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月曜日の、生
カフェで仕事をしていたら
隣の席が社長と社長だった。
どこかの社長と社長の顔合わせ的なやつが真横で行われていた。
社長が社長に営業をかけている的なやつ。
「丁々発止」「ニコニコわはは(正確にはガハハ)」
でも真剣本気の「腹の探り合い」。
自社の商品の話、こだわり、
雑談、世間話、政治の話、スポンサー、自身の家族構成、
「いやー、是非また●●(県名)に遊びに来て下さいよー」
その中で、互いに「わかり合った瞬間」みたいなものも、
目には見えないけれどじわっととろっと伝わってきたような気がして、
うっかり、失礼にも、じぃんとしてしまった。聞くな。いや、聞こえてん。
聞こえるから、心配すらした。
おいおい、こんなオープンな場でそないあけっぴろげに。
誰が聞いてるかわからんで。
現に、隣の妙なやつ(わたし)は
あなた方お二人共の名前も社名も業務内容も完全に特定しましたよ。書かないけど。
どうも、大物氏はこのビル内に店舗を持つ社長らしい。
だから、ここか。
でも、無防備。いや、その無防備さ故に、大物か。
老舗、
偉ぶったり高級ぶったりはしない、
チェーン展開はしない、
その業種で、道で、「まっすぐ」「自分の仕事」をしてきて・している、
上方落語でいう「大旦那はん」「旦那はん(だんはん)」みたいな社長。
に、
実家は由緒ある老舗の出、
古い考えの姉妹兄弟の中、
他の誰でもなくこの自分が「あたらしいこと」を起こし、
地方から広く野心的にチェーン展開をしてきた、
若くないけど若い新劇の役者みたいな社長が、
会いに来た、日帰りで。
海外からの料理人(にしておく)も連れて。
「さあ次はあなたも私たちとやりましょう」
すごい。
すごいぞ。
名言しかなかった。
名言なんて失礼。
肚からの言葉。説得力しかなかった。
「よぉけ稼いでも3回以上飯は食えん。食べすぎて病気なるだけです。
それよりお客さんが喜んでくれはるがええんです」
「まずいもんは、売りたないですからね。ほんまにええと思ったもんだけを」
「スイッチを入れる」
「技術を残す。伝統を残す。これですよ」
「人は裏切りよるけどな(笑)」
すべて、わはは、ではなく、がはは、がっはっはの笑いと共に。
こてこての大阪弁、いや、京都弁で。
海外からの料理人は、時折相槌を挟みながら、微笑みを浮かべ、聞いていた。
2人の本気の試合、あ、間違った、
2社のこれからがどうなったかどうなるのかは知らない。
でもね、わたしは、いえ、わたしもほんまにしゃきりとした。
彼らが席を立つまで、仕事は全く進まなかったけど。
こんな世、こんな日に。だからこそ。
◆◆
構成作家/ライター/エッセイスト、
momoこと中村桃子(桃花舞台)と申します。
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