場所と時間 連載中のTabistory最新話が出ました
だいぶと前の話なのだけれど、
知らない街の知らない銭湯に行った。
知らない銭湯ではエンドレスで昭和歌謡が流れていた。
開店して間もない夕方頃の時間は、
きっと毎日同じ時間に来るのであろう人たちの空間だった。
お仲間内で挨拶や声かけが飛び交う一方、
こちらには遠慮のない視線たちが飛んでくる。
お風呂、裸、という、限りなくパーソナルな空間だからこそだろう。
けれど、でも、それも、なんだか、悪くないというか、
「そうだよな」というか、
自分たちの居心地の良い空間だからこそそうなるのだろうと思った。
遠慮のない、じろり、は、ある。
でも、こちらに対して危害を加えることはない。排除をしようとするものでもない。
放っておかれるし、放っておいてくれる。
それだけ、その場所はそのひとたちの生活に密着した場所であり、
大切や大事を超えたものなのだと思った。
番台に座る耳の遠い高齢男性はBGMに耳を傾ける訳でもなくテレビのニュースを見ていた。
湯に入り、さっと出て、「ありがとう」と声をかけたが、聞こえていなかったようだった。特にもう一度大きな声で言うのもなにか違うというか別にいいないいかなまた来よう、と、暖簾をくぐって外に出た。BGMは喝采からブルーライトヨコハマにかわっていた。
そのまま、知らない街の知らない酒場に入った。
吉本新喜劇に登場する花月食堂とか花月うどんのセットみたいな酒場だ。
今の新喜劇メンバーではなく、岡八朗や花紀京みたいなおっさんやじいさんがチョケていた。
教授と呼ばれている人や住職と呼ばれている人や近くの大学の先生みたいな人が、
カウンターでママ、ママ、と、しっかりした女将さんに何度も呼び掛け、チョけていて、
「もう、なにやってるん」「忘れ物しなや」とか怒られていて、
まるで小学生が先生に怒られてそれでもチョケているみたいだった。
あつあつのじゃがチーズを皆でわけようとして、こぼして、「だから何やってるん」と怒られて「わー」とか騒いでた姿は小学生以上に小学生だった。
ビールと、なんだか、気分的にレモンサワーを呑んで、さっと出た。
あの御常連たちもまた毎日ここに来てるのだろう。
「ほら、この店に来るからまた明日からもちゃんと働かんとね」とママに言われていた。
時間だ。時間が流れているな。いい時間が。と、思った。
特別な時間。特別ないい時間とかそういうのじゃない。
でもちゃんと毎日が、日々の時間がそのままただただ流れているなって。
昭和歌謡は流れるも日々のニュースが流れている。
湯上りの風を頬に感じ、時間と場所を思った。
場所について、考える。考えることが増えた。
美化するつもりはない。たた美化だけをするつもりはない。
そこはユートピアでも天竺でもないと思っている。
ほんとうに大切な、そこに集う人、大切に思う人たちのその場所は、だから、だからこそ、綺麗事じゃなく綺麗事だけじゃなく、むずかしいことも厄介なことも少なくないから。
大切だから、大切をとおりこした大切だから、こそ。
だから、考える。いや、願いを込めて思う。想いを馳せる。
旅と思索社さまのWebマガジン Tabistory に連載をさせていただいている
酒場と人の話、いや、場所の話、最新21話が昨夜公開となりました。
その場所たちにはいろんな人の気持ちが集まってる。
【こちら】から。または、以下のリンクから、
今回もお付き合いいただけますと、共に旅していただけますと光栄です。
梅雨入り、そして、夏至。
お体、雨、気を付けて、昼を夜を、いい時間いい場所を、楽しんでね。
◆◆
【略歴や自己紹介など】
構成作家/ライター/エッセイスト、
Momoこと中村桃子(桃花舞台)と申します。
旅芝居(大衆演劇)や、
今はストリップ🦋♥とストリップ劇場に魅了される物書きです。
普段はラジオ番組構成や資料やCM書き、
各種文章やキャッチコピーなど、やっています。
劇場が好き。人間に興味が尽きません。
舞台鑑賞(歌舞伎、ミュージカル、新感線、小劇場、演芸、プロレス)と、
学生時代の劇団活動(作・演出/制作/役者)、
本を読むことと書くことで生きてきました。
某劇団の音楽監督、
亡き関西の喜劇作家、
大阪を愛するエッセイストに師事し、
大阪の制作会社兼広告代理店勤務を経て、フリー。
lifeworkたる原稿企画(書籍化)2本を進め中。
その顔見世と筋トレを兼ねての1日1色々note「桃花舞台」を更新中。
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Webマガジン「Stay Salty」Vol.33巻頭に自己紹介エッセイを寄稿しました。
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酒場話「心はだか、ぴったんこ」(現在21話)と
大事な場所の話「Home」(現在、番外編を入れて4話)。
noteは「ほぼ1日1エッセイ」、6つのマガジンにわけてまとめています。
旅芝居・大衆演劇関係では各種ライティング業をずっとやってきました。
文、キャッチコピー、映像などの企画・構成、各種文、台本、
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担当していたDVD付マガジン『演劇の友』は休刊ですが、
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