見出し画像

旋舞の千年都市(著:イアン・マクドナルド)【読書紹介は回り続けた。地球と同じ速度で。今では景色も回らずに見えるようになった】

近未来のイスタンブールを舞台に描く、SF群像劇。
近未来というのは、今とほとんど見分けがつかないけれど、
ナノテクが少し発達して、チリみたいなスゥオームロボットが兵器として襲ってくるくらい、の近未来です。
本当に群像劇でして、

視点は少なくとも5視点。

病気で外に出れず代わりにドローンロボットを使う子ども目線。
兄が新興宗教のリーダーである問題児の弟。
かつてトルコ軍と協力してたギリシア系の元大学教授。
スタートアップに転職した女性マーケター。
伝説の「蜜人」を追い求める女性美術商。

イスタンブールが好きな人は文句なしに楽しめるけど、
欧米リベラルが良くやりがちなマイノリティを重要人物に抜擢しすぎる手法とか、まあ結局は面白ければいいんだけど、こういうのってスパイスの加減の問題だからリスクがある。
スパイスを使うことが目的にすり替わってしまうと、食べられたものではない。リベラルの人がやりがちな失敗。
しかし本作では、我々がトルコのことを良く知らないこともあってか、そこまで違和感を感じるほどではない。

↑ (いまトルコに行くのはちょっとおっかないですよね。トルコ自体は安全なんでしょうけど)

なんかよくある展開もあるし、
さらにあれだけ振り回して、視点を複雑にして、
たくさんの知識分野にまたがっている割に、
結局はテロ組織と対決するだけ、というのは、
ちょっと視野が小さくまとまりすぎている感もした。

英国で賞を取ったのだが、
英国人は何が気に入ったのか、
少なくともトルコを舞台にしたSFが英国の審査員にとって、珍しかったという点は否定できない。

厳しい見方をしてますけど、ま、ま、別に面白くないわけではないです。
近未来のナノテク技術も出てくるので、
サイバーパンクSFの一種として未来気分を味わえる点もあります。
でも近未来なので、ナノテクは価値観を変えてしまうほどではありません。
SF好きなら常識の範囲内ですね。
人間の思考を操るとか。感じ方を変えるとか。スゥオームロボットとか。

蜜人は即身仏のようなものでそれ自体がスゴイ価値の美術品とか。

なおタイトルの旋舞とは旋回舞踏の話みたいですね。
宗教儀式だったのですが、今ではどちらかというと文化になっています。

病気の子どもが、外に出れない自分の代わりに、ドローンロボットを冒険に行かせるところとか。で、なんかハッケンしちゃうけど大人は信じてくれない。
そこでお母さんの言いつけを破って、自分自身で外に出て探しに行くとか。

おそらく私がSFに何を求めているかというと、
価値観をぶっ壊してくれるとこだと思う。
鉄パイプが人間に見えてきて、
人間が鉄パイプにしか感じられなくなって来れば、
そのSFは、私にとって合格だ。

だから、日常の延長線上にある本作は、
私にとっては物足りなかったけど、
でもイスタンブールが舞台だったので、
まあ、ありっちゃありだ。
ただ本棚に弟が買ったまま読まずに放置してなかったら、
私はこれを読まなかったと思う。

それと著者がイアンマクドナルドだということ。
この人の作品は別にすごく気に入ったやつがあるのだが、
それはまたの機会に。

#読書感想文 #SF小説が好き #近未来 #群像劇 #6人の主人公  
#6つの視点 #ナノテク #トルコ #イスタンブール #英国人作家  
#マイノリティ出身の登場人物 #クルド人 #ギリシャ人  
#女性マーケター #新興宗教 #テロ #技術 #アバターロボット  
#子どもの病気 #美術商 #パラレル展開 #ナノロボ医療  
#ナノロボ洗脳 #ナノロボテロ #ナノロボ治安維持 #ナノロボ感染症  
#蜜人 #美術ハンター #歴史学 #都市地下の秘密 #汚職  
#スタートアップ企業 #資金調達 #ビジネス #情報部 #元大学教授  
#行き過ぎた正義 #バタフライエフェクト #大団円  

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?