毒を食らわば川上未映子、そして光 『すべて真夜中の恋人たち』
ストーリーを言ってもネタバレにはならないかもしれない。でも言いたくない。
ストーリーじゃなく何も言いたくない。先入観なしに、が、きっと、ぜったい、いい。
あ、珍しくぜったいなんて言葉を使った。使ったし、使いたい。
川上未映子、『すべて真夜中の恋人たち』という作品を読んでの気持ちです。
すこし、セリフを引用してもいいですか?
「何かにたいして感情が動いた気がしても、
それってほんとうに自分が思っていることなのかどうかが、
自分でもよくわからないのよ。
いつか誰かが書き記した、それが文章じゃなくてもね、映画の台詞でも表情でもなんでもいいんだけど、とにかく他人のものを引用しているような気 持ちになるの」
(中略)
「この『しょせん何かからの引用じゃないか、自前のものなんて、何もないんじゃないのか』っていうこの気持ちも、やっぱりどこかからの引用じゃないかっていうような気がしていて」
ドキリとしませんか。
主人公の台詞ではありません。
主人公とは〝真逆〟である友人が(きっと)自問自答しながら、でもそうだと思って主人公に言った台詞です。
でもわたしはこの台詞が、keyではないかと思いました。
keyっていうか、じわじわと、読みながら、読み終わりながらも、来ました。
なんてことないシーン(なんてないんだけど)でふと漏らされたこの台詞がです。
でも、それも、わたしの感想であり、わたしの感想でしか、ありません、ないのです。
恋愛小説だけれど、それだけじゃない。
美しい。
でも美しいだけじゃない。
キツイ。
でもキツイという言葉もそうだけどそうじゃないかもしれない。
〝毒を食らわば川上未映子〟
読み終えてから、ずっと頭の中でシーンを思い出したり繰り返したりの反芻の何日か後、頭にぽんっとこんなフレーズが出てきました。意味わからんけど。つまり、ハマってます、この作家さんに。
と、同時に、ぐるぐるとこの物語を考えていたら、
なんだか主人公や登場人物たちに一見全くあてはまらないようで、
このしずかな「美しい」と言われがちかつ帯にあるように「世界中が涙する、最高の恋愛小説」というキャッチコピーにぜんぜんそぐわないようで、
でも、あれ? なんか、しっくりくるような気もして、でもでも、光、光なんだ。
尊敬する読書家であり粋人から『ヘヴン』を教えてもらい読んで打ちひしがれました(その時書いたのは【これ】)。
氏がまたしても読んで感想を書かれていたのが本作で、わたしも手に取りました。
今度はしずかにじわじわと頭に心に体に沁みるように打ちひしがれた。
だから、おこがましくも、わたしからあなたにも届けばいいな、なんて、
やっぱり、おこがましますすぎるほど有名で人気の著者&作品です。
なんの布教だ数珠繋ぎだ引用だ、ですが、こう言いたい書きたい、
大声じゃなく、「ねえねえ、どう?」って伝えたくなった作品です。
最初の一行からタイトル回収……という最近よく使われるこの「回収」って言葉は嫌いですが敢えて使いましょう、回収まで、「うわあ」。沈み、浸り、見てみて下さい。
その光を。
*
以下は、うるさいおまけ。
関係あるようでなく、ないようであるから
スルーしていただいてもぜーんぜんオッケーです。
ネタバレが好きじゃないのです。
読んだり観たりする前に、うん、「前に」
主にSNSでうっかり詳細ネタバレが目に入ってしまったときの絶望ったらない。
ああ、ここにはもうすこし説明がいる。
楽しみで楽しみで楽しみで仕方がないのです、物語(や構成)に触れることが。
でも、気持ち正反対で変かもだけれど、
楽しみになりすぎて、魔がさして検索とかって、しちゃったりするときがある。
もう一度言う、楽しみになりすぎて。
すごいすごいどうしようもなく好きでハマっているものなら
敢えて「しないっ」ってなるけど、
わたしはそんなに心が強くないから、
やはり「先に触れている人が居る」という時点で事実で、ちょっと検索しかけたりする。
で、そっと、引き返す。寸止めのように、そこで引き返す。これは自由意志。
でもね、そうして自分の意志で「ちょっと知ろう」としなくても、
ああ、SNS、偶然流れてきたりする。
「あああああ」もしくは「あー……」
もっっっっのすごく落ち込む。そして、ものっすご落ち込んだ後怒りが止まらなくなる。
誰しもが(公式や演者が発信する以外のことは)まっさらな気持ちで物語や舞台やを楽しむ権利を奪われてはいかん、と思うねん。いや、まっさらは無理かもやろうけれども。
例えば小説や芝居の場合はストーリーとか、
ダンス(?)の場合は詳細なご丁寧ないろんな説明や構成やを書かれているのを「事前に」目にしてしまうと、作り手に対しても失礼な気もするねん。
勿論、読んだ後観た後には読み漁りますよ!
