お悩み:自分の今の生活で、体にいい生活が出来ているかどうか心配です。
「自分の今の生活で、身体にいい生活が出来ているかどうか心配」な人のための催眠スクリプト
『小さいじょうろが抱く憧れ』
私は、キラキラ光る水が無数の粒になって、大きなじょうろの先からたっぷりと撒かれているのを見ていました。
それはサラサラと音を立てるように、左右にゆったりと振られながら、瑞々しい緑の葉や、花々の上に降り注いでいました。
「あの子はとっても綺麗だな」
と、私は思いました。
「私も、あんなふうにキラキラした水を、花々の上に注いでみたいな。太陽の下、あの広い花壇を、上から見下ろしたらどんなに美しいだろう。サラサラーッと音を立てながら、左右に大きくゆったりと振られて、キラキラ光る水が散り広がるのが見えて、水が緑の葉や花々に当たる楽しそうな音が聴こえてきて……。そしたら、どんな気持ちになるかなぁ?」
私はその様子を心の中で思い描き、
「はぁ〜」
と、憧れに満ちた吐息を漏らす自分を感じました。
今日はとてもお天気がよくて、空は青く澄んでいて、たっぷりのお水を浴びた花壇の緑と花々が、眩しく輝いて見えました。
私が置かれている窓際からは、白い窓枠とガラス越しに、その様子がとってもよく見えました。
家の中からは、お鍋や食器たちが立てる、カチャカチャという音が聴こえていて、やがて、美味しそうな朝ごはんの良い匂いが漂ってきました。
家の中を見回すと、お鍋も、食器も、それにテーブルや、椅子や、ソファーやクッション、カーテンなど、皆んなが、この美しい朝を喜んでいるのが見えて、楽しげなささやきを交わしているのが聴こえ、幸せを感じることが出来ます。
私は、窓際の暖かい陽射しを浴びて、窓の外の、そして家の中の様子を、眺めているのでした。
すると、ふと、声をかけられました。
「やあ、小さいじょうろさん。今朝は一層輝いて、綺麗じゃのう!」
その声の主は、ソファーにゆったりとくつろいでいる、古いクッションでした。
私は、
「そうだね。本当に、今朝の花壇は一層輝いて、綺麗に見えるよ」
と、答えました。
クッションは言いました。
「そうなのかい? 花壇はそんなに美しいのかい? この場所からじゃ、窓の外は一面の空さね」
私は、
「そうか。それじゃ、あのお日様だね。あなたが言っているのは、暖かな陽射しをくれる、あのお日様のことでしょう」
と言いました。
クッションが言いました。
「そうさね。今朝は暖かいね。お昼頃にでもなれば、ここから見える窓の中に、お日様が顔を出してくださるだろう」
私は、
「そうか」
と言いながら、家の中を見回しました。
すると、テーブルの上の白い陶器の花瓶が、陽射しを受けて柔らかく光っているのが見えました。
「ああ、みつけたよ。テーブルの上のあの花瓶が、柔らかく光っている。本当に綺麗だね」
と私が言うと、その花瓶が、
「ふふふ」
と、嬉しそうにして、それから優しい微笑みを見せて、言いました。
「おはよう、小さいじょうろさん。本当に、今朝は綺麗に輝いていることね」
私は、心が温かくなるようなその微笑みに照らされながら、
「おはよう、花瓶さん」
と言いました。
私はなんだか、くすぐったいような気持ちになりました。
花瓶がじっとこちらを見つめて、
「ふふふ」
と優しく微笑みながら、柔らかい光があふれるような眼差しを向けてくれるのを感じました。
すると私の胸には、ある感覚が湧いてくるのでした。
私は目をそっと閉じて、静かに、その、ある感覚を味わいます。
私の心の中には、ある光景が浮かんでいます。
その時に聞こえていたかもしれない音や声が、優しく響いてきて、私の心は、あの感覚に満たされていきます。
私はそれを、この目で見たのか、それとも、心の目で見たのか、今ではもう、それはどちらでもいいことなのかも知れないな、と思いました。
私の中に響く優しい音が、どこから聴こえてくるのか、心の中から浮かんでくる音なのか……。
私は何とも言えない心地よさを味わいながら、このまま、眠っているような、眠っていないような、そんな感覚に、体をゆったりと委ねています。
深いとも、浅いとも言えるようなその感覚に、私の思いのままに、漂うかのようです。
