42:漣(さざなみ)
海は繋がっている。
海は身近な存在だった。
鴨川の海は太平洋。
バブル期から廃れた海岸線は道があってヒビが入っている。
子供の頃から、海水浴は決まってそこに行っていた。
海の街出身でも、山奥育ちの僕には、
たまに行く海が美しかった。
高校はその海の近くにあった。
放課後に用もなく、その海に行った。
部活動の浜練習もそこに行った。
初めての彼女に告白したのもそこだった。
卒業後、横浜に来ても、
地元に帰ると決まって、
その海に1人で行った。
昔と変わり変わらぬその景色。
犬の散歩するおじいさん。
サーフィンから上がる兄さん。
もっと腰が曲がったおばあちゃん。
海辺のカフェに入る、若いねーちゃん。
全部が、僕の思い出を掘り返す。
思わずインスタのストーリーに、
見える漣を記録した。
今日はあいつだ。
俺の元に来てくれた。
すぐそこに住む、
人情深い熱いやつだ。
決まって誰かは反応する。
僕も少し期待してまた、ストーリーを上げる。
今年の日の出も、これから集った仲間と見たのだった。
海に限らず、自然は大きなエネルギーを秘めている。
それが画面越しでもそうかもしれない。
誰かの思い出と繋がっている。
自分の過去とも繋がっている。
海の向こうの人を思いながら、
世界とも繋がっている。
海は繋がっている。