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アメリカンブッダ(著:柴田勝家)【おのおのがた。読書紹介は何事も毒見が大事にござる。さあっ、さあっ】

戦国武将じゃない方の柴田勝家によるSF短編集。
おのおのがた、出陣でござる。
ぶおぶおー。(効果音のつもり)

さて。勝家どのの人となりとは違い、
作品はまじめなSFにござる。

まずはメタバース世界で一生を過ごす特異な少数民族について。

それから南方熊楠とシャーロックホームズを出した冒険SF推理譚の短編。
こちらは「ヒト夜の長い夢」の前日譚的な話。

そして表題作のアメリカンブッダは、
メタバースで数億年いや、数十億年を過ごしたかもしれない人々が、
現実世界のアメリカ合衆国跡地に帰って来る話。

長い遍歴のすえに、故郷に帰って来るという物語。
なぜ帰ってきたのか?
仮想世界での長すぎる人生とはいったい何だったのか?
を書いています。

この「アメリカンブッダ」の世界は、
仮想世界では現実の数千倍に体感時間を加速させることができる。
という前提があります。

そのため、現実に残った肉体人たちと、
仮想世界に移り住んだ電子民たちの差は、
経過時間の差が非常に激しくなっていきます。

出先で自分の宇宙すらつくり、創造を思う存分に楽しんだ神々が、
遠い時間の差から届く、切れ切れの言葉に郷愁を感じられるかどうかが、
重要なポイントです。

仮想世界で神にまでなって、さらに遠くを目指そうとする人たちもいるなか、
中には古い世界に帰って来る人もいるわけですね。

その道しるべになったのが、アメリカ先住民の若者が、
リアルワールドから仏教徒になって考えてみた。
という動画だったわけです。

で、56憶7千万年という数字を出した来たわけですね。
実に相対論的です。

これはキリスト教的な救済概念に(アメリカを元世界に選んでいる)
仏教的な救済概念を上書きさせてみたSF。

こういうのが好きな人には効くと思います。
スケール感と郷愁が重要なポイントでしたね。

新海誠監督のデビュー作、ほしのこえ、みたいな構成ですね。

そうはいっても、ブッダでは再会までみっちり描かれているのでね。
そこらへん、切なさよりも大団円感があります。

悪くないと思います。
SF初心者にも読めそう。何より短編集。

今回はSF短編集にござった。
では。

おっと勝家殿の、別の作品を以前に紹介していたのでござる。
失念ござそうろう。


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