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ローカルNGOがどのように就学支援しているか(配属先NGOを実例に)

ひとつ前の記事で、「農村部での初等教育へのアクセスに関する課題」について書いた。

ウガンダでは初等教育の無償化が実施されている。
が、「授業料」の支払いは無くても、以下のようなものは各家庭が負担する必要がある。
・制服の用意
・学用品(ノート等の文房具)の用意
・学校施設に関する電気・水道代(共用費)の積立金 毎学期
・給食費の支払い 毎学期                etc.

これらの費用負担が出来ない家庭は、子どもを学校に通わせられない状況にある。
 
私の暮らすウガンダ中央部ムピジ県ムピジ町では、自治体がこのような貧困家庭に対して経済的に就学を支援するような政策は置かれていない。
 
では住民はどこに助けを求めているのか?

その相談先は、地域で活動しているNGOや、住民や大学生ボランティア等が発足した市民団体等であったりする。

私が赴任したローカルNGOも、そういった住民や、住民の困った声を聞いた自治体が助けを求める相談先となっている。


ここでは、私の赴任先したローカルNGOがどんな支援を行っているか紹介することで、「農村部の地域社会で、誰がどう解決に取り組んでいるか/現状のしくみ」について書きたいと思う。


 配属先NGOが行っている支援内容


 私が赴任したローカルNGOは、ウガンダで初等教育無償化が始まる以前に海外ボランティアとウガンダ人とで創設され、
当時からこの地域で初等教育へのアクセスを支援してきた団体である。

現在、支援対象家庭にとって特に負担の大きい以下の内容を支援している。
・給食費の支払い (学期毎)
・学用品(ノート、鉛筆、ペン、定規等)の配布 (学期毎)

 前回入学に必要なモノとして「制服の用意」も挙げたが、
制服については、農村部の公立小学校では「指定の制服ではないが、勉学に適した服装」での登校を容認しているケースも多い。
私も活動先で、支援している家庭以外の子どもでも、私服で通っている児童をよく見る。

これは、中央政府からの補助金額は児童数によって決定するため、学校側が入学数は多い方が良いと捉えている事が要因のひとつと考えられる。

***
 配属先NGOには提携校があり、活動地域内の3つの公立小学校と提携している。(キリスト系学校が2校、イスラム系学校が1校)

それにより、地域住民が就学相談や支援を求めるルートは、
【直接NGOへ相談に来る/入学を希望する学校へ相談し、学校からNGOを紹介される】という2つのルートが確立されている。

NGOは相談を受けた後、
相談者の身分確認や家計状況のヒアリングを行い、支援プログラムへの加入手続きをする。
そして加入した対象者へ物資・資金支援を行う事となる。

また、物資・資金支援に終わらず、
毎週小学校へ訪問し、支援対象者の出席状況・成績・その他学校での様子から見える気にかけるべき点はないか?をモニタリング。

フォローが必要な点があれば、その子ども家庭へ訪問し、保護者から家庭での状況をヒアリングしたり、その子や家庭が直面している課題について話し合ったりしている。

これが、ムピジ県ムピジ町での貧困層への就学支援の一例である。

現状の支援が抱える課題


前回の記事で以下のように書いた。

構造としては、
政府が公表している「Child Policy」があり、そのなかに教育へのアクセスの確保も軸として含まれてはいるが、

先述のように子どもを就学させられない家庭に対し、地方自治体が福祉として手を差し伸べる事が出来るようにする為の経済的インセンティブが伴う政策はない。

そうした貧困層へのセーフティネットとして、
ローカルNGOや市民団体が地方自治体へ登録して活動をしている。(登録することで、行政と民間とが連携を取りやすくする等の目的がある)

ウガンダ、ムピジ県ムピジ町には現状、セーフティーネットとして先述のようなしくみ(連携の形)があるが、
このしくみは「就学をさせられるように、まずは家庭負担とされている物資の用意や支払いを肩代わりする」という対症療法である。

