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東京ヤクルトスワローズ観戦エッセイ

ヤクルトが勝った日も、負けた日も、打った日も、打たれた日も、ノーノーの日も、(ほぼ)毎試合、観戦エッセイをアップします。勝った日は喜びを倍にし、負けた日は悲しみを半分…いや8割……
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マガジンの最後に。見えない物語のこと。

「観戦エッセイ」の最後に、息子の試合を見ながらヤクルトたちのことを考えていたことを、記しておこうと思います。 あれよあれよといつのまにか勝ち進み、都大会出場を決めた息子の学校の、都大会第一戦。相手チームにいたのは、息子が小学校のときの同じサッカーチームの友達だった。 息子も久々にこの日友達に再会し、そして私と夫も、この友達のパパとママに久々に再会した。夫は二人が所属していた小学校のサッカーチームのコーチをやっていたので、その友達のこともよく知っていて、思い出話に花が咲き、

マガジン卒業のお知らせ

コータローの引退の日、みんながガムテープで貼った「31」の背番号をつけて練習している写真を見て、前日の青木の引退の寂しさがふっとぶくらいに笑った。何度も何度も笑ってそして、こうして去ることができるコータローは、やっぱりすごい選手だったなと思った。いろんな選手がいる。青木がいて、そしてコータローがいる。それこそが、野球の素晴らしさなのだ、と。

【10/2広島戦◯】青木の好きなところ、がむしゃらなところ。

いつかこんな日が来ることはわかっている。誰もが引退の日を迎える。それは、青木だって同じだ。青木だって、引退をする。わかっていたけれど、わかっていたつもりで、やっぱりわかっていなかったことを、私は痛感する。 カツオさんは、マウンドで青木が来るのを待っていた。泣きそうな表情が、なんだか子供みたいに見えた。二人はそこで抱き合って、しばらく動かなかった。おじいちゃんたち泣いてるよ。と、言いながら、私はまた泣いた。 いつも思うのだけれど、ほんとうに寂しいのは、去る方より見送る方だ。

秋の始まり、必要なさよならのこと

秋なんてうそじゃないかぜんぜん涼しくなんてならないじゃないか。と、ノースリーブを着て扇子であおいでソウルの夜の街を歩き回っていた。ところがその一週間後、あれ、涼しい。と言って、その酷暑のソウルで買った長袖の白いブラウスをいそいそと取り出した。秋というのは忙しい。私は季節の中で夏が一番好きなのだけれど、そんな私でも夏の暑さにたまに嫌気がさしてくるので、ほかの人にとったらもはや親の仇みたいな感情がわいても仕方がないとも思う。まあなにはともあれ、そんな夏で疲れ果てた体にやってくる秋

むすめと離れた席で、野球を見る。【8/17広島戦◯】

今年も夏が駆け抜けていった。 私の忙しさ(というか慌ただしさ)はおそらくずっと変わっていないと思うのだけれど、なんだか年々、仕事と子どもたち周りのあれこれの用事が増え、夏のスピードが上がっていく。あるいはそれが、歳を重ねるということなのかもしれないけれど。 私の中で野球は夏が本番で、とにかく夏の夜の神宮が好きなのだけれど、それもなかなか行けないままここまで来てしまった。観戦エッセイも滞りまくっている。noteから「更新されてませんよ!」と通知が来る。(本当にごめんなさい。

【7/9阪神戦●】期待じゃなくて、信じること。

修行だ。 と、何度思ったかわからない。私は大切なことをいつだって、ヤクルトたちから学んでいるのかもしれない。忍耐とか、根性とか、宇宙の秘密とか。そう、ヤクルトは宇宙である。 「毎試合毎試合初回に失点していたらリズムも作れない。」と、たかっつぁんが言う。ここのところ、たかっつぁんは子どもたちのテストを見た私みたいな顔をしている。なんでこんな悪いのとか、なんでこんな初歩的なミスするのとか、問題よく読んだ?とか、前も言ったやん?とか、それだけはやっちゃだめって言ったやん?みたい

