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「信じる」ということ
信じることの二つ信じることの二つの形
私たちは日常生活の中で、「信じる」という行為を繰り返しています。何気ない会話や選択、さらには人間関係に至るまで、信じるという行為が密接に関わっているのです。しかし、よく考えてみると「信じる」には大きく分けて二つのパターンがあるように思えます。それが「無意識的に信じる」と「意識的に信じる」という行為です。
ドラマに見る「信じる」という行為
ドラマや映画を思い浮かべてみてください。
「あなたのことを信じます」「私のことを信じてください」
といった台詞がしばしば登場しますよね。これは、ドラマ内のキャラクターが 意識的に 相手を信じる状況を強く促している例と言えます。
「あなたを信じます」と告げる側:
相手に対して「疑いの余地があっても、それを乗り越えて自分を選んでほしい」という、ある種の意思表示をしています。「私のことを信じてください」と求める側:
相手が他の可能性や疑いを抱いているかもしれない前提で、その選択肢を排除してほしいと願っています。
しかし、このように 意識的 に信じることを迫られると、どうしても「疑い」という選択肢が頭に浮かんでしまいがちです。そのため、信じた後にも「本当にこれでよかったのだろうか?」という迷いが生まれ、幸福度を最大限に得にくい側面があります。
「無意識的に信じる」と「意識的に信じる」
1. 無意識的に信じる
無意識的に信じるとは、そもそも 疑いの想像力が働かず、対象を自然と“正しい”とみなす 信じ方です。
メリット
他の選択肢を検討するストレスや不安がなく、純粋な満足感を得やすい。
自分の決断に対する後悔や比較が生じにくく、幸福度が高い傾向にある。
デメリット
実際には他に優れた選択肢が存在していても、気づけないままやり過ごしてしまう可能性がある。
騙されるリスクが高まる。
2. 意識的に信じる
意識的に信じるとは、 他の可能性や疑いを考慮したうえで、それらを排除し“これを選ぶ”と決断する 信じ方です。
メリット
自分で選んだという主体性が生まれ、納得感や責任感を伴う。
騙されにくい。
合理的な判断の余地が残されている。
デメリット
多くの情報や選択肢を検討するため、不安や迷いがついて回りがち。
「もっと良い選択があったかも」という比較が生じやすく、結果として幸福度が下がる場合がある。
疑いを排除し、都合の良い解釈に落ち着かせる
では、そもそも「信じる」とは何なのでしょうか。
私が思うに、それは 「自分が想像し得るあらゆる疑いを排除し、対象にとって都合の良い解釈を自分なりに落ち着かせること」 ではないでしょうか。
無意識的に信じる 場合は、疑いや比較の余地を最初から設けないため、結果として「都合の良い解釈」を自然に選び取り、純粋な幸福を得やすい。
意識的に信じる 場合は、一度は疑いや可能性を考えたうえで、それらを「意図的に」手放すという行為が含まれます。そこには深い納得や責任が生まれる一方、常に比較対象を意識しているため、どうしても幸福度に揺らぎが生じる可能性があります。
人間関係における無意識的な信頼の力
人間関係においては、特に 無意識的に信じ合える関係 が強力な絆を生み、より高い幸福をもたらします。家族やごく親しい友人との間には、「疑う」という発想自体が生まれにくいケースが多く、相手を自然に信じられる状態が築かれているものです。
一方、「私のことを信じてください」と明言されると、どうしても「信じる/信じない」の二択を強く意識してしまいがちです。そのため、関係が深まるどころか、かえって迷いや不安が大きくなる場合もあります。
結び──自分に合った「信じ方」を選ぶ
無意識的に信じるか、意識的に信じるか。そのどちらも正解ではなく、大切なのは自分の状況や価値観に応じて選ぶことです。
「最善を選びたい」と思うなら、情報を集め、比較し、納得いくまで調べるのが意識的に信じる方法です。このプロセスは責任感や深い納得感をもたらしますが、その一方で迷いや不安が幸福度を下げることもあります。
一方、「単純に幸福を得たい」と願うなら、調べたり比較したりする行為をやめるという選択もあります。完全に無意識的な状態にはなれなくても、意図的に疑いの目を手放すことで、信じる対象への満足感を高められるのです。無意識的な信頼は純粋な幸福感をもたらしますが、そのためには「調べない」「比較しない」という意識的な選択が求められます。
私たちはその時々の状況や目的に応じて、これらの信じ方を柔軟に使い分けながら生きています。どちらが優れているというわけではありません。重要なのは、「自分が幸福を感じられる信じ方」を選ぶことです。その選択こそが、私たちに安心感や幸福感をもたらし、より満たされた人生へとつながるのではないでしょうか。
「信じるという言葉は信じていれば生まれない」
は、アニメ『僕だけがいない街』の主人公、藤沼悟の言葉です。彼は物語の終盤で、「信じるって変な言葉だよな?だって本当に心から信じてたら、信じるなんて言葉はいらないだろ」と述べています。
結構好きな名言なので置いておきます。アニメも面白いです。