マガジンのカバー画像

エッセイ

42
自分の身に降りかかったこと、日々生きてて思うこと、楽しいこと、感じること、世界の流れに身を投じて思ったことをここに。 少しの時間、私のたわごとにお付き合いください。 ※番号は…
運営しているクリエイター

2021年7月の記事一覧

42:漣(さざなみ)

海は繋がっている。 海は身近な存在だった。 鴨川の海は太平洋。 バブル期から廃れた海岸線は道があってヒビが入っている。 子供の頃から、海水浴は決まってそこに行っていた。 海の街出身でも、山奥育ちの僕には、 たまに行く海が美しかった。 高校はその海の近くにあった。 放課後に用もなく、その海に行った。 部活動の浜練習もそこに行った。 初めての彼女に告白したのもそこだった。 卒業後、横浜に来ても、 地元に帰ると決まって、 その海に1人で行った。 昔と変わ

40:話し上手

変化のスピードは必ずしも一定じゃない。 だが、変化のきっかけはいつも一瞬だったりする。 僕は話下手であった。 小学生、 彼らは悪口を使って、コミュニケーションを図る。 ばか、しね、きも、うざ。 簡単だからだ。 それを一つの標的に向けて放ち、 自分たちは最高のナイスガイになる。 僕はその悪口の対象でも、悪口を言う人でもなかった。 「そんな汚い言葉をお友達に向けちゃいけません!」 僕は母の言葉を信じ、人を傷つけることをしなかった。 同級生は、そんな僕に『つ

39:それとぞれ

幸せの価値観なぞ、 人のそれぞれで、 まして、2人ぞ 合わぬがオチや。 2人俯く公園。 君がいると、聞いてだな。 まあその話はよそう。 君は自然が好きだって、 故郷思うからとまた言う。 コンクリの、 四角い空に慣れた僕。 バツが悪い故郷は、 ド田舎だ。 家を持たなくてもいいかなと思う。 君は家を持ちたいと言う。 子供は2人欲しいとねだる。 君は男の無知を叩く。 怒らないで欲しいと思う。 君は怒って、そっぽを向いたまま。 ウザいと思われたか

38:鬱と探究心

人の心を操るのは、 沸々湧き上がる自己防衛の精神と、 見え隠れする探究心だ。 傷つきたくない、辛い思いをしたくない。 大変なことをしたくない、たくさん作業したくない。 どれも人の根本にある自己防衛の精神から来るとすれば、 それは正常に働いているのである。 自らを表舞台から隠し、 普通の歩幅を矯正する。 ズレること、羽ばたくことを良しとしない。 己を守ることの延長戦でしかない。 だがその二元性の対をなす、探究心を忘れてはならない。 知りたい、やりたい、楽

33:暗示

このインターネットの世界で、 人々は自らを隠して生きている。 化けの皮は一切剥がさず、 理想の自分を演じ、好き勝手に文句を言っている。 自分の姿が、世界に解き放たれた時、 皆は同じように話せるのだろうか。 大きな声で、ネットの世界で歌えるか。 僕は歌いたいんだ。

32:心待ち

心待ち。 心からその事象を待つさま。 なんて素敵なのだろうか。 自分の内情を表に出し、 相手のことを真に思い、 その事象のために、内をさらけ出す。 心の声は大きい。 もう1人の自分が、中で叫び続ける。 最高の共鳴が、 心待ちである。

31:合鍵

昨日彼女の家に泊まった。 付き合って直ぐに、こんなに泊まるとは思わなかった。 いつも大変そうな君を見てると 手を貸したくなる。 でも君は拒否して、自分のためだと言う。 芯の強い、素敵な子だ。 昨日歯ブラシを貰った。 鏡の前とぼやけた視界。 2人並んで歯を磨く。 君の歯並びは世界一。 昨日合鍵を貰った。 よく来る僕に、コレッ。 と渡した。 僕はそれを自分のキーホルダーにつけた。 ふたつの鍵が 重なり、ぶつかり、寄り添っていた。 別れ、黄昏時の帰り

29:諦める

『諦める』の語源。 それは『明らかに見極める』ということ。 私は人から必要以上に多くの情報を吸収してしまう体質だった。 悲しい気持ち、辛い気持ちを感じてこっちまで苦しくなることが多かった。 学校でいい成績を出している人。 部活動で一番うまい奴。 画面越しのプロスポーツ選手や著名アーティスト。 この人たちには共通点があった。 それは『目』であった。 栄光を手にし、周囲から期待されていても、 彼らの目は、泣きそうだったのだ。 トップを目指すこと、優秀で居続け