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「ビートルズがいた時代」そして今「NOW AND THEN」
「僕の昭和スケッチ」211枚目
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BEATLESが大好きだった。
あれほど音楽が好きだった時代はない。
BEATLESの曲を聴いていると気を失いそうになった。何かよく分からないものが胸の奥から湧いてきて殆ど泣き出しそうになったりした。
それは、どんなに明るくご機嫌な曲を聴いていてもそうだった。
だから、「I Want To Hold Your Hand」が全米を席巻した時に、アメリカのティーンエイジャーの女の子達が髪を振り乱して泣き叫んでいた気分が、僕には、いや、多分僕らBEATLES世代にはみんな、判る。共有できる。
それはただの音楽というより、衝撃だった。
それ以外に語りようがない。
BEATLES以外にも僕らは、あの頃も、あれからも、沢山の素晴らしい音楽に出会った。同時代のローリングストーンズやサイモンとガーファンクルだって大好きだったし、80年代のマイケルジャクソンなんか最高だった。もちろん、クイーンも!
日本国内でもサザンなんて本当に泣けた。
人は皆、それぞれに自分が大切にしている音楽を持っている。
だが、一つの時代の感覚の根源まで届き、ティーンエイジャーの心と心を繋ぎ、眉を顰めていた大人たちも次第に巻き込み、世界が震えるほど共鳴した音楽はそんなには無い。
『もっと自由でいようよ、いられるよ!
もし、君が本当に望むならね』
どのアルバムにもそんな夢とメッセージが底に流れていた。
だが、彼らは名盤「Abbey Road」と「LET IT BE」を残して解散した。
どんなものにも始まりがあり、終わりがある。
BEATLESにもその摂理が訪れ、僕らは深い喪失感に呑み込まれた・・・
夢のような時代が終わった1970年・・・・・
僕らはBEATLESがいない世界に放り出された
<追>
そして、それから半世紀が過ぎたこの2023年の11月・・・
ありえないと誰もが思っていたBEATLESの正真正銘の新譜が世界に向けて発表された。
「NOW AND THEN」
凶弾に倒れたジョンの未発表の歌声が入った一枚のデモテープ*がオノヨーコからポールに渡り、ポールマッカトニーを中心にしてジョージもリンゴも加わり、紆余曲折を経て完成したBEATLES/奇跡の新譜だ。
現代AIの力で粗末なデモテープからジョンの声をクリアに取り出せたことが大きな要因だったという。
この曲は、僕にもう一度与えてくれた。
音楽を聴いているだけで泣きたくなるような、、、あの感覚。
全身をくすぐられるよなあの魔法のハーモニー。
もう二度と味わえないだろうと思っていたBEATLESの新譜を聴く喜び。
決して大袈裟でなく、生きているうちにこの曲を聴けたことは、なんて幸運なのだろう、と僕は思っている。ジョンレノンは、ビートルズは、もう一度僕らに幸せをくれた。この曲のことを誰かと話したい、、、そんな衝動に駆られてこの記事を書いている。
BEATLES
これほどに、誰かと分かち合いたいと思う音楽はない。
*この同じデモテープからは1995年に2曲(「Free as a Bird」と「Real love」)がアンソロジーとしてリリースされている。それらが、単にBEATLESノスタルジーの域を出ない作品だったことに比べると、まさにこの「NOW AND THEN」は名曲の感あり。
<©2023もりおゆう この絵と文章は著作権によって守られています>
(©2023 Yu Morio This picture and text are protected by copyright.)