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男とよくすれ違う。 たとえば道の途中だったり、近所のスーパーマーケットだったり。 男は20…
窓を開けていると、風に乗ってみずみずしい草の匂いが行ったり来たりする。車が走り抜ける音、…
池で飼っているこいが、ぶくぶく太って、わたしの身長とうとう超えた。「ああ、こりゃいかん」…
豊満なバリの女性がおおきな目を見開いて、ベッドに仰むけになる私の顔を覗き込む。 「いっつ…
雨が降っている。空には色がない。灰色の道路には木々が等間隔で植え付けられている。ふと、一…
「ねぇ 触って」 そう言って、君は右の頬を差し出す。 思わずポケットに手をしまいこんだ。 …
朝早く、ゴミ出しのためドアを開ける。 おなじタイミングで隣の部屋の男性もゴミ袋を片手に出てきた。 めずらしく今どき黒いゴミ袋である。 お互いちょっとびっくりしつつ「おはようございます」が重なる。 くたっとした背広姿の男性は、背が低く小太りで、わりあい人が良さそうな雰囲気ではある。たまに会ったら挨拶する程度の交流しかない。 階段を降り切ったところで、男性がこれから乗るであろう通勤ラッシュを思い、ゴミをいっしょに出そうかと考えた。 「ゴミ、出しておきましょうか?」 「いや
オーブンで猫を飼っている。 家に帰ってきたら、まず猫を焼く。オーブンから取り出した猫は焼…
冷蔵庫で猫を飼っている。 家に帰ってきたら、まずその冷え冷えとした猫を冷蔵庫から取り出し…
真夜中に一通の手紙が届きました。 その手紙はしっとりと肌触りがよかったものですから、うっ…
インターネットではさまざまな情報が入り乱れ、SNSなどでも気を病むことが多いこのごろです。…
夜はどこまでも深く。永遠に続いているように思えた。 「なんか怒ってる?」 「怒ってないよ…
僕は4階建マンションの2階に住んでいる。間取りはキッチンと部屋が二つ。そのうち一部屋でコン…
帰り道が分からなかった。 目の前には白く大きな薄い満月がぼんやりと浮かんでいる。 輪郭は虚ろに揺らぎ、私をよりいっそう不安にさせた。 仕方がなかったんだ。私のせいじゃない。私は何にも悪くない。 そう、呪文のように唱えながら満月の方へと向かう。 右足の付け根が痛く少しひきづりながら歩く姿は、はたから見て不自然ではないだろうか。といっても、私以外は誰も歩いていない。 時折通るのは、せいぜい派手な大型トラックくらいだ。いっそのことトラックの前に走り出て引かれてしまおうか。何もか