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森永泰史
2021年5月28日 07:50
前回は、デザイン思考などのデザイナー的思考や手法が登場した意義について述べた。その最大の功績は、通常では見えにくいデザイナーの働きを可視化し、それを組織全体で共有可能なものにしたところにある。しかし、現場では、せっかくデザイン思考を導入しても、機能不全に陥ったなどの声がよく聞かれる。その原因には様々なものがあるだろうが、ここでは組織文化に注目してみたい。 近年、デザイン思考を機能させる基盤と
2021年5月21日 09:19
前回見たように、デザイナーの働きは見えにくいため、現場にいない経営陣などからはなかなか評価されにくい。さらに、評価されなければ、投資したり積極的に活用したりすることも困難になる。そのため、多くの企業では、デザイナーの積極的活用をお題目に並べながらも、実際はあまり活用できていないという課題に直面している。 このような見えにくさは、デザイナー自身も薄々気付いているようで、黒田(1996)は、それを
2021年5月14日 09:16
デザイナーの貢献は見えにくいと言われるだけあって、売上や利益などの客観的な指標でそれを測定することは難しい(注)。だとすれば、どのような指標を用いればそれを測定することができるのであろうか? この点につき模範解答はないものの、経験的には、①消費者の主観的な変化に注目したものと、②従業員の主観的な変化に注目したものの2種類がありそうである。注)ペプシコ初代CDOのマウロ・ポルチーニ氏によると、
2021年5月14日 09:13
前回も述べたように、デザイナーは古くから様々な形でイノベーションの実現に関与・貢献してきた。 例えば、1965年に三菱電機から発売された扇風機「コンパック」は、その名の通りコンパクトに分解することができる扇風機であるが、その原案を示したのはデザイナーたちである(三菱電機デザイン史編集員会編,2004)。当時の扇風機は、多機能化を競う傾向にあったが、そこから競争の軸をずらすことで大ヒット商品とな
2021年5月7日 09:06
今回からは4回にわたって、イノベーションとデザインの関係を見ていく。イノベーションの定義の仕方は様々あるが、ここでは、Rogers(1982)に基づいて、それを「社会に価値をもたらす革新」と定義したい。 世間では時々、イノベーションを技術革新と定義することがあるが、それは間違いではないものの、本質を捉えているとも言い難い。この定義で特に問題なのは、視野が極端に狭くなることである。我々の社会は、