「みんなどういう受け取り方したのかな」「知りたい・共有したい」
「話したい、聞きたい」(これ、劇場で肚割ってる人にはいつも言う口癖みたいになってる!)
「話せないかわりに、じゃあ、ネット上のみんなの感想を読みたいな」
「それが自分と一緒の考え方であっても、そうじゃなく違っていても、おもしろいな」
「そんな〝多用〟な受け取らせてくれた方(日本語おかしいけど)、豊かさ、そんな風に思わせていただける作品ってほんとうにほんとうに贅沢だ、出会いだ。
きっと作り手書き手の中には「これ」「これっぽい」というメッセージや気持ちがあるのだろう、なんて〝豊か〟なことなんだ。
だからわたしはとにかくそれを探るというか近づきたかったり、
自分の意見がありがちな人間だからこそ、
その人のメッセージや気持ちを知ろう知りたい近づきたい受け取りたい感じ取りたい、が、めっちゃあるから、話したり、読んだりするのが、とてもとても好きだ。
でも「事前に」は……ね。
とはいえ、触れて、アガって、うれしくて共有したくてネタバレというか、勧めたい書きたい気持ちはほんとほんとわかりすぎるわかりまくるので、きっと誰も悪くはない、とも、書き添えておきますが(笑)
おまけが長くうるさくなりました。
この考え方が正しいとか正しくないとかじゃないし、
わたしもいろいろもっと考えたり気を付けたりせな、の上で、です。
上記の本は間借り書店「桃花舞台」(東京・湯島の「本屋・出発点」内)にも今月置きたいと考えています。
わたしの棚の本にはすべて裏表紙に「おすすめコメント」を付けて(貼って)置いているので、このコメントもネタバレというより「わたしはこう思ったから薦めたいなあ」な感じで書いています。
よければ是非ご覧になっていただければ、うれしいです。
以下、改めて貼っておきますね。
◆◆◆
以下は、すこしだけ自己紹介 。よろしければお付き合い下さい。
(先日のプチ告知2つも追加📚🆕
『本で旅する』よろしく&本屋さん来てくださればうれしいです!)
構成作家/ライター/コラム・エッセイスト
中村桃子(桃花舞台)と申します。
大衆芸能、
旅芝居(大衆演劇)や、
今はストリップ🦋♥とストリップ劇場に魅了される物書きです。
普段はラジオ番組構成や資料やCM書き、
各種文章やキャッチコピーなど、やっています。
劇場が好き。人間に興味が尽きません。
舞台鑑賞(歌舞伎、ミュージカル、新感線、小劇場、演芸、プロレス)と、
学生時代の劇団活動(作・演出/制作/役者)、
本を読むことと書くことで生きてきました。
某劇団の音楽監督、
亡き関西の喜劇作家、
大阪を愛するエッセイストに師事し、
大阪の制作会社兼広告代理店勤務を経て、フリーに。
詳しいプロフィールや経歴やご挨拶は以下のBlogのトップページから。
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lifeworkたる原稿企画(書籍化)2本を進め中。
その顔見世と筋トレを兼ねての1日1色々note
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5月1日から東京・湯島の本屋「出発点」で2箱古本屋も、やってます。
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旅と思索社様のWebマガジン「tabistory」では
2種類の連載をしています。
酒場話「心はだか、ぴったんこ」(現在19話🆕!!)と
大事な場所の話「Home」(現在、番外編を入れて4話)
旅芝居・大衆演劇関係でも、
各種ライティング業をずっとやってきました。
文、キャッチコピー、映像などの企画・構成、各種文、台本、役者絡みの代筆から、DVDパッケージのキャッチコピーや文。
担当していたDVD付マガジン『演劇の友』は休刊ですが、YouTubeちゃんねるで過去映像が公開中です。
こちらのバックナンバーも、
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