第ⅩⅦ章 (最終章)世界の初まりとヘスぺロス・アギーアイランド−3_Q .
Vol.3 テルル・デカ・ダンス
蒸し蒸しとした空気がいつの間にか少し軽くなった気がした。夏の澄んだ青がどこか薄くなって入道雲が小さくなっている。小さな窓から見える木漏れ日に僕は目を凝らしていた。この檻の外で起こっていることがどうなっているのか。僕は思いを爆ぜながら静かな時を過ごしていた。彼女達が来なくなってからはや1週間ー。来なくなったという事は、彼女達はきっと動き始めたという事なんだろうと思った。ふと思う。革命とはなんなのだろう。この社会において。それは、国家転覆やテロなんかを行うことではないと僕は思う。何だろう。脱皮に近い感覚ではないだろうか。社会という古い体とおさらばし、新しい人たちが気づいていく。そういう社会の代謝的なものが革命であるのだと。どうしても、社会は生物のように動的平衡を行なってはいるものの、どこか不十分な代謝にとどまってしまう。人間の溜まった角質を取り除くような作業が必要なのだと思う。そう。僕にとっての革命とはこういう事なのだ。そう改めて思った。それにしても、なんて革命日和なんだろう。どこか希望が持てるような侘しいような気持ちに襲われた。僕は、お昼ご飯に運ばれてきた味気ないご飯を食べた後の昼下がりを過ごした。
ー時計は12時を回ろうとした数分前。こんなのどかな昼間。鳥の声が森の中を駆け巡る。誰もが平凡な日常を過ごしていた。この矢木沢ダムの水源管理等もその中の一つだ。いつも通りという言葉がピッタリ合うような日和。だが、その一瞬で何かが瓦解していく音がしいた。ドタドタと矢木沢ダムの水源管理所に侵入者が入った。十人組の集団は、ルドラのお面を被っていた。
「何なんだキミ達は。」
中年の男性が集団に怒鳴る。
「大人しくしろ。」そう言って中年の男性やその他四人の職員を押さえつけ、結束バンドで手足をくくりつけ、動けなくした。不意だったこともあるし、運動不足気味の体型の職員らだったせいもあるだろう。彼らは動物園の動物のようにあっという間に自由を奪われたのだった。
「キミ達は自分たちがやっていることが何をしているのかわかっているのか。」中年の男性が叫ぶ。
「もちろん。革命だよ。」集団の中の一人が応えた。
「こんな社会を変えたくて行動するんだよ。ゲームや物語の中じゃない。リアルな世界で。」集団の中の別の人が続けた。
「こんなことしても、世界は変わらない。キミ達もすぐに捕まってしまうぞ。」中年が言った。
「我々だけならそうかもしれない。でも、我々は一人じゃない。クラスターだ。」集団の中の一人がいう。
「クラスター?どういう意味だ。」中年の男性がいう。
「言っている通りだよ。我々だけがこんなことをしているわけじゃなくて、他にもたくさんの人がいるんだよ。ルドラのために活動するもの達が。」集団が仮面の裏でニヤリと笑いながら言う。
集団達は、職員らを部屋の片隅に追いやり、ふーと一息をついた。そして見張りを数人で行い、残ったメンバーは建物にあるテレビをつけた。いつも通りのお昼の番組が繰り広げられているかと思ったが、どこもあるニュースで持ちきりだった。
「ー現在、ルドラの後継者を名乗る複数人から犯行予告が届きました。
’’いのちの水を人質に、この社会を解放せよ。我々のルドラを解放せよ。’’
というメッセージの内容が届きました。現在、警察はこれらの送り主の特定と、都内での警戒を続けております。」アナウンサーが原稿を読み上げる。
「いやー、こんなふざけたメッセージを送ってきてけしからんですね。」コメンテーターお決まりのセリフで答える。
「本当ですね。先日の国会ハロウィン事件に引き続き、その余波がこんなところに広がっていたなんて。」別のコメンテーターが意見に同調した。
「ここで速報ですー。」
慌ててスタッフらしき人が原稿を持ってきた。キャスターがその原稿を見ると眉を顰めながら文章を読み始めた。何やら不都合が起こった様子だった。
「ただいま入った情報によりますと、ルドラの後継者を名乗るグループが、都内や主要都市の水道源となるダムや河川の管理施設を強襲したことが報告されています。犯人達によると、政治が動かなければ水道水にテトラデトキシンを混入させるというものです。」キャスターはゆっくり、そして確実に文章が伝わるように読み上げた。そのせいか、テトラデトキシンのイントネーションがおかしかった。
「テトラデトキシンって何ですか。」コメンテーターがきく。
「ふぐ毒ですね。」何かの専門家らしき人が言った。
「ふ、ふぐ毒。なんて恐ろしいことをするんだ。悪戯の範疇を超えている。」コメンテーターが声を荒らげる。
「最近の若者たちは、SNSだなんだで集まっって集会とか開いているわけでしょう。ゲームとかもどんどん過激なものや、動画なんかもすぐ上げたり、マナーがなっていない。協調性が失われているというか。現実とゲームの区分けができなくなってきているのが原因でしょう。」昔問題を起こし、今はニュースのコメンテーターをやっている元芸人がいう。
「やっぱりいけないですよね。そういうのは。私も最近の時代についていけなくて、こう言うネットとか怖いですね。昔もアイドルの追っかけとかいましたが、今はネットがあるでしょう。そう言ったもので陰湿なストーカーとか増えてるって聞きますし。変な時代になりましたよね。」元アイドルが言う。場のみんなんが頷き、同調を得ていた。
「それはさておき、皆さん。水道水を不用意に飲んではいけませんよ。犯人たちがすでに何かを仕掛けている可能性があります。」何かの専門家らしき人が言った。
「けしからんですよ。これで死者が出たら本当に許されることじゃない。」コメンテーターが言った。
「警察は今後どのように動くんでしょうか。」冷静なコメンテーターが全員に投げかけた。
「正直、一杯一杯でしょう。こんなに全国で同時多発的に事件が起きてしまっては、後手後手にまわってしまいますし。」政治アナリストという肩書きの人が言った。
「ましてや人質が水道水なんて。国民全体が人質みたいなもんですもんね。」元アイドルが言う。
「これは、総理がどのように対応していくかが今後大事になっていくでしょうね。」政治アナリストが言った。
プツン。テレビを切った。
「こういうことだ。職員の皆さんも今の状況がわかってもらえたかな。あなた達がの目の間にいる人間がどんな集団で何を成そうとしているのか。」リーダーらしき人物が言う。
「こんなことして、タダで済むと思うなよ。」中年が言った。
「こんなことしてタダで済まないのは、この社会の方だと思うが。まあ、好きに言っていればいい。もうすぐ世界は変わる。世界を問う審判が行われるのだから。」リーダーは不適な笑みを仮面の下で浮かべて言った。
日本中の水道局のジャックが行われてから3時間ー。政府はルドラ後継者による水道テロ事件の特命対策本部が開かれて、今も総理と官房長官らの会議が行われていた。その間、政府とルドラとの間では均衡が保たれていた。下手に政府が動けば水道に毒がばら撒かれ、その被害は尋常じゃない。さらに、彼らはそれを生配信しているため、下手に動けないというのもある。この均衡は一報の連絡によって、崩れることとなる。
”我々からの要求は、ルドラの裁判を全国民に生中継する公開裁判、そして、投票を持ってこの善悪を問うてもらうことだ。さもなければ、我々は聖なる泉を汚さなくてはならない。”
このメッセージが流れてきた時