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組織におけるコンピテンシー評価の重要性とは~人材アセスメントの活用で最適な人材戦略への未来を切り開く
1.コンピテンシーとは
コンピテンシーにはさまざまな定義が存在し、統一された見解はありません。日本では一般的に「優れた業績を上げる人々に共通する行動特性」として知られています。
この概念は、1970年代にアメリカの産業界で注目され始めました。日本では、成果主義の浸透とともに1990年代後半から関心が高まり、多くの企業が導入を進めてきました。人材マネジメントの手法が変化し続ける中にあっても、コンピテンシーは一定の位置を占めており、現在に至るまで活用されています。
コンピテンシーの構成要素を考える際、しばしば氷山モデルが用いられます。このモデルは、一人の人間を氷山にたとえ、知識やスキルなどの目に見える要素を海面上、個人の特性や動機など、目に見えにくい資質を海中として表します。目に見える要素は相対的に変化しやすいと言われています。多くの解説では、コンピテンシーは特にこの海中に潜む個人特性や動機を重視するとされています。
日本にコンピテンシーが普及する過程で、氷山モデルの考え方も広まり、現在では主要な理論の一つとなっています。しかし、これはコンピテンシーを説明する方法の一例に過ぎず、他にもさまざまなモデルが存在します。
さらに、氷山モデルを採用する場合でも、どの範囲をコンピテンシーとみなすかは、研修担当者や実務家によって解釈が分かれます。個人の特性や動機まで含める考え方もあれば、海面に近い行動レベルの要素をコンピテンシーと定義する立場もあります。
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このように、コンピテンシーは単一の概念ではなく、多様な視点で捉えるべきものです。そのため、自社においてどのような定義を採用し、どのように活用するのかを明確にすることが求められます。そして、企業の成長と従業員の能力開発の観点から、適切に運用することが肝要です。
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2.一般的なコンピテンシーの活用シーン
コンピテンシーは、人材育成や人事評価の分野で重要な役割を果たしています。では、実際にどのような場面で利用されているのでしょうか。コンピテンシーの活用シーンについて、詳しく掘り下げてみます。
①人事評価制度への導入
コンピテンシーを人事評価制度に組み込むことで、従業員の能力開発や組織目標の達成に大きな影響を与えることができます。従来の業績評価とは異なり、コンピテンシーに基づく評価は、プロセスに焦点を当て、従業員の行動や態度を重視します。たとえば、チームワークや問題解決能力といったソフトスキルが評価対象となります。これは、単なる業績評価にとどまらず、個々の成長や組織文化の形成にもつながります。そのため、昇給などの報酬に反映させることが一般的です。
②人材アセスメント
昇進試験や採用の際、候補者の経歴や技術的なスキルだけでなく、その人のコンピテンシーを評価することで、将来の成果をより正確に予測できます。管理職向けの360度評価では、従業員エンゲージメントやリーダーシップに対する信頼など、管理職の日常的な行動を可視化することも可能です。
③人材開発への活用
コンピテンシーに基づいた人材開発は、より効果的な実施が可能となります。従業員は、自分の強みや改善点を理解し、開発計画を立てることができます。また、管理者は従業員のコンピテンシーに適したフィードバックを行い、個々の成長をサポートしやすくなります。さらに、組織全体の人材傾向を把握し、コンピテンシー強化プログラムを展開することで、組織全体のパフォーマンス向上が期待できます。
④MVVの浸透
コンピテンシーは、組織の価値観を具体化する手段としても活用できます。組織が目指す文化や価値観を明確にし、その実現に必要な行動を定義することで、従業員一人ひとりが望ましい行動を促進することができます。たとえば、イノベーション文化の醸成が組織の課題である場合、どのような行動がイノベーション文化に沿っているかを管理者や従業員が認識しなければ、新しい文化を推進することはできません。しかし、コンピテンシーを活用すれば、求められる行動を明確にすることができます。
⑤キャリア開発
コンピテンシーは、組織におけるキャリアパスの構築にも役立ちます。各職務や役職に関連する重要なコンピテンシーを特定することで、戦略的なキャリアプランニングを実現できます。管理者は、従業員が目指すキャリアに必要なコンピテンシーを明確にし、その達成に向けてサポートを行えるようになります。従業員は、目指す職務に必要なコンピテンシーが明確になれば、自律的にキャリアを築くことができます。
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3.活用しやすいコンピテンシーモデル
