アジアから見た日系企業の課題~悪平等を打破せよ!業績評価と賃金格差で高まる生産性
1.「平等」ではなく「フェア」で
🙋♀️伊東
雇用の流動化は職能をベースとした問題とも結びつく話ですね。「日本的経営」は人に優しい、いわゆる人間尊重の考え方がベースになっていました。しかし、これだけ時代が変わっても、雇用の安定性というだけで、組織が給与だけを支払って中高年の経験をうまく活かさないまま、モチベーションを落としてしまっていることが本当に人間尊重なのかは疑問です。外に出ていったほうが活躍できるチャンスがあるならば、それをあと押しすべきではないでしょうか。
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終身雇用や年功序列をすべて壊すことは難しいとしても、運用の中でできることがあるはずです。例えば、「もっと流動化していい」というメッセージを出してもよいでしょう。
🙋♀️畑
リクルートやIBMのような「人材輩出企業」と言われる会社には、定年まで居続けるのではなく、将来、ステップアップするつもりで入社する人が多いでしょう。そういう企業に学べば、日本も変わるのではないかと思います、
🙋♀️伊東
グローバルで大事なのは、「平等」ではなく「フェア」であることです。コミットした結果を出せなかったときは、報酬が下がるのは当然でしょう。それが、やってもやらなくても同じだと、人材の流動化は進みません。
🙋♀️畑
日本の会社は平等、平等と言いますが、これほどの悪平等はありません。業績評価をしっかり行い、賃金格差を設ける。外れる人は外れる。企業はそれをあと押しするくらいでないと、日本全体の生産性は上がりません。最近は「働き方改革」ということが言われていますが、残業だけ減らしても生産性は上がりません。時間で見るのではなく、業績で見ることが大切です。
中国では、鄧小平が「先に豊かになれる者から豊かになれ」と言って、社会主義を変えました。それから20年あまりで、何億円もの財産を築く人が出てきています。あのやり方がよいとは言いませんが、日本も少し、「変われる人から変われ」というくらい強く推し進めてもよいのではないでしょうか。
🙋♀️伊東
日本には「いい人」が多いですが、「いい人」というだけでは、競争の激しいグローバルの中で戦うことはできません。「変われる人から変われ」というのも大事なメッセージですね。
2.日本の人事はパワー不足
🙋♀️伊東
お話を伺って、日本企業は、本気で変わっていかなくてはならないということを、改めて実感することができました。アジアのビジネスのスピードは、私が考えていた以上の状況だということも分かりました。
私たち人事コンサルタントが日本の企業に危機感を与えられなかったという反省もありますが、同時に、問題は人事にもあると思います。全体調和を重視し、これまでのやり方を守ってきたため、人材やリーダーシップに対する問題意識が希薄です。最近は、「このままではまずい」と気づき始めた人事もありますが、問題は変わることへのスピードと実行力です。
🙋♀️畑
私も、人事がぬるま湯につかっているような気がします。最前線で儲けてこないといけない人や、製品力で勝たなければいけない人たちのような緊迫感がありません。
🙋♀️伊東
ビジネスの最前線を支援する体制が不十分です。ビジネスへの関心が低く、現場で何が起きているかを肌感覚で把握できていないことが多いように感じます。
🙋♀️畑
人事のプロも少ないと感じます。いい意味で営業や開発の現場を知っていればよいのですが、そうではないゼネラリストが多い。海外、特に中国には、人事のプロは1~2%しか来ていません。海外の現地法人は、「売るため」「つくるため」といったミッションが明確なので、そこにはパワーをつぎ込みますが、マネジメントが後手後手になっています。そこを本社が見てくれているわけでもなく、人事のパワーが不足しています。
🙋♀️伊東
赴任しても「3年経てば戻れる」という意識の人も多いでしょうし、本当の意味で経営のパートナーになり得る人事のプロは少ないと思います。
🙋♀️畑
現地法人に限らず、人事は、会社全体の業績に貢献するうえで、本当はもっと重視されるべきですし、厳しく評価されるべきです。
🙋♀️伊東