【6/14オリックス戦◯など】奥川くんの涙と、宇宙規模の話。

あの日、急にマウンドを降りた奥川くんを見ながら、「急に実家に帰らなきゃいけなくなったとか、そんなんじゃない?」と、ヤクルトファンの先輩は言った。まさか、怪我なんて、そんなこと信じたくない、という風に。 でもそこから約2年、奥川くんは1軍のマウンドに戻らなかった。日を追うに連れ、怪我の状態が明らかになり、そして時間はどんどん過ぎていき、「奥川くんがいないヤクルト」で、戦う日が2年続いた。 自身も怪我とそして手術の経験があるたてさんは言った。「本人はもう、めちゃくちゃ辛かった

【6/5-12交流戦】ターニングポイントはあとからわかるもの。

「旅に出ている間はだいたい負けてる。」が、いつもの流れである。ところが先週は韓国にいる4日間、ヤクルトはなんと3勝1敗という成績だった。帰ってきてもなんだかんだと好戦を続けている。 「6月、なんかめっちゃ勝ってない?」と、ニュースサイトを見ながら息子に言うと、「そーなのよ。めっちゃ勝ってるの。でも、こんだけ勝っても、最下位なの。」と、息子が言う。「まじで!?」と言うと、「うん、しかも、個人成績見ても、本塁打も打率も打点も今1位はヤクルトの選手だけど、最下位なの。」と、重ねて

【5/30ロッテ戦△】うまくいくときは謙虚に、うまくいかないときは必要以上に悲観的にならないように

山田哲人のホームランを見るたびに、ああ生きててよかった。と、大げさでなく思う。

【5/23横浜戦●24中日戦○など】 連敗中の負け方、勝ち方

0-4で負けている試合。ところがそこから、むねちゃんがホームランを打ち、サンタナがそれに続く。「二者連続ホームランなんて、久々に見たんじゃない!?」「楽しくなってきた!!」と、家の空気まで一気に変わったのを感じる。 そのあともヤクルトは、てっちゃんがヒットを打ち、そこにむねちゃんが続きさらに1点を返した。てっちゃんのヒットは、なぜだか胸を打つ。存在がもはや、ドラマティックになってきた。 だけどこれは、ドラマではなく現実だ。ヤクルトたちは、誰かを感動させるためではなく、勝つ

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【5/18阪神戦●】土曜日、気のおけない友人たちと、飲みながら。

打者の打ったボールが、きれいなカーブを描いて、スタンドに入っていく、その瞬間の、なんというか芸術的な美しさも、スポーツの楽しさの一つかもしれない。 と、私はもう何杯目かもわからない日本酒を飲みながら熱弁していた。土曜日、14年ばかりの付き合いになる友達の家で、信じられないくらいおいしい手料理と、ビールとワインと日本酒を、気のおけない女友達といっしょに飲みながら、めちゃくちゃごきげんになっていたのだと思う。なんせ、昼間っから飲み続けていたので。 すると特に野球に興味がないと

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【5/12巨人戦○】母の日の観戦

18時ちょっとすぎに神宮の前に着くと、「あ、ながぴ(長岡くん)の登場曲だ!」と、むすめが言った。 「え?まだ試合始まったばっかなのに?もうそんなに打順進んだの!?」と、スマホの速報を確認すると、なんと長岡くんの打順は2番になっていた。「にばん!!!!」と、私は思わず叫ぶ。 部活帰りの息子とは、神宮の中で待ち合わせしていた。「現地集合」なんて、神宮へ通い始めた頃は考えもしなかったのに。ほんとうに、子どもたちはあっというまにおっきくなってしまう。 三塁側内野席、といういつも

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【4/29-5/1巨人戦◯◯◯】ちゃんといいときがくることを。

思い出してみてほしい。今季、めっちゃ悔しい逆転負けをした日のことを。そして、それが連日続いた日のことを。思い出せるだろうか。私は正直言って、あまり思い出せない。

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【4/21横浜戦●】 雨の神宮の、記憶

ものすごおおおく久々に、レフト側の、ヤクルト応援席に座った。ライト側よりものんびりとしていて、後ろの席ではお父さんが小さな女の子に、「あれはね、ネクストバッターズサークルといって、次のバッターが待ちながら打つ練習をするところだよ」とか、ゆったりとした口調で教えていた。「つばみちゃんもうくる?」と、レインコートを着たその小さな女の子は何度も、お父さんに聞いていた。春の雨が降る肌寒い神宮で、なんだかそこだけはぽかぽかあたたかい空気に包まれていた。 一方私たちは息子と、「いかにし

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