対症療法だと言う理由は2つある。
1.肩代わりによって「入学する」という段階は達成されるが、入学後の日常で発生する他コストを家庭で賄えないために登校が出来なくなるという可能性は、解消されず引き続き残るから

2.学校が各家庭に更なる費用負担を求める場合があり(例えば前回記事で挙げた“入学料”)、それを支援対象者と支援者両者とも支払えないために登校が出来なくなるという可能性は、引き続き残るから

実はこの2つは、実際に発生しているケースであり、配属先NGOが活動現場で直面している課題である。

1に関しては、
各家庭における家計状況の改善が必要である。
これは「農村部貧困層の生計向上」「農家の収入向上」等の視点でさまざまな団体が支援・プロジェクトを行っていたり、
県庁も地域住民を対象とした小規模ビジネス経営支援として少額の融資貸付等を行っていたりはする。

2に関しては、
最近県庁のコミュニティ開発課なる部署に、「地域コミュニティの困り事・苦情相談の窓口となる集会、および解決のための相談ルート」が新設され、
当NGOのような地域で活動する団体が参加登録された。私の上司は、『近日その集会に参加して公立小学校への入学料徴収に対する反対」を主張して来る』と言っている。

このような、より良い地域社会を目指す取り組みは行われているのだ。が、
助けきれていない住民、境遇がいまだ多く存在していのが現状
だ。
初等教育へのアクセスに関する課題に対する、原因療法となる施策が他に必要である。

自分にとって3つの提携校はステークホルダーであり活動先であるため、
これらの教育現場で自分にもでき得る(仕掛けられる)原因療法となる施策がないか、模索していきたい。

P.S.
加えて、現状当NGOの財源は海外からの寄付であり、毎年同額が確実に確保されている訳ではない(来年、再来年、数年後に経済的支援が出来なくなる可能性がある)という支援者(NGO)側の脆弱性も存在する。
この点は、現行のセーフティーネット(しくみ)の弱さを指摘するにあたり除けられない観点だと思っているが、
今回は、「現行のしくみは対症療法的だから原因療法的な施策(他のサイクルの確立)が必要だ。」という話がしたので一旦脇に置きたいと思う。
が、この点も実際配属先が常に苦労している一番の課題である。

配属先の事業内容と、JOCV要請内容との整合性について(補足)


私はJICA海外協力隊(以下、「JOCV」)として、「感染症・エイズ対策」という職種(活動領域)でこの地域・配属先に赴任している。

そのことを知っている方は、「なんで教育の話?子ども保護の話?」と不思議に思われるかもしれない。

私の配属先NGOは、設立当初より「地域社会でより脆弱な立場にある子ども」をターゲットとしていることから、”HIV陽性の子どもやAIDS孤児である子ども、及びその保護者”を支援対象にしており、
そういった子ども達の人権保護の観点から、就学支援だけではなく「家庭内暴力・虐待の防止」「保健医療面の支援」「生計向上のための支援」といった多様な側面からのサポートを提供している。

この文脈があり、当団体へ、JOCVが「感染症・エイズ対策」の職種で派遣されてきようなのだ。ちなみに、このNGOに派遣されるJOCVは私で3代目。

またもうひとつの側面として、
日本がウガンダでのODA(Official Development Assistance)の計画の中で課題としている項目に
「保健サービス向上 ―学校やコミュニティにおける保健啓発活動により、地域住民の感染症防止、栄養改善、公衆衛生に対する意識が向上する。」が掲げられており、
当団体での保健啓発活動や公衆衛生に関する活動は、現在日本が設定しているウガンダでの国際協力計画なるものにも即している。


現在配属先NGOへ赴任して3ヶ月が経ち、
その期間に活動現場で見えてきた同地域の仕組みや課題感、自分の活動計画を整理したい目的もあり、今回教育(特に初等教育へのアクセス)に関して文章にした。

保健・公衆衛生の取り組みを主軸に、今後、こうして目の前に広がる状況についても取り組みを展開していけたら嬉しい。

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