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Twitter詩「遊魚」
障子に透ける花焔
尾引く遊魚は濃紺の色
座敷流るる青竹の香に
童女の声染み入らむ夜
刹那震わす琴の音は
我が衣手の綾とならんや
障子に透ける花焔
帳は夜霧
世は帳
身のはかなさを抱えつつ
遊魚尾を引き空昇る
紅くれないの
唐紅
障子に透ける花焔
我が衣手には曼珠沙華
咲いてひらいた魚の鰓
【読み】
・香(か)
・童女(わらしめ)
・鰓(えら)
Twitter詩「廃色」
俺らの汚した暗闇で近所の親父はのら犬をぼう
ヒビの入った瓶底の叙情ぶってるウィスキー
白樺の枝を手折るよに乱れる性は冬に腐りて
突き立てられた月光に我ら臓物を破かれている
夜を迎える人間の野生が皿を割っており
夕陽に焼かれ膿んでいる乳房は女だけのもの
月に背かれた悔しさで俺らは今日も泣き疲れ
路地に聖歌は降り止まぬ落葉風の祈るよに
Twitter詩「飾られたい感情」
ワンフレームに切り取られた世界を満足そうに眺めているのは、
退屈に麻痺してしまったからで、
浜に打ち上げられた海月とおそろいなんだ。
自己完結した物語はいつだって深海みたいに盲目で、
それを安定剤として使用しているうちは、
どこまで潜ってもひとりだよ。
できることなら、ショーウィンドウに飾られたいね。
いつまでも綺麗なままでいられるよう、
感情をピン止めして、標本にできればい
Twitter詩「凍詩」
つめたくてさみしくてつめたくて
なにもないねつりょうの
くうきのやわらかないろみ
うみとよると よるとつき
ひえる
あめのひのささやかないたみ
なにもないねつりょうの
ちいさなおんかい いきをすうおと
ひえる
しずくするこだま
しんとなくねつりょうの
なめらかななめらかなとうし
つめたくてさみしくてつめたくて
よる
はかなくなるつきのひかり
Twitter詩「落ち葉」
葉脈をのばし
空と結合する
それは ひとひらの回帰です
母のもとへと着陸したい
そう叫ぶ あなたの無線は
ひらり ひらりと
飛来する
あの空からでしょうか
それとも 願いからでしょうか
もう誰のおはなしも
聞きたくはないのです
だって わたしには声がなく
だって あなたには耳がない
ひとひらの
おかえりなさいを
風のたよりに待っているのです