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東京ヤクルトスワローズ観戦エッセイ

ヤクルトが勝った日も、負けた日も、打った日も、打たれた日も、ノーノーの日も、(ほぼ)毎試合、観戦エッセイをアップします。勝った日は喜びを倍にし、負けた日は悲しみを半分…いや8割……
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2022年6月の記事一覧

【6/29広島戦○】「人生においてもっとも素晴らしいものは、過ぎ去って、もう二度と戻ってくることのないものだから。」

毎日、絶句している。こんなに毎日絶句することがあっただろうか。いやない。暑いからだろうか。暑いからかもしれない。LAに一ヶ月出張へ行っていた夫が帰ってきた途端軽井沢出張へ行くとか言い出したからだろうか。そうかもしれない。でもとにかく私は、毎日、絶句している。 いや、むねちゃんが毎日毎日当たり前のように狙い澄ましてホームランを打っているからである。あの子はもしかして、ホームランさえ打てばいいと思っているのではないだろうか。四番の仕事というのはホームランをここぞというところで打

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【6/28広島戦○】その1本にあらゆる思いをこめて

もう今年何回、「今日はさすがに厳しいか…」と思ったところで、このホームランを見たのだろう。というかなんなら今月何回見ただろう。いや、この一週間で何回見ただろう。というかこの人何本打つ気なんだろう。 「すっご………」と、私はもう、絶句する。「ひゃっっっほーーーい!!!」とか「きゃーーーーーー!!」とかそういう歓喜の叫びはもはやそこにほとんどない。絶句である、絶句。「ひょえ…」としか、声は出てこない。 「え、なんでこんな点入ってるの?」と、タブレットから顔を上げてむすめが言う

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【6/26巨人戦○】11点分の得点と、10点分の失点と

大勝の金曜日。大敗(19失点である)の土曜日。さて三戦目である日曜日は。 …打って打たれて打たれて打っての乱打戦である。 この三日間のスコアは、 16-6 5-19 11-10 …なんだったんだ。なんだったんだいったい。満身創痍とはこのことである。 ♢ 前日に引き続き、今日も東京は猛暑日。6月の猛暑日っていったいなにごとだ。と、思いながら私は神宮へ向かう。息子はサッカーの試合、むすめは児童館へ遊びに行き、(夫はもちろんまだ海外出張中で)お気楽な一人神宮である。

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【6/24-25巨人戦○●】大勝と大敗、二つのスワローズ

だいたい、二日まとめてのアップになる時は、こう、「できればあまり極端に内容の違う試合にならないといいな…」と、心のどこかで思っている。あまりに色が違う試合になると、テンションの持って行き所もちょっと迷ってしまう気がする。例えば劇的なサヨナラ勝ちと劇的な逆転負け、みたいな二つの試合が続くと、なかなか書くのも難しそうだ。 いやもちろん、二日まとめてのアップになるのはこちらの都合なわけで、というかそもそもこれを書いているのもこちらの勝手なわけで、それはあくまでもこちら側のわがまま

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【6/23中日戦○】ヤクルトたちに、置いてきぼりにされないように

「ああこのチャンスで三振だったらどうしよう」と思うことはよくあるけれど、「なんか打ちそうな気がするぞ…」と、思うことはそう、多くはない。なんというか私は常に「いついかなるときも調子に乗ってはいけぬ」と思っているし、「野球というのは負けるもの」だと自分に言い聞かせているし、いつだって「ゆでんたいてきおでんたいやき」なのである。なんせ、ハードな試合を見続けてきたのだ。 だけど今日の村上くんは、どうしても、「う…打ちそうだ…」と、思わずにいられなかった。アナウンサーは、「これまで

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【6/22中日戦○】あの日見た希望が戦力になるのを見ている

チャンスでてっぱちが打てなくて、1アウト満塁でオスナも打てなくて、ああこれは流れが…と、思ったところで、ムーチョが走者一掃のタイムリー2ベースを打つ。 これがもう、ここのところのヤクルトなのだ。 前日の敗戦の痛みはどうしても、あとを引く。サヨナラ負けというのはやっぱり、ダメージが大きいのだ。 あんまり勝ちすぎると逆に不安になる…と、言いながら、やっぱり負けると悲しい。そしていつも「ああこのまままた連敗がきたらどうしよう…」と、思ってしまうのだ。まったく、へなちょこである

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【6/21中日戦●】 「負けない」田口とみんなの覚悟

去年の後半、ヤクルトがやたらと負けなくなって連勝した時期、火をつけたのは、高津さんの「絶対大丈夫」が生まれたときだった。(そういえば、あれもナゴドの中日戦だった。) じゃあ今年のこのやたら負けないモードが始まったきっかけって、なんだったんだろうねと息子と話していて、ああそうだ、「田口の20球」だ、と、私は思い出した。 あのとき、田口が救ったのは、今野くんが招いたピンチだけじゃない、あの日の一勝と、そしてヤクルトの勢いだった。 その田口が今日は、10回裏にサヨナラを許した