目を閉じたまま、家の中の音は聴こえているけれど、この心の中の感覚に身を浸す。
こんな時間がずっと続きますように。
そんな思いが湧いてきて、そして、そんな思いを受け取ってくれる誰かが、私の心の中で、私を優しく包み、抱きしめてくれるのでした。
目を閉じていると、私には、たっぷりの時間があって、それは、計ることは出来ないけれど、ただ、その静かな豊かさを味わうことで、どんどん増えていくものなのだと、感じることができます。
心の目で、あるものを見ているのか、いないのか、静かに、静かに、たっぷりとした時間の中に漂っているのを感じています。
私は、目を閉じていても、窓の外で小鳥がさえずるのを聴くことができるし、家の中の暖かさを感じることもできます。
窓の外の花壇が水を浴びてキラキラと輝いているのも、食器たちが楽しげな音を立てるのも、そして、皆んながこの時を楽しんでいるのも、感じることができます。
こんな時間がずっとずっと続きますように。
その願いは受け入れられて、私の心の中の永遠の時として息づき始めるのを感じます。
目を閉じたままでいる、そんな私に寄り添うように、また、クッションが、そっと声をかけてくれました。
「お前さんの美しさときたら、本当に、心がうっとりとするようじゃよ」
花瓶もまた、優しく言いました。
「そうね。いつまでも、いつまでも見ていたい。そんな美しさね」
私には、ふたりの声が心地よくて、夢の中にいるような気がしてきます。
私は、目を開ければ見えるはずの美しさの数々を、心の中で感嘆の吐息を漏らしながら、ひとつひとつ、じっくりと味わっています。
今、私は、こんな心地でいて、そして、目を開けたなら、本当の美しさがこの目に映るだろう。
そして、美しい朝の、皆んなの楽しげなささやきが、もっと鮮やかに聴こえてくるだろう。
私は、そうしたいような、まだ、このままでいたいような、そんな気持ちに、心が揺れるのを感じています。
花瓶の優しい声が響いてきます。
「ねえ、こんなに美しいものって、ほかに見たことあるかしら?」
クッションが続けます。
「さあ、滅多にないのは確かだろうさ」
花瓶は、
「そうね。それに、今、こんなに美しく私の目に見えていて、それが本当のことなのだから、滅多にあろうとなかろうと、どちらでも構わない」
と言い、クッションが
「そうさな」
と言いました。
私は、ふたりがどんなに美しい物を見ているのか、目を開けて確かめたくなりました。
ふたりに、何がどんなふうに美しいのか訊ねて、そしてその美しさを愛でる喜びを、ふたりと共に味わいたいと願いました。
私は、そっと目を開けました。
今まで目を閉じていた分なのか、お日様が高く上ったからなのか、あたりは前よりも眩しく輝いて見えました。
私は、花瓶とクッションに尋ねました。
「ねえ、何がそんなに輝いているの? どんなに美しいか、私にも教えてほしいな」
花瓶は、
「ふふふ」
と優しく包んでくれるような微笑みを見せて、そして、言いました。
「そうね。それは、本当に眩しく輝いているわ。お日様の陽射しを受けて、黄金色に輝いているのよ」
クッションも言いました。
「そうさな。まるで、どんな王様もかぶったことのないような冠が、眩しく輝いているかのようじゃ」
私は言いました。
「そんなに美しいのかい?」
花瓶が答えました。
「そうよ。本当に美しいのよ。磨き抜かれた真鍮が、お日様の陽射しを黄金色に照らし返して、朝が来るたび、私たちを喜ばせてくれるのよ」
私は言いました。
「本当かい? それなら、私も見てみたい」
そう言い終わらないうちに、私は家の人に持ち上げられました。
私はそっと傾けられて、静かに小さく撒かれる水が、窓辺の植木鉢の花を潤しました。
その時、家の中の皆んなの歓声が聴こえ、そして、キラキラとした眼差しを感じました。
私から注がれる水が、お日様の陽射しを受けて、小さな虹を作っているのが見えました。
さあ、ひとーつ! 爽やかな空気が頭に流れていきます!
ふたーつ! 体がだんだんと軽〜くなっていきます!
みっつで! 大きく深呼吸をして〜! 頭がすっきりと目覚めます!
©️2023 Monogatari Garden