コンピテンシーを効果的に活用するためには、評価や育成の目的に沿った設計が求められます。その際、最も重要なのは「観察可能」であることです。つまり、コンピテンシーは具体的な行動として記載されていなければなりません。解釈のばらつきがないように設計されていれば、評価や改善がしやすくなります。また、評価に活用するためには、行動が測定可能であることも必要です。さらに、実務においては、能力開発を見据えた具体的な方法を提供することが、コンピテンシーの真価を引き出すカギとなります。
✅観察可能であること
コンピテンシーを評価する際、行動ベースで記載されていることが最も重要です。人によって解釈が異ならないように設計しなければ、適切に活用することはできません。
個々のコンピテンシーの定義が曖昧で、解釈のばらつきが生じると、本来の目的を達成できなくなります。そのため、評価や育成に活用するには、コンピテンシーを具体的な行動として記述することが不可欠です。
例えば、「意思決定」のコンピテンシーを考えてみましょう。
意思決定が苦手な人の行動として、「決断前の情報収集が不十分」「決断に時間がかかりすぎる」「他者の意見を十分に取り入れない」など、具体的な特徴が挙げられます。このように、意思決定ひとつをとっても、効果的でない理由はさまざまです。
しかし、市販されているコンピテンシーモデルの中には、「効果的な意思決定を行う」といった曖昧な表現しか示していないものもあります。これでは、どのような行動が「効果的な意思決定」なのかが明確にならず、評価や改善の指標として十分に機能しません。
定義が不明確なコンピテンシーでは、評価基準が曖昧になり、期待する行動の理解にズレが生じる恐れがあります。現場での解釈のばらつきを防ぎ、実効性のある評価を行うためには、具体的な行動ベースで記載されていることが欠かせません。
✅測定可能であること
コンピテンシーを評価するためには、観察可能であることが前提となります。行動ベースで記載されていれば、行動の有無や頻度を把握し、安定してコンピテンシーを発揮しているのか、あるいは偶発的にその行動を取っただけなのかを見極めることができます。
さらに、評価しやすいコンピテンシーとは、行動の是非や良し悪し、高低の判断ができる要素を含んでいるものです。コンピテンシーには、適切に発揮されることで望ましい結果をもたらすものもあれば、状況によっては逆効果となるものもあります。そのため、評価に活用する際には、具体的な行動ベースの記述に加え、判断の参考となるサンプルがあるとより実用的です。
✅能力開発に活用しやすいこと
実務でコンピテンシーを活用する際、単に評価基準として用いるだけでなく、能力開発に役立つ形で設計されていることが望まれます。しかし、筆者の経験上、コンピテンシーの開発方法を包括的に提供できる企業はほとんどありません。
コンピテンシーによっては、開発の難易度に差があり、そもそも能力開発に適さないものも存在します。それでも、ユーザー視点に立つと「どのように改善すればよいのか?」という問いが生じるのは自然なことです。
そのため、各コンピテンシーについて、学習方法や職場での実践機会を整理し、開発に関する具体的な情報を提供できると、より効果的な活用につながるでしょう。
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4.コンピテンシー導入における5つのステップ
コンピテンシーの導入は、従業員のスキルと行動を適切に管理し、組織の目標達成に向けた効果的なアプローチです。以下に、コンピテンシー導入に必要な具体的なステップを示します。
①コンピテンシー導入目的の明確化
コンピテンシー導入の最初のステップは、その目的を明確にすることです。組織がコンピテンシー導入を通じて達成したいこと、例えば従業員のパフォーマンス向上、人材の適正配置、リーダーシップ強化などを具体的に設定します。この目的が不明確なまま進めると、後続のプロセスが曖昧になり、組織全体の効果を発揮しきれない恐れがあります。
②コンピテンシー導入方針の策定
次に、コンピテンシー導入の方針を決定します。具体的には、どのコンピテンシーを導入すべきか、またそれをどのように評価し、活用するかについて方針を策定します。組織の文化や戦略に沿った形で、業務に直結する実践的なコンピテンシーを選定することが求められます。
③コンピテンシー設計方針の立案と計画
コンピテンシーをどのように設計し、評価するかについての方針を明確にした上で、計画を立てます。また、フィードバック方法や従業員の成長を促進するための方法についても検討します。コンピテンシー導入に関わるすべてのステークホルダーを巻き込み、その意見やニーズを反映させることが大切です。
④従業員のコンピテンシー傾向の現状把握
