長久手

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最近の記事

オタク曼荼羅①

 Topsters 3というサービスを用いると、好きな音楽アルバムのジャケットを敷き詰めたオタク曼荼羅を作れる。  このようになる。  オタク曼荼羅の作成は楽しく、自己の嗜好に沿う遠い他者の創作物を列挙しているだけなのに、自画像を描いているような錯覚に陥る。それは傲慢な錯覚のように見えて、錯覚ではない。選好が自己に沿うというのは自己の過大評価で、むしろ選好に鋳られることを通じて、かろうじて形成されるのが自己だからだ。  つまり、以下は自己紹介だ。 第50位 La Ma

    • ノリアキ、夜の共犯者

       キリストは、信者の間に愛がある時には、いつも自分はそこにいると答えた。触れることのできる人としてではなく、人々の間の愛や連帯の絆として存在する。だから、「我に触れるな。愛の精神をもって他者に触れ、他者と関わりなさい」と。  しかし、今日、新型コロナウイルスの感染拡大の只中で、まさに我々は皆、他者に触れるな、自らを隔離せよ、適切な身体的距離を維持せよ、という呼びかけの集中砲火を浴びている。これは、「我に触れるな」という命令に対して何を意味するのだろうか。両手を伸ばしても相手に

      • There will be da Music.

         結局のところ、前者の「リアル」についてのヒップホップのパフォーマンス――「妥協なんてしない」(というメッセージ)――それこそが、まさに後者の「リアル」に、つまり、そういった真正性の感覚さえもが高い市場性を持つことが明らかな後期資本主義経済の経済的不安定さというリアリティに、容易に回収されることになってしまった。ギャングスタ・ラップとは、その支持者がしばしば主張するように、既存の社会状況を単に反映したものでもなければ、その批判者が主張するように、そうした状況をただ引き起こすも

        • それからはモールのことばかり考えて暮らした

           すべては消化されて均質なカスとなった。こうしてついにすべては終わりを告げた。検査され、油をさされ、消費されたカスは、今後は品物の中へと移動し、いたるところで品物と社会関係とのぼんやりしたつながりの内部へと拡散される。古代ローマのパンテオン(万神殿)ではあらゆる国の神々がごちゃまぜになって共存していたように、現代のパンテオンである膨大な「ダイジェスト」としてのショッピング・センター、われらのパンデモニウム(万魔殿)には、消費のあらゆる神々、いや悪魔たちが、つまり同じ抽象作用に

          『Mr. Sound Postman』 街角麻婆豆

           10年くらい習ったバイオリンを中学生の頃にやめた。最後までさっぱり上手くならないままだった。なんとなく落伍したような気がして、クラシックを聴くことからも遠ざかった。程なくしてロジャー・ウォーターズやトム・ヨークに夢中になった。バイオリンはエレキギターにすげ変わり、クロイツェルやカイザーは「Time」や「Paranoid Android」に取って代わった。プログレばかり聴いていたが、しきりにクラシックに範を求めるEL&Pなんかは、コンプレックスの淀んだ発散に聴こえて、当時はあ

          『Mr. Sound Postman』 街角麻婆豆

          『Confirmation: fractalized』 fractanisharmonicoo

           だいたいにおいて人は学部2年生ぐらいの頃に電化マイルスにのめり込む。別にアンケートを取ったわけでもないので知らないが、まあたぶんそうだと思う。あの、さりげなく意味ありげで呪術的でオリエンタリズムを刺激する、ときどきめちゃくちゃ面白くてしばしば結構グダグダになり、とにかく所要時間が長く集中力が必要で、しかもたしかにそこで他のどこにもない何かを見つけ出そうとしている野心的なコンテンツに正面切って向き合えるのがちょうどその時期だということだ。もちろん世の中には色んな人がいて、仕事

          『Confirmation: fractalized』 fractanisharmonicoo

          夜の歌

          (2016/10 紅楼夢12発行、表紙 ひそなさん(スアリテスミ))  そのようにして小説同人誌の各フォーマットを一通り作り終え、当初から考えていた『夜の歌』に取りかかりました。短編を建材として大きな構造物をつくる、色々な角度から様々な人物を扱った百科全書的な短編集にするというのが目標で、小説に小説とつけるような側面を含んだ少々不遜なタイトルになっています。もちろんそれは夢のことでもあります。  ブライアン・ウィルソンがある時期に掲げていた「ティーンエイジ・シンフォニ

          残響 東方プログレッシヴ・ロック合同

          (2016/05 例大祭13発行、表紙 水田ケンジさん(AQUARIA MUSICS))  合同誌にはディレクションの強いものと弱いものがあり、このグラデーションは読み手から見た作品の統一性の強弱、書き手(特にビギナー)にとっての福祉の範囲の弱強をそれぞれ大まかに規定します。それらの総合がコミュニティに対して還元する影響の質と量と部位を決定します。  この本は前者です。たぶん僕には前者しかできません。後者の健全な運営には巨大な博愛精神と鷹揚さが必要だからです。  こ

          残響 東方プログレッシヴ・ロック合同

          虹の麓が乾く頃

          (2015/11 紅楼夢11発行、表紙 ひそなさん(スアリテスミ))  タイトルは「他人の面倒が見られる時期」というようなニュアンスを含んでいると思います。3冊をセットで考える上で、同じようなものばかり出してもつまらないというか、その時点でのそのフォーマットの結論は一冊で提示しきるべきだという自己制約もあり、3種目にしようというところがありました(厳密にはこの間に合同誌を出しているため4種目です)。  それは短い短編集、長編、長い短編集ということですが、真ん中のこれが

          虹の麓が乾く頃

          蝶の裂け目

          (2015/05 例大祭12発行、表紙 ひそなさん(スアリテスミ))  まず『夜の歌』という短編集を作ろうというのが先にあり、そこから逆算して道筋を考えた結果、それを三部作の最後にしようということになりました。『夜の歌』というのは題が漠然としすぎていていきなり出すものではないというのがその理由の一つです。  三部作というのは高橋源一郎の60年代三部作が念頭にあり、メタフィクションの部分では繋がっているけれど別に話が繋がっているわけではないということです。最終的にはディ

          蝶の裂け目