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白き巨獣を解き放った冒険者達の章


 アーツィー=ツイーツィーベルの人生を語る上で、多くの者達はこう口にする。



『彼の人生は本当に不幸だった』

『彼ほど可哀想な子はいない』




 だが。



 

 本当に、彼は不幸だったのだろうか?



 

 それを決めるのは、残念ながら貴方ではない。




 何故なら。




 彼の人生が本当に不幸だったか、そうでないかは。





 彼自身にしか、分からないからだ。




 何故、皆が彼の人生をそう語るようになったのか。


 彼には、両親の記憶がない。


 これまでの生活においても、所々記憶が抜け落ちている部分がある。


 そして、彼は国を1つ滅ぼした。


 その記憶も、抜け落ちている。


 そんな彼を愛し、慈しみ、育ててくれた祖父と兄は…実の祖父と兄ではなかった。


 その2人も謎の死を遂げ、彼は1人になった。





 彼は不幸か、そうではないか。


 人間は、どちらか二極に判断したがる生き物だ。


 その立場になった事も無いくせに、他人の事をとやかく言うのだけは一丁前。


 だがそれが人間と言うものであり、この世で1番憎らしくも愛おしい生き物なのかもしれない。




「君が、アーツィー=ツイーツィーベルくんだね?」


 そんな彼の許に、3人の旅人が現れた。


「僕はワック=ダール、宜しくね」

 柔和な顔の丸眼鏡をかけた男、終始笑顔だが果たして。


「俺は、ガルバンデス=サリウだ」

 背が高く屈強な兵士風情の体格の男、色の濃いサングラスをかけている為、表情は良く分からない。


「シャイナタイア=ラジエーカーよ…」

 魔法使い風の妖艶な女で、愛想はあまり良くはない。


「僕達と、旅に出ないか?」

 ワックの言葉に、アーツィーは目を丸くした。

「俺がアンタ達と、旅?」

「君の、出生の秘密に関わる旅だよ」

 ワックは、笑顔でさらりとそう言った。

 ガルバンデスは腕を組んだままアーツィーを見下ろし、シャイナタイアは自分の髪の毛先を指に絡めて窓の外を眺めている。


 アーツィーは、今…決断の時を、迫られていた…。


ー つづく ー

2023.1.12.木

792字



#逆噴射小説大賞2024


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 この物語は上記の通り、2023年1月12日木曜日に文者が実際に見た、夢の内容であります。

 色の付いたはっきりとした映像で、しかも彼らの声質まで聞き取る事が出来、まるでアニメーションを見ているかのようで、すぐさま手帳に内容をしたためました。


 この後、シャイナタイアの過去を彷彿とさせる内容の夢を見まして、何故彼女が旅に出る事になったかを知る事が出来た訳ですが、それはまた別のお話…と言う事で。


 まずは、文者の夢を通してアーツィーが見せてくれた彼の人生を、ずっと物語にしたいと思ってはいたのですが、中々その機会がなく…もうこうして、2年近くが過ぎようとしておりました。


 ですがこちらの企画のお陰で、ようやくスタートを切る事が出来ました事を嬉しく思いますと共に、主催者様、関係者の皆様に深く深く感謝致します。


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