従業員の現在のコンピテンシーレベルを把握するために調査を行います。アンケート、インタビュー、360度評価などを用いて、従業員のスキルや行動のパターンを詳細に分析します。この情報は、コンピテンシーの設計や個々の従業員の育成計画に直接的な影響を与えます。
⑤コンピテンシーの作成
最後に、得られた情報をもとに、組織に適したコンピテンシーを作成します。具体的な行動指標や評価基準を盛り込んだ、実践的なコンピテンシーモデルを構築します。作成されたコンピテンシーは、従業員のトレーニング、パフォーマンス評価、キャリア開発など、さまざまな場面で活用されることになります。
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5.コンピテンシー導入時に陥りやすい罠
組織にコンピテンシーを導入する際、適切に設計・運用すれば業務の質を高め、従業員の能力開発を促す効果が期待できます。しかし、その過程で陥りがちな落とし穴も少なくありません。ここでは、導入時の失敗例とその対処法を紹介します。
🔵フルカスタマイズでのコンピテンシー作成
組織独自のコンピテンシーをゼロから構築するアプローチは、一見理想的に思えますが、時間とコストが過度にかかるうえ、市場の変化に迅速に対応しづらいといった課題があります。また、結果として他社と似た内容になることも多く、組織独自の強みを十分に反映できないケースもあります。
この課題を避けるには、外部の専門家が開発したコンピテンシーモデルを活用し、自社のニーズに合わせてカスタマイズする方法が有効です。このアプローチなら、モデルの構築にかかる時間とコストを抑えつつ、市場の動向に応じた柔軟な運用が可能になります。
🔵設定根拠が曖昧なコンピテンシー
コンピテンシーの設定根拠が不明確だと、従業員や管理職がその意義を理解できず、形骸化するリスクが高まります。実際の業務で十分に活用されなければ、導入の目的を果たせません。
この問題を防ぐには、コンピテンシーの設定背景を明確にし、社内にしっかり周知することが重要です。たとえば、経営戦略との整合性、ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)との関連性、ハイパフォーマーの行動分析などの根拠に基づいたコンピテンシーは、その目的が明確になり、従業員の理解と納得を得やすくなります。
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6.まとめ
コンピテンシーの導入は、組織にとって戦略的な取り組みの一つです。しかし、導入の目的や方法を慎重に検討しないと、単なる制度の導入にとどまり、期待する効果を得ることは難しくなります。適切に設計・運用されたコンピテンシーは、従業員のモチベーション向上や能力開発、さらには組織全体の成果向上に直結します。人事担当者や人材育成の専門家は、これらの点を十分に考慮しながら、自社に最適なコンピテンシーモデルを構築し、運用することを目指しましょう。
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7.マネジメントサービスセンター(MSC)の人材アセスメントソリューションズ
🔵初級・中級管理職向けオンライン・アセスメント~Manager Ready®
・分類:シミュレーション型診断
・対象階層:初級・中級管理職
・対応可能言語:6言語
日本語、中国語(簡体字&繁体字)、英語(アメリカ、イギリス、インド)、フランス語、ドイツ語、スペイン語
🔵上級管理職(部長職以上)向けオンライン・シミュレーション・アセスメント~Leader3 Ready®
・分類:シミュレーション型診断
・対象階層:上級管理職
・対応可能言語:6言語
日本語、中国語(簡体字&繁体字)、英語(アメリカ、イギリス、インド)、フランス語、ドイツ語、スペイン語
🔵リーダーシップ・ポテンシャルを早期に特定するオンライン・アセスメント~Early Identifier®
・分類:パーソナリティ診断(選択回答のみ)
・対象階層:入社10年未満の一般社員、
入社3年目以降の次期管理職候補者、管理職志望者
・対応可能言語:10言語日本語、インドネシア語、ポルトガル語、
中国語(簡体字&繁体字)、英語(アメリカ、イギリス、
インド)、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語、
トルコ語、タイ語
🔵初級管理職・次期管理職候補向けオンライン・アセスメント
~Leadership Snapshot
・分類:パーソナリティ診断(選択回答のみ)
・対象階層:初級・中級管理職
・対応可能言語:4言語:日本語、英語、フランス語、スペイン語
8.おすすめコンテンツ
9.会社概要:MSC|株式会社マネジメントサービスセンター
創業:1966(昭和41)年9月
資本金:1億円
事業内容:人材開発コンサルティング・人材アセスメント
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