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【9/13巨人戦●】22歳の野球人生は、まだまだ続いてゆくから

思えば、ヤクルトを好きになった2017年、そこから5年後に、ヤクルトに日本人記録をどんどん更新する22歳が現れるなんて、思いもしなかった。そのとき、その22歳はまだ高校生で、おそらくプロ野球を夢見ながら、熊本の地で練習を積んでいた。

ヤクルトはというと、これまた「日本記録」である、シーズン96敗を成し遂げていた。なんにしても私が好きになった年のヤクルトがそうだったから、私の中では「野球というものはこういうものだ」と、いう感覚がしっかりとしみついた。チャンスはいかせないもので、投手は打たれるもので、エラーは必ず起こるもので、そしてその多くは負けるものなのだ、と。

それでも、その中でもヤクルトたちは、たまに10点差逆転の試合を見せてくれたり、誰もが打てない中でベテランの42番が一人コツコツ打ち続けるところを見せてくれたり、ミスタートリプルスリーが色々悩みながら(その頃から色々と悩んでいそうだった)美しいホームランを見せてくれたりした。

その時私がヤクルトを見ていて思っていたのは、「それはそうとして、野球って楽しいな」と、いうことだった。あんまり、「負けず嫌い」とは言えない私にとって、応援しているチームが負けるという悔しさを知るのすら、少し新鮮ではあった。でもヤクルトというチームは、その時から、弱くても強くても、なんだか不思議な魅力に溢れたチームだったのだ。

だとしても、そのチームが4年後に優勝し、日本一になるなんて、思いもしなかった。そしてその翌年に、めきめきと力をつけてきた22歳が、次々と日本記録を更新するのを、目の前で見続けるだなんてもう、ほんとうに、想像できなかったのだ。

数年前、お昼に戸田の配信を見るたびに、ほんとうに見るたびに、村上くんは息をするようにホームランを打っていた。「また打ってるわ。」と、私は誰もいない部屋で一人つぶやいた。なんだかすごい子がやってきた、と、そう思った。

そして今、その村上くんは、もうまさに「息をするように」一軍の舞台でホームランを打つ。50号を打ち、51号を打ち、そこからだっって失速することなくコンスタントに打ち続け、とうとう今日、55号を打った。

もう、誰もが村上くんに注目する。いつもはヤクルトの結果なんて小さく小さく載っている新聞で、スポーツ面はもちろんのこと、1面にもでかでかと村上くんの写真が載っている。子どもたちが読んでいる小学生新聞にも、1面に村上くんが載る。お昼のワイドショーでやっていたよ!と、友達が教えてくれる。仕事の取引先の人には誰も彼も「村上すごいですね!!」と言ってくれる。野球に興味のない友達も村上くんの名前は覚えた、と言う。なんだかもう、村上宗隆は「今年の顔」なんじゃないかと思えてくる。

でも、いつだって村上くんは試合後、まだ少しあどけなさの残る顔で笑う。つやつやなほっぺで、にたっと笑う。50本塁打を打ち、そこから1本ずつ積み上げていき、そしてとうとう、日本記録に並ぶ55本を打っても、なんだか村上くんはいつまでも、あの、松山のキャンプで窮屈そうに自転車を漕ぐ「少年」のままに見える。戸田で黙々と(いやそれは当時の「戸田配信」は実況も解説もなくただ球場の映像だけが流れていたからそう見えただけかもしれないけれど)ホームランを打ち続けていたあの面影は、今もまだ色濃く残るように見える。

その顔を見ていると心底思う。ああほんとうに、大切にしていかなきゃいけない、と。このチームを名実ともに引っ張ってくれるこの子は、それでもまだ22歳なのだ。この先も、この子の野球人生は、まだまだ、続いていくのだ。

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