欧米でも人事のポジショニングはまだ低いです。それでも、ミシガン大学のウルリッチ教授は、 CEO(最高経営責任者)、CFO(最高財務責任者)、CHRO(最高人事責任者)の3者を「ゴールデントライアングル」と呼び、経営にとっての人事の重要性を指摘しています。
日本の人事は、これまでの経緯を大切にするあまり、将来に向けてよりも過去からの継続性を重視する傾向が強いです。そのため、結果として過去の踏襲になりがちです。昇進昇格で誰をプロモーションするかという昇格基準も、時代とビジネスに合わせて変える必要がありますが、「過去の人事評価データの蓄積があるから」といって、これまでのやり方を変えることに躊躇しています。さらに厳しい言い方をすれば、これまでの人事の既得権益を守りたいという意識も働いているのかもしれません。
🙋♀️畑
日本の人事は、本当にオペレーショナルな管理部門であり、戦略の面が弱いです。一方で、ベンダーにも任せないので中途半端です。
🙋♀️伊東
私がお客さまによく言うのは、「ツールや方法論だけを私たちベンダーに求めないでください」ということです。ビジネスのディスカッションを十分にしないまま、「アセスメントをしてほしい」とか「リーダーシップのトレーニングをしてください」「考課者訓練が必要」というのではなく、まず、自社の戦略と合わせて、自社の人材をどうしていきたいのかを考えることが重要です。そのうえで、ビジネスパートナーとして私たちを選んでいただきたいと考えています。
3.日本には変われる余地がある
🙋♀️伊東
アジアを訪れると、街全体にエネルギーを感じます。不思議な熱気にあふれていて、元気をもらえます。若い人が多いということもあるかもしれません。一方、日本企業で働く社員は、わくわくしていないように感じられて、残念に思います。
とはいえ、悲観していても仕方ありません。変われる余地はたくさんありますので、前向きにチャレンジしていかなければと考えています。
🙋♀️畑
当社の社名の「コチ」は、「東風」の読みです。日系企業の皆さんと一緒に、中国に対して東からいい影響を与えたいという思いで取り組んでいます。中国の成長を間近で見ていると、安穏としていてはいけないと感じます。
日本はこれまで、中国を下に見ていたところがありますが、彼らがどれだけ成長していて、どれだけ利益率が高いかを認める必要があります。われわれから見ると、むちゃくちゃに思えるようなところや欠点もありますが、儲ける力、成長する力の高さには、見習うべきところがあると思います。
一方、日本は、まだまだやれるはずです。ベースとしての国民性がよいので、今よりも業績主義を強め、流動性を高めたとしても、ギスギスした転職社会にはならないと思います。日本人のよさは大切にしながらも、絶対に足りないところがありますので、そこを認識して変えていけば、よりよい社会が実現できると期待しています。
🙋♀️伊東
対談を通じて、日本企業には、取り組むべきチャレンジがたくさんあるということを強く感じました。本気で変わることにドライブがかかれば、日本企業のアジアにおけるプレゼンスも違ってくると思います。私たちコンサルタントが企業と一緒に何をしなくてはならないかを改めて考えさせられた、大変、示唆に富むお話をありがとうございました。
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4.おすすめ人材アセスメントソリューション
5.グローバルポジションを獲りにいく
グローバル企業において、日本人は優秀な部下にはなれるが、グローバルポジションはとれないという事態が起きつつある。外国人、とりわけアジアの優秀なリーダーたちが、日系企業の重要ポジションを占め始めている。このままでは、日本人はグローバルはおろか、国内でも重要なポジションをとれないことが危惧される。
日本企業では、なぜリーダーシップ開発が停滞しているのか。グローバルポジションをとれるリーダー人材は、いかにして輩出されるのか――。
日本人のリーダーがグローバルで戦うために世界基準で獲得すべきリーダーシップスキル、及びリーダーシップ開発成功の要諦、人事が起こすべき変革、経営のコミットについて、具体的事例とリーダーシップに関するグローバル・データを織り交ぜながら解き明かす。
6.株式会社マネジメントサービスセンター
創業:1966(昭和41)年9月
資本金:1億円
事業内容:人材開発コンサルティング・人材アセスメント