2020年4月の記事一覧
行こう!あの夜、彼女がそう言うものだから。
初めての恋人ができたのは25歳の冬が始まろうとしていた季節で、それは人生で最も美しい時期だった。
アルバイトで入ったCDショップに彼女はいた。
入社して2日目、初めて彼女と会った日、僕は彼女と付き合うんだと、直感で思った。とはいえ、慣れない仕事…初めての接客業で、僕は入社してからずっと混乱のなかにいた。そして彼女は彼女で、退社が決まっていた。
店長に命じられて、CDショップが入っていたデパート
映画はひとを狂わせる
10数年ぶりにカラックスのポンヌフの恋人を観た。よく思い返すと、ポーラX公開時に、女の子とのデートでカラックスのリバイバル上映を観に、渋谷に通っていたのだった。そしてずっと、上映途中から彼女が泣き崩れて、デートが台無しにされた気がしたのは、ポンヌフの恋人ではなく、汚れた血だったのだと、いまはたと気付く。その夜、チェーンの居酒屋さんで、ふたりで語ったことはちょっとだけ覚えている。カラックスと、ベネッ
もっとみるあなたが僕の始まりでした。
思えばあなたと過ごした時間にはいつだって、たくさんのことばが流れていた気がします。もちろん、あなたがミュージシャンだったから、という理由もあるでしょう。友達に誘われていったライブハウスで、あなたのバンドに出会い、そしてそこから一気に、僕はパンクってやつに心を、月並みな表現ですが、心を奪われたのです。下北沢の小さなライブハウスに出向いたときに渡した、僕のバンドのデモテープ。西荻窪のさらに小さなスタジ
もっとみる僕を見つけてくれたのは。
あれがいつの頃かも、もう忘れてしまった。
朝帰り、家へと向かう路上で、マッチを擦って煙草に火をつけた瞬間に、凛の匂いを冷気とともに吸い込んだことを覚えてるから、冬のある日だったのかもしれない。
天気雨に降られて、電車の通り過ぎるゴーっという音だけが鳴り響く高架下で、時間をやり過ごすために、返信したのを覚えているから、6月の夕方だったのかもしれない。
その子は、パリに住んでいた。
別れが裏切りにも似