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【6/18,19広島戦○○】 これは春の夜の夢だけれど

平家物語の冒頭が、すごく好きだ。 いつも、胸に刻んでいる。どちらかというと多くは、自らを励ますために。つまり自分が「盛者」でははない時に。(人生のほとんどが、「盛者」ではないため、まあだいたいいつも、ということである。) ところが今は、なんと、「盛者」として今この一節を、強く強く胸に刻み込んでいる。 ♢ ワンオペも三週目に入り、疲れた私は子供たちと愛する伊東へ一泊いくことにした。あまりに行きすぎて、私はとうとう、駅前からホテル、商店街、いつものお店、への道順を覚えてし

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【6/17広島戦○】 9回の、プライド

今年の個人的テーマの一つに、「ひたすらにプライドを低くしていく」というのがある。 新しいことへの挑戦にしても、続けていることにしても、得意と思っていることにしても、逆に苦手と思っていることにしても、それをする時にとにかく、失敗してもかっこ悪くても例え後ろ指を指されたとしても、まあ気にせずマイペースにやっていこう、と。 そもそも、他人は他人に基本的に興味はないわけで、私が失敗したところで、私が思うほど周りは気にしないし「後ろ指」なんて、そうそう指されない。 例えば、「三試

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【6/12ソフトバンク戦○】私の好きなヤクルトのままで

そうは言っても、あの、あのソフトバンクに、こんなふうに言われるといったいここはどんな世界なのだ…?という気分にもなってくる。 私はいまだにヤクルトのここのところの戦いぶりがなんだか信じられないというかついていけていないというか、なんかもう、戸惑いが先にきて、まだ「ああどうしよう、ここから大型連敗をしたら…」と、思ってしまっている。 交流戦に入る前だって、そして今、交流戦を終えてリーグ戦に戻ろうとしているタイミングでも、なにかの拍子でひょっとして…と、思ってしまっている。

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【6/11ソフトバンク戦○】ハグしたてっぱちの、その笑顔

村上くんがチームに来るまで、4,5年ほど前、てっぱちは一人でその重責をになっているように見えることがあった。その時チームで一番若い野手だったのに、それでもあまりに重い責任とプレッシャーが、その背番号1にのしかかっているように見えた。 てっぱちはまだ、25歳とかそれくらいだった。25歳なんて大卒で言えば3年目くらい、まだまだ若者だ。25歳の青年には、もっとのびのびプレーさせてあげたい、私は試合を見ながら何度も思った。でもその頃のヤクルトはほんとうになかなか勝てなくて、てっぱち

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【6/10ソフトバンク戦○】誰かが誰かをカバーしながら、強くなる。

イニングが変わるたびに、マウンドを降りるピッチャーと、マウンドに向かうピッチャーが交互に映された。その図はなんとなく、「ああこれは、千賀vsライアンなのだな」という感慨を、もたらした。その二人のピッチャーは、互いに言葉を交わすわけではない。そればかりか、DH制の元で二人は、グラウンドで直接向き合うこともない。マウンドですれ違うこともない。 それでも二人の表情を見ていると、これは、エースとエースの戦いなのだなと、私はなんとなく思った。 5番ぐっち(5番ぐっち!!)は、1回表

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【6/9オリックス戦○】ぐっちがそこにいることを。

めずらしく(めずらしく?)集中して原稿を仕上げようとしていた。あと少し、というところで、iPadの通知がピコン、と鳴る。iPhoneが壊れており、iPadとmacだけで日々なんとかしのいでいるのである。 それはプロ野球速報からの、公示の通知だった。毎日、この時間がくるたび私は「もしかして…」と、思っていた。そしてそのたび「…だよね。いやでも、みんながんばって。」と、思い、そっと画面を消していた。 今日だって同じことだろう、と、画面が開く数秒の間に、私は考える。今日の先発は

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【6/8オリックス戦○】 言い訳しない大人の、かっこよさ。

4回表、てっぱちが四球を選び、村上くんは2ベースを放ち、オスナの内野ゴロで1点を返して1-2まで追い上げた。このまま勢いに乗って追いつき逆転できるか…!と、いうところで、村上くんはタッチアップで本塁をねらおうと一瞬走り出してから3塁に戻り、戻りきれずダブルプレーとなった。じゅりはじわじわと3失点し、「なんか昨日とまったく同じ展開だ…」と、私はため息をついた。 こうなると、鍛えられた私の心はすぐに保険をかけ始める。「まあ、ここまでがうまくいきすぎたのだ。オリックスさんだって去

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