコいいのはわかるけど、息が乱れていると「あんたも遅刻したんじゃん」と面白くなってしまう。たぶん、ツッコミ待ちだよね?


11/19 テーマ「球技」

球遊びしてくるという父を追い
たどり着いたはでっかいマルハン

 うちの父はギャンブル全般が好きで、競馬をお馬さん遊び、競輪を自転車遊び、競艇を船遊びと言い換えていた。パチンコは球遊びだった。

 子どもながらにどれも楽しそうで、ねだって、連れていってもらったことがある。もちろん、行き先はどこも殺伐としている。期待外れにチッと思ったものである。


11/20 お題「父」

十余年ぶりにまみえし父の声
か細く高く子どものようで

 そんなギャンブル狂の父は十余年前に失踪した。どこにいるのかわからなかった。でも、弟だけはしばらく連絡を取り合っていて、先日、久々に再会した。

 なんか、やたらと声が高かった。見た目は明らかに老けていたけれど、そんなことより、声の高さが気になった。そうか。こんなに幼い人だったのかと諸々腑に落ちた。


11/20 一字題「Q」

問い合わせしたい気持ちを逆撫でし
役に立たないQ&A

 通販サイトとかでトラブルがあり、本当は電話で苦情を伝えたいのに、窓口が公開されていないケースが増えてきた。代わりに提示されるのはQ&A。これがまあ役に立たない。

 想定されていない問題だから、こっちは困っているんだよ。オペレーターの費用が大変とか、いろいろ事情があるというのはわかっているよ。でも、いざってときはお願いしますよ!


11/20 テーマ「宇宙」🚀

ルノアール大久保店に現れる
宇宙の声が聞こえる老婆

 喫茶店で本を読んでいるとまわりから怪しい話が聞こえてくる。この前は宇宙の声が聞こえるというおばあちゃんがいた。

 なんでも、CDというメディアを発明した人は宇宙からの声を聞いたんだとか。そうじゃなかったら、レコードをあんなに小さくできないでしょと力説していた。聞き手のおじいさんは納得していたのだろうか? そして、これはどういう詐欺なのだろう?


11/21 お題「蟹」

山間に位置する町から送られし
行ったことないふるさとの蟹

 ふるさと納税がお得なのはわかるし、すでに地方自治体の財政を支えてしまっているし、いまさらやめられないのは理解している。ただ、その土地の名物じゃないものを景品に設定するのはいかがなものかと首を傾げずにいられない。

 もちろん、そうしないと地域ごとに強い弱いの格差ができてしまうから、自由競争にしなきゃいけないっていうのはわかる。でも、そんな歪みが生じているのはそもそも「ふるさと納税」という制度に問題があるんじゃないの? 


11/21 一字題「煮」

横須賀の焼鳥立ち食いする店の
具材わからぬ煮込みのうまさよ

 これは横須賀にある相模屋というお店の話。自動で焼く機械から焼鳥がどんどん出てきて、それを客が直接手に取り、立ちながら食べるというロックなお店。値段はどれも一律なので残った串を数える方式である。

 奥にはお酒が飲めるテーブル席もあり、そこで注文できる煮込みがやたら美味しかった。中身はよくわからない。わからないけど、コクが半端なくってさ、箸が止まらなくなってしまう。


11/21 テーマ「マフラー」

首に縄かけられ不意に蘇る
マフラー巻いてくれた母の手

 いま、日本における死刑執行は絞首刑が採用されている。首に縄をかけられるとき、死刑囚はなにを思うのだろう。

 もし、幼い頃、母親にマフラーをかけてもらった記憶なんかが蘇っていたとしたら、更正とまでは言えなくても、後悔を覚えているのかもしれない。そんなことを期待してしまう。


11/22 お題「揚げ物」

忙しい夜に限って食べたくなるの
我は深夜の唐揚げ職人

 忙しい夜。夕飯はささっと作るべきなのは知っている。知っているのに揚げ物をしたくなるのは、油の中で食材が凄い音を立てながら、色を変えていく様子を見ることにストレス発散を感じているからなのだ。

