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私が”教室を飛び出した子”の前でメラミンスポンジを取り出す理由
こんにちは。特別支援学級教員13年目のMr.チキンです。ずいぶん長い間noteの更新をお休みしていたので、久しぶりの投稿となります。なかなか更新できずに申し訳ありません。気長に見守っていただけると幸いです。
さて、私の学級では、メラミンスポンジを欠かさずに購入しています。
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メラミンスポンジを使うと、普通の雑巾では落ちないような汚れを落とすことができます。
このメラミンスポンジ、教室をきれいにするためはもちろんのことですが、実はもう一つの使い方があるのです。
教室を飛び出す子、口を利かなくなる子
特別支援教育コーディネーターをしていると、通常学級の色々な子に出会うことになります。
以前勤務していた学校では、コーディネーターは日常的にトランシーバーを身に着けていました。すると、時々
Aくんが教室から出ていきました。どなたか対応できますか?
という連絡が入ります。
学級の様子を見て、行けそうなときは出動します。
すると、教室から少し離れた階段の陰に、その子はいます。
すでに他の教員が話しかけていることもあります。
どうしたの?教室でイヤなことがあったの?
でも、そんな状態のときのAくんは目を合わさず、口も利かずなことが多いのです。それは当たり前です。言葉にできない理由があるから、飛び出すのです。
(もちろん、この問いかけにも意味があります。問いかけで戻れるのであれば、それはそれで大切な学習です。)
「ここ、汚れがひどいなぁ」
先に来ていた教員と目くばせしながら、そばに寄っていきます。
少し遠くから、メラミンスポンジで校舎の壁の汚れをこすりながら近づいていくのです。私からAくんに話しかけることはしません。
「あれ、ここ汚れひどいなあ。」
なんて、独り言をつぶやきながら壁をこすったり、バケツの水を含ませたり、雑巾で拭き取ったりします。
「ねぇ、さっきから何してんの?」
しびれを切らしてA君が話しかけてきます。
上の記事でもお話ししましたが、初めて会う子どもには、可能な限り教員から話しかけないようにしています。
私たち教員が話しかけるということを攻撃として捉える子もいるのです。
そして、子どもから話しかけてくれると、
「気付いてくれてありがとう。」
「話しかけてくれてありがとう。」
と、「ありがとう」から会話を始めることができます。
「ありがとう」タンクを満タンに
チ「気付いてくれてありがとう。ちょっと大変だったんだ。」
A「それで拭いてんの?」
チ「そう。これで拭くと汚れが取れるんだけど、思った以上に汚れが多くてさぁ。」
A「貸して。」
チ「手伝ってくれるの?ありがとう。」
A「ほら、ここ消えたぞ。」
チ「え?どれどれ?本当だ!すごいなぁ。家でもやってるの?」
A「家ではやんないけど。ほら、先生、そこも汚れてるよ。」
チ「家でやんないのにいきなりプロみたいな仕事するんだな。あ、バケツに手を入れたら冷たくない?」
A「冷たくない。全然冷たくない。」
チ「風邪引かないでよ~。本当に優しい子だな。これだけ学校きれいになったら、みんな喜ぶよ。」
なんていう話をして過ごします。”そうじ”という”だれが見ても良いこと”をしているのですから、自然に褒めることができます。
メラミンスポンジは、子どもの予想以上に汚れを落とすので、夢中になって作業できます。
作業しながら、色々なことを話します。
ゲームのこと。YouTubeのこと。ペットのこと。休み時間のこと。
チャイムが鳴ったら、教室に戻します。
教室に着くころには、「ありがとう」タンクが満タンになっていれば良いなぁと思いながら関わります。
「Aくん、また何かしたの?」
後日、廊下で、しかもできるだけ多くの子がAくんと一緒にいるときにすれ違うようにしています。すれ違いざま、
Aくん、こないだはどうもね!
と言います。すると、周りの友達が
え?Aくん、また何かしたの?
と聞いてきます。まるでAくんが悪いことしかしないみたいな風に。
(この雰囲気だったら、教室から飛び出したくなるかもなぁ)
なので、私は
ここの柱、他の柱よりも白いでしょ?
この間、Aくんにお手伝いしてもらったんだよ。そしたらこんなにきれいになってさぁ。
というと、周りの友達は
え?Aくんすげぇじゃん!本当にここ真っ白だわ!
見る目が変わります。当のAくんは照れて走っていってしまいましたが。
コミュニケーションツールを懐にしのばせる
メラミンスポンジは優秀なコミュニケーションツールの役割を果たしてくれます。間に”そうじ”という共通の目的ができることで、同じ方向を見て話ができるようになるのです。
大人だって、
ゲーム
釣り
鍋
音楽
などなど、何か間に介在して、初めて友達になれますよね。
子どもも同じです。教員と、すぐに打ち解けられる子ばかりではありません。
キラキラしたおはじき、強力なマグネット、書いても消せるボールペン、教員の代わりに話をしてくれるかわいいぬいぐるみ・・・
何かそばにコミュニケーションツールを忍ばせておくと、救われる子どもがいるかもしれませんね。
では、またね~!