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「革命は破壊」と知っていたジョン・レノン

昨日12月8日はジョン・レノンの命日であるが、ビートルズ時代にジョンが作曲して歌った「レボリューション」という大好きな曲がある。

「レボリューション」はもちろん「革命」を意味する言葉で、世間一般的には「旧体制を打破する」みたいな意味合いで肯定的に使用されることが多い。マイレボリューションとか恋愛レボリューションとかTMレボリューションとか、日本の楽曲にも「レボリューション」は多いが、概ね「革命」を良き事、何か楽しいお祭りくらいの感覚で捉えてるような感がある。

革命が必要だと君は言う まぁ、そりゃあね
みんな世界を変えたいと思ってるよ

革命は進化なんだと君は言う まぁ、そりゃあね
みんな世界を変えたいと思ってるよ

だけど破壊してでもやろうと言うなら
僕は仲間に入れないで

現実的な方法があると君は言う へぇ、そうかい
是非その計画を知りたいね

寄付金をくれだって? へぇ、そうかい
出来ることをやっていこうか

でも憎しみで動いている奴らの為にお金を集めているなら
一言言わせてくれよ なぁ兄弟 ちょっと待ちな

社会の構造を変えてやると君は言う へぇ、そうかい
自分の頭から変えてみなよ

それが社会の為になると君は言う へぇ、そうかい
自分の心を自由にしてやりなよ

でも毛沢東の写真なんか持ち歩いてるようじゃ
どのみち上手くいかないさ

わからない? 世の中は大丈夫
大丈夫上手くいくさ

https://lyriclist.mrshll129.com/beatles-revolution/


だが歌詞を読めばわかるようにジョン・レノンが作曲した「レボリューション」にはそういうニュアンスは無い。むしろ「革命」を警戒している感すらある。それもそのはずでビートルズが「レボリューション」を発表した1968年というのは、まさに中国共産党・毛沢東による「文化大革命」の真っ只中だった。共産党の正当性を示し社会主義体制を確立させるこの「革命」により、それまで中国にあった伝統文化や宗教的文化財が徹底的に破壊され、1千万人以上が殺害されたとも言われる。こういうのをリアルタイムで見ていたジョン・レノンは、社会を急進的に、一気に変革させようという「革命」は「破壊」である、と直感したに違いない。

そして王制を戴くイギリス人のジョン・レノンが「革命」を「破壊」と考えたとすれば、それはものすごく納得できる。例えば「革命」と言って最も知られているのはフランス革命だろうが、この「民主主義」「国民主権」「人権」を近代に確立させたフランス革命も大いなる「破壊」だった。熱狂した民衆が王や王妃をギロチンにかけて快哉を叫び、既得権益を持っていた貴族や聖職者を吊るし上げ血祭りに上げた。反革命派は容赦なくギロチン処刑で100万人近く死亡したとも言われ、この時の革命派の恐怖政治(terreur)が「テロ」の語源にもなった。

で、このフランス革命を正面から批判したのが、ジョン・レノンと同じイギリスの思想家エドマンド・バークだった。バークは保守思想の祖とされている人物でもあるが、要するに人間の理性を妄信し、歴史の連続性を無視した変革は「破壊」にしかならない、と「革命」を批判した。フランス革命も文化大革命もそれまでの歴史を寸断し、宗教を否定し、という点では通底している。

変革そのものを否定するのではない。人間の理性は必ず限界があり、当然過ちも犯す。その前提に立ち、理性を妄信するのでなく、祖先から受け継いだ歴史の叡智を重視し、今あるものを破壊ではなく、より良く軌道修正していく急進的でない漸進的な「変革」。これが「保守」の要諦であり、イギリス人であるジョン・レノンの歌った「レボリューション」にはその精神が生きてるように感じられる。だからこそ「真実味」があり、50年以上経った今も何ら色褪せることがない。

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