 村上春樹がカキフライについて語っていたことを思い出す。

 カキフライは揚げたてを食べるのはおいしいです。でも、寂しいです。おいしいけど寂しい。寂しいけどおいしいという、永遠に循環していくわけです。
 で、僕は小説を書くときは、だいたい朝4時から5時に起きて、コーヒーをいれて、コンピューターのスイッチを入れて、それから文章を書き始めます。自分の中にある言葉を一つ一つすくいだして、文章にしていくわけです。
 これは孤独な作業です。「1人カキフライ」にすごくよく似てるわけです。小説は、誰に頼まれて書くわけではない。自分が書きたいから書くんです。カキフライだって、自分が食べたいから、誰に頼まれることもなく、自分で揚げるんです。

 面倒臭いけど食べたいから揚げる。わたしにとって、それが深夜の唐揚げなのだ。


11/22 テーマ「冬」

唐突な冬の訪れ唐突で
あちこちで鳴るハクションマーチ

 今年は冬が急にやってきた。秋、どこ行った? と探したくなるほど、暖かい日々のシャッターが勢いよく閉められてしまった。

 そうなると、あちこちからくしゃみや咳の音が聞こえてくるようになる。とても賑やかなんだけど、心がざわつく。喉の奥がむずむずしてきて、ヤバいかも……って。このマーチには加わりたくない。


11/22 一字題「文」

ぶんちゃんと呼ばれし友の本名が
あやであったと十年目に知る

 友だちの友だちぐらいの距離感だと、あだ名しか耳にしてないし、あだ名でしか呼んだことないし、本名を知らないということが起こり得る。一応、友だちという枠組みにはあるけど、それで関係を築けてきたので、いまさら尋ねるということもしない。

 なにかの拍子で本名を知ったとき、そうだったのかと驚いてしまう。でも、いまさら、この感動を誰とも共有できないんだよね。


11/23 お題「龍」

いまもまだ昇龍拳の出し方が
わからないまま大人やってる

 子どもの頃、父が買ったスーパーファミコンが家にあったので、『ストリートファイターⅡ』で相当遊んだ。でも、複雑な操作がうまくできなくて、昇龍拳の出し方が最後までわからなかった。

 父に聞くと、大人になったら使えるようになると適当に答えるだけだった。そんなもんかと受け入れたけど、三十歳を過ぎた現在、わたしはまだ昇龍拳の出し方がわからない。


11/23 一字題「稼」

稼げども稼げどもなお我が暮らし
楽にならざり……これなんでなの?

 明治時代、石川啄木は働いても暮らしが楽にならないと言っていた。その状況は令和になっても変わっていない。

 いや、なんなら、稼いでも税金でたくさん持っていかれる点で現代の方が苦しいかも。なにせ、税率負担は45.1%だからね。半分近くとられてしまう。これ、なんでなの?


11/23 テーマ「寒という文字を使わずに寒さを表現した短歌」

ゴミ捨てに行くだけパジャマサンダルで
ドア開けぶるり布団に帰還

 朝のゴミ捨て、しんどいよね。ちょっと出るだけだし、パジャマのままでいいやと玄関を開けたら、考えの甘さを叱るように冷風が身体にびゅんびゅん当たる。

 あっという間に心は折れて、布団の中へUターン。どうしよう。このままじゃゴミ屋敷になっちゃうよぉ。


11/24 お題「晴れ」

鮮やかに晴れた空見て仕事など
する気なくして御苑に向かう

 すごく天気がいいというのに、満員電車に乗って、建物の中で仕事をしなきゃいけないなんてバカみたい。なにかもを投げ捨てて、新宿御苑でひなたぼっこでもしたい。

 とはいえ、生活もあるし、そんな大胆なことはなかなかできない。でも、短歌の中ぐらい、自由に振る舞っていたいよね。

11/24 テーマ「短歌の中でなにかを蔓延させてください」

字足らず字余り蔓延しているから
この短歌はめちゃ読みにくいの

 すごく難しいお題だった。なにかを蔓延させるって、どうしようかなぁと頭をひねった。

 せっかくだし、短歌ならではの要素を蔓延させることにした。結果、読みにくいものになってしまった。


11/24 一字題「謎」

憧れの知的な先輩謎解きで
役立たなくて蛙化現象

 謎解きイベントってかなり残酷。それまで知的キャラでやってきて先輩がまったく役に立たなくて、幻滅なんてことはしょっちゅうだ。

 逆に、いつも適当そうな人がひらめきまくってあたりして、カッコいいじゃんと見直してしまうこともある。お手軽に生きたまま転生できる空間かもしれない。


11/25 お題「地下」

あの家の地下から聞こゆ断末魔
道ゆく人は気づかないフリ

 虐待でも、監禁事件でも、近所の人は気づかないのかな? みたいな疑問を抱いてしまう。ただ、仮にうちの近くから叫び声が聞こえてきたとして、わたしになにができるだろう。

 明らかにヤバいときこそ、関わりたくないと思ってしまうのが人間だろう。だって、因縁つけられたら、こちらまで被害を受けてしまうかも。

 そう考えると匿名で通報できる仕組みがほしい。もしかしたら、すでにあるのかな? だったら、もっと広く周知してほしい。それだけで、みんな、対応できるようになるからね。


11/25 一字題「笑」

友だちの話笑ってみたけれど
真顔向けられミスしたと知る

 たまに友だちの話を聞いていて、なにを言っているのか、筋が見えなくなることがある。本当は聞き返すべきなのかもしれないが、ぶっちゃけ、別に興味があるわけじゃないし、リアクションで誤魔化しちゃえと笑ってしまう。

 すると、友だちは不満そうな表情に。マジか、面白いエピソードじゃなかったのか……。こうなるとめちゃくちゃ気まずい。シンプルに最悪だよね。


11/25 テーマ「兵庫」

陰謀と言う側もまた陰謀で
どの陰謀がましかの勝負

 兵庫県知事選をめぐるあれこれを見ていて、すべてが陰謀論に思えてしまって、なんか、疲れちゃった。

 斎藤知事を擁護する意見に陰謀論が含まれるのはわかる。でも、斎藤知事を批判する側も陰謀っぽくなるのは勘弁してほしい。

 個人的には斎藤知事が知事に向いているかと聞かれたら、向いてないよねって答えるけれど、知事を辞めさせられなきゃいけなかったのかと聞かれたら、その必要はなかったと思う。普通に任期が終わるのを待てばよかったのに、メディアが過剰に叩いたことで理屈が意味不明な事態になってしまった。

 こんだけぐちゃぐちゃになるとあるゆる意見が陰謀論っぽくなるのは仕方ないのかも。ひとつ、間違いないのは叩く側が嫌われる世の中になったということ。斎藤知事を叩けば叩くほど、みんな、自分は叩く側になりたくないから、指示してなくても斎藤知事に投票しちゃうよ。


11/26 お題「蝶」

ごめんねと素直に言えず思い出す
指でつぶした蝶の標本

 ヘルマン・ヘッセ『少年の日の思い出』は自分の経験した出来事じゃないのに、まるで実体験だったかのような強烈さが心の中に残っている。

 嫌なやつが持っている珍しい蛾の標本を盗んでしまった少年・エミール。バレたとき、「そうか、そうか、つまりきみはそんなやつなんだな」と言われてしまって、自分のコレクションを指でつぶしてしまうエミールの悔しさをわたしも持っている。


11/26 テーマ「あたたかさ」

ぬくもりを孤独な冬に添えるため
自販機で買うコーンポタージュ

 冬の道を歩いていると自販機で売っているコーンポタージュに心惹かれる。これ、やたらと美味しいよね。歩きながら飲むのは大変だけど、むかしからついつい買ってしまう。

 そして、缶の中に残った粒々をどうしたものかと困ってしまう。底をポンポン叩くのが、わたしにとっての冬らしさだね。


11/26 一字題「計」

なにもかも計算のうちと言うような
顔して豆腐ソースで食べる

 初めて行った定食屋。小鉢で出てきた冷奴に醤油をかけようとしたところ、ウスターソースが流れ出てきて、頭は真っ白。

 よく見ると容器のところにソースと書いてある。こうなったら、落ち度が自分にあるのは明確。交換をお願いする道理はない。

 仕方ないのでそのまま食べる。まるで最初からソースをかけるつもりだったんだと言わん表情で。無論、あまり美味しくはないよ。




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