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東京ヤクルトスワローズ観戦エッセイ

ヤクルトが勝った日も、負けた日も、打った日も、打たれた日も、ノーノーの日も、(ほぼ)毎試合、観戦エッセイをアップします。勝った日は喜びを倍にし、負けた日は悲しみを半分…いや8割……
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#村上宗隆

【6/13-15ソフトバンク戦●●●】できないことと、向き合うこと。神様ののびしろ。

むねちゃんのホームランはいつも目の覚めるようなスピードで、スタンドに飛び込んでいった。それは勝つ日も負ける日も、見ているこちらを励ましてくれた。相手にとってはきっと、怖い怖い1本だったのだと思う。「ここぞ」のところで、「打ってほしい」と願うところで、つまり逆側から見た時に「ぜったいに打たれたくない」と祈る場面で、むねちゃんはいつもいつも、記憶に残る1本を打ち続けた。 私はこの、「打ってほしいところで出る1本」というのが、一番すごいものだ、と思っている。積み重ねの数字も、打率

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【9/13巨人戦●】22歳の野球人生は、まだまだ続いてゆくから

思えば、ヤクルトを好きになった2017年、そこから5年後に、ヤクルトに日本人記録をどんどん更新する22歳が現れるなんて、思いもしなかった。そのとき、その22歳はまだ高校生で、おそらくプロ野球を夢見ながら、熊本の地で練習を積んでいた。 ヤクルトはというと、これまた「日本記録」である、シーズン96敗を成し遂げていた。なんにしても私が好きになった年のヤクルトがそうだったから、私の中では「野球というものはこういうものだ」と、いう感覚がしっかりとしみついた。チャンスはいかせないもので

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【9/6阪神戦○】チームだからこそ。

あまりに長い試合に私はソファに横になり、新しいトレーニングウェアを探し始めていた。「これで勝てる!」と思うたび、誰かが打たれ、追いつかれ、時間はもう11時を過ぎていた。息子はもうえらく前に塾から帰ってきて、オクラにまぶしたかつお節に誘われたねこたちにおっかけられながらごはんを苦労して食べ、そして食べ終えていた。つまりもう、わが家は「クロージング作業」に入ろうとしている。それでも、ヤクルトたちはまだ野球をやっていた。

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【9/4中日戦●】村上くんの成長と、子どもたちが手を離していくこと

打たれて戻ってくる田口を、みんなはベンチから出て出迎えた。先頭の青木は、田口の背中をぽんぽん、と叩いて押した。田口をしっかりと、ベンチに迎え入れているように見えた。 打たれた瞬間は見ている方もいつも、「ああ…」と、思う。打たれちゃったか…と、ため息をつく。でも、ベンチだってそれは同じはずなのだ。いや、もっと強く思うかもしれない。だけどそんな時でも、率先して前に見て田口の肩をたたく青木を見ていると、ここで座って見ている私は、やっぱりどんな時だって応援していくことしかできないの

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【9/2中日戦○】9月の始め、村上くんの50本の積み重ね

久々に来た神宮は、吹く風がいつのまにか少し冷たくなっていた。いつもいつも、夏はあっというまに過ぎ去ってしまう。ナイターが気持ち良い季節というのはほんとうに、一瞬だ。 いつだったか高津さんは「大切なのは9月」と言った。あまりに順調な6月と、その反動のようにあまりにも不調だった7月と8月前半。しんどい時というのはそれが一生続くように思えてしまう。でもそのしんどい最中に高津さんは「9月を見据えて」というようなことを、言った。それはとても程よい場所にある、道標のように、私には思えた

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【8/2中日戦○】5打席連続のホームランは、魔法みたいな軌道を描いて

遅れて神宮へ向かう電車の中で、おもむろにスマホを取り出し、そして速報をチェックする。ここのところ、だいたいいつもここですでに3-0で負けている…みたいなことが続いていた。「おもむろに」というよりは、「おそるおそる」、画面に目をやる。 すると飛び込んできたのは、2-0の数字である。なんと、先制している。どうしたどうしたと詳細を開くと、てっぱちと村上くんは二者連続のホームランを打っていた。 「え、また村上くん打ってるんやけど…」と、となりで本を読んでいたむすめに言うと、「ええ

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【7/31阪神戦○】それは「才能」だけで打った37本じゃない。

土曜の深夜に京都から帰ってきたわけですが、帰ってきてなにが一番大変かというと、荒れまくった家の掃除である。深夜から息子の宿題の丸つけをしてさらに片付けをし、翌朝も片付けの続きをしていたらすっかり疲れてしまい、午後はスーパー銭湯へ行くことにした。夏の疲れをみんなで癒そう作戦である。もちろん、この二日の敗戦の疲れも癒そう作戦である。 観戦エッセイがまだ終わっていなかったため、銭湯についてみんなお風呂へ入るのを横目に、私はまず休憩室でエッセイを書き上げることにする。バタバタとして

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杉谷の不在と、村上くんの「責任感」。

大量の塩を振って、なんなら口にする村上くんを見て、爆笑しながら同時に私は、そのある意味「けなげ」な姿に胸がいっぱいになっていた。リアル野球盤というテレビ番組の一コマである。 年末年始にかけ、どんどんヤクルトたちは行方不明になっていく。ぐっちに至ってはまじで毎年、どこぞの島へ行っていたりしてほんとうに消息がわからない。スポーツニュースはだんだん、選手の動向よりはコラムが増えていく。(それはそれで楽しいけれど。) そういう中で、とにかく「動くヤクルトたち」の映像は貴重である。

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【9/19広島戦◯】村上くんが見せてくれた100本分の希望

※こちらは有料設定ですが、村上くん100号記念に最後まで無料で読めます! あの日、あっというまに目の前に飛び込んできたホームランの軌道を、今もよく覚えている。 それは、ついこの間のことだったような気がする。でもそういえばあの日は神宮は満員で、(もちろん真っ赤に染まり)、そして安室ちゃんが引退する日で、新井さんが引退前の神宮最後の試合だった。ヤクルトたちは全員、安室ちゃんの曲を登場曲にして打席に立った。 去りゆく人がいる中、まだ若いけいじくんが投げ、ベテランの外野陣が後ろ

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【9/3広島戦◯】負の言葉はきっと正の言葉より届きやすいから

村上くんは一つ一つ、言葉を選ぶように話した。 「ファンのみなさんのチャンスで打てよという声が、自分の中に聞こえてましたし、なんとかチャンスで打とうと思って打席に立ちました」 「ジャイアンツ3連戦で一個も勝つことができず、すごく悔しかったですど、今日朝から塩見さんが、なんでも全力でやることが一番だと言っていたので、今日一日そういう気持ちでやりました。」 見ているこちらが思う以上に、あらゆる言葉は選手たちに届いているのだと思う。そしてこちらが思う以上に、選手たちだってもちろ

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