中村桃子

北海道出身|愛知在住|27歳|演劇のお仕事をしたり文章を書いたり写真を撮ったり撮られた…

中村桃子

北海道出身|愛知在住|27歳|演劇のお仕事をしたり文章を書いたり写真を撮ったり撮られたり|主宰している創作ユニットのサイト:nanamomo3.com |Twitter:@momo__nm

マガジン

  • Reflection

    2019年、約半年間「ままごとハウス」管理人およびレジデントアーティストとして小豆島に滞在している中村桃子による、島を舞台とした掌編小説集。

最近の記事

変わらずにあることが生み出す物語と変わってゆくことで生まれる物語

瀬戸内国際芸術祭2022の夏会期が始まった。 そして、私、中村桃子はこの夏、作品No.Sd51  小豆島ハウスプロジェクト(新建築社+SUNAKI)のスタッフをするため、およそ1ヶ月、小豆島に滞在する。 参加アーティストとして創作過程に関わった訳ではない。 また、スタッフではあるけれども、私はもともと組織内部の人間という訳ではなく今回たまたまご縁があってお手伝いすることになった立場だ。 これから書く文章は新建築社およびSUNAKIを通したオフィシャルな発信ではなく私個

    • Snow Manのファンになったハロヲタの話

      ■Attention これから書くことは、私自身がこういう人だからこの人(たち)のこんな部分に惹かれるんだなと分析するような内容です。 そして応援するにあたって心に留めておきたいこと。 私が感じるハロプロメンバーとSnow Manの共通点なども語っているので、別のアーティストの名前を出して比較されるのが嫌な方はご注意ください。 (なお、「この観点で見ると似ている!」と思うことはあっても、大前提として、唯一無二のオリジナルの魅力がそれぞれにあると思っています。どちらかに優劣

      • 書く、ということ

        最近、まとまった文章が、書けない。 キナリ杯という企画を見つけたのは5月の頭のことで、面白そうだな、書いてみたいな、と思っていたはずなのに、締切まで1ヶ月もあったというのに、もうびっくりするくらい何も書けなかった。 それなら別にキナリ杯だって義務じゃないのだから何も書かなければいい話なのだけれど、でも、書いておきたかったのだ。 自分も文章に救われたことがある人間として。 だから、書けなかった、ということを書き残しておこうと思う。 書くという漢字がゲシュタルト崩壊しそ

        • 【掌編小説|Reflection】はじまり

           子供たちに帰る時刻を知らせるメロディとともに落ちていく夕陽は、山の向こう側に隠れる前にいっそう眩しく光ってこの窓を照らした。それはフィナーレに相応しく、この空間に散らばった様々な記憶の欠片がきらきらと輝いていた。  それは新緑の季節。まだ梅雨は迎えていないはずなのに、陽射しだけは真夏のようだった。この部屋の壁には、この窓から見える港を描いた絵がかけられていて、室内には男が一人、本当の窓から、本当の港をぼうっと眺めていた。  開け放されたままだった入り口は、来訪の音を鳴らさ

        変わらずにあることが生み出す物語と変わってゆくことで生まれる物語

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        • Reflection
          5本

        記事

          【掌編小説|Reflection】ひかりのありか

           物心ついた時には、光を浴びて、舞台の上をくるくる走り回っていた。そこが自分の生きる場所だと信じて疑わなかった。それは「その世界しか知らない」という事でもあった。それを不幸だと思う人もいるのかもしれないけれど、他人がどう言おうが、自分は幸福だった。  《井の中の蛙大海を知らず》ということわざがあるけど、のちに、《されど空の青さを知る》というフレーズが付け加えられたという。そのフレーズを「蛇足だ」とか「狭い世界しか知らない者の負け惜しみ」とか思う人もいるらしかったけれど、当時の

          【掌編小説|Reflection】ひかりのありか

          【掌編小説|Reflection】Melt

           花火をしませんかと誘ったのは星がとても綺麗な夜のことだった。この夏はじめての花火だった。子供と呼ばれる年齢ではなくなっても、火花がはじける様子にはどこか心が浮き立つ。けれど一人でそれを眺めるのは寂しいから、誰かと一緒にその色を眺めたくて、誘いをかけた。これをきっかけに距離が縮まればいいな、というほんの少しの下心もあったけれど、もっと単純に、感動の共有をしたい、みたいな欲求で。  庭先でちょっとできればいいな、くらいに思っていたのだけれど、せっかくだから海に行こうよ、近いし

          【掌編小説|Reflection】Melt

          【掌編小説|Reflection】はじめてのぼうけん

           小学校にあがったから、おれは、初めてひとりでさんぽに出かけた。こないだ買ってもらったばかりの青くてかっこいい腕時計をつけて、帽子をかぶって、お母さんにいってきますをした。お母さんは「気をつけてな」と言って水筒を持たせてくれた。  おうちのまわりのいつも歩いてるところも、ひとりだと、ちょっとどきどきする。空も海もおれの腕時計みたいにきれいな青い色で、ぼうけんびよりだ。  おれはとりあえず運動公園に行って虫を探してみたり、港で魚をながめてみたりした。港に行くまでの道路にも、小

          【掌編小説|Reflection】はじめてのぼうけん

          【掌編小説|Reflection】ただいま

           ゴールデンウィークが終わったばかりだった。  既に多くの人が日常に戻ったあとの街は人気もまばらで、しんとしていた。連休であろうがなかろうが多くの人が寝静まる時間帯に出歩いているから物音が少ないのも当然ではあるのだけれど、五月に入って数日間の賑やかさを思えば、静けさが際立つ夜なのは間違いなかった。キャリーケースを引く音だけが少しうるさかった。  深夜一時発のフェリー。乗るのは初めてじゃないけれど、久しぶりだ。  乗船手続きをした窓口で、 「アンダー25ね、何か年齢証明できる

          【掌編小説|Reflection】ただいま