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【6/21中日戦●】 「負けない」田口とみんなの覚悟

去年の後半、ヤクルトがやたらと負けなくなって連勝した時期、火をつけたのは、高津さんの「絶対大丈夫」が生まれたときだった。(そういえば、あれもナゴドの中日戦だった。)

じゃあ今年のこのやたら負けないモードが始まったきっかけって、なんだったんだろうねと息子と話していて、ああそうだ、「田口の20球」だ、と、私は思い出した。

あのとき、田口が救ったのは、今野くんが招いたピンチだけじゃない、あの日の一勝と、そしてヤクルトの勢いだった。

その田口が今日は、10回裏にサヨナラを許した。今野くんが招いた満塁のピンチに呼ばれ、2ストライクまで追い込み、そこからヒットを打たれた。田口はしばらくマウンドに座り込み、中日の選手たちが歓喜に沸く中、しばらくそこを動かなかった。

「いつか田口だって打たれるだろう」と、思っていた。ピンチで田口が呼ばれるたびに、「それは今日かもしれない」と、覚悟した。いつか田口だって打たれるし、いつかヤクルトの連勝は止まる。全てがうまくいくことは、ありえないのだ。

だけど、その「いつか」がやってきた日、田口は見ているこちらが思う以上に、ずっともっと悔しそうだった。打たれた瞬間、思わず消したテレビを、いやでも…と、もう一度付け直してみると、そこにはまだ、悔しそうにすうずくまる田口がいた。

「いつか打たれる」ことは当たり前だとしても、それでもそこで投げる田口は「絶対に打たれちゃいけない」という覚悟を持って立つ。「いつか負ける」ことは当たり前だとしても、選手たちは「絶対に負けない」という思いで試合に臨む。当たり前のことだけれど、なんだか私はハッとした。見ているこちらが思う以上のものを、いつだって選手たちは抱えている。

野球の試合は、裏表がある。どちらかが勝ち、どちらかが負ける。サヨナラ勝ちをしたチームと、サヨナラ負けしたチームが生まれる。引き分けることもあるけれど、基本的には必ずどちらかが、負けることになる。1/2のチームが、負ける。でもその当たり前の事実を前に、選手たちは「負けない」ために戦い続ける。田口は、タフな場面でボールを投げ続ける。

その結果、うまくいかない日だってやってくる。連勝が止まる日も、いつもチームを助けてくれた田口が打たれる日もやってくる。

でもそれはいつだって、「負けない」と強く心に誓って戦った、その結果なのだ。

それは今の、「強いヤクルト」にだけ言えるじゃない。最下位に沈んだ年だって、連敗をしている最中だって、どんなに弱いと言われた年だって、やっぱり同じだ。1/2の「負け」を掴まないように、みんな必死に戦ってきたのだ。

その結果、負けることもある。それが16回続くことだってある。そのうちにどうやったら勝てるのかがわからなくなってくることもやっぱりある。それでも、「勝つ」ことだけを目指して、信じて、戦い続ける。

田口を見ながら私は改めてそれを思い出した。そしてもう一度、どんなときだって、応援していこう、と、そう思った。連勝が止まった、今日という日に。田口が打たれた、今日という日に。

うまくいくためにみんながんばるのだ。勝つために、必死に戦うのだ。それでもその結果、うまくいかないことも、負けることも、山のようにある。人生だって同じだ。

でもそれが、うまくいかなかった日が、連勝の止まった日が、田口が打たれた日が、またみんなの糧になるといいなと思う。そうやって少しずつ少しつずつ、また強くなっていけたらいい。

今日の一球がまた、田口を強くしますように。それがまた明日に、つながっていきますように。

田口、いつもいつもありがとう。


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