人生のマジックアワーと沼のような5年間
カツセマサヒコ「明け方の若者たち」幻冬舎
けっこう前から話題になってた本をやっと、やっっと読んだ。
読んだ直後の感想を言うと、
もうすごかった。
とにかくすごかった。
一文一文全てが愛おしくて、
読んだ後、こんなに全力で抱きしめたくなった小説は初めてだった。
ピュアで純粋な恋愛かと思いきや、旦那さん目線に立つと悲しくなるような不倫の話。
良い意味で途中期待を裏切られたと同時に、まるでまっさらな純愛を見てるような、不倫だと感じさせない独特の言い回しに思わず酔いしれてしまった。
読み進めるにつれて、いかに大学生の考え方が甘すぎるっていうのを痛感し、
逆に、社会に出た本物の大人から改めて現実社会というものを強く突きつけられたような感じもした。
小説に描かれた現実社会は、
今まで読んだどんな自己啓発本よりも、私の心の深い部分を突き刺し、自分が理想とする社会人への憧れをグサグサ切り裂くほどのリアルさもあった。
男らしさのかけらもなくなって、どんどんかっこ悪くなっていくメンヘラな主人公に、読みながら何回も呆れてしまったが、
彼女だったから
こんなに死ぬほど好きになり、
彼女だったから
こんなに死ぬほど愛せた
と考えると、
こんなにも真っ直ぐに愛されてた彼女がすごく羨ましくて、同時に憎らしくもなった。
「ーーーLUCKY TAPES、indigo la End、きのこ帝国。
あの人から教えてもらわなかったアーティストだけで作ったプレイリストは、当時の自分を思い出さないために必要だった。ーーー」
私が小説の中で1番刺さったのがこの言葉。
読んだ人にしかわからないであろう、
この一文に込められたメンヘラさと愛おしさ。
彼女のことを忘れようと必死な感じが、
一文で伝わってくる直球さが、
なんとも切なくて、惨めで、
だけどなんか愛おしくなる。そんな言葉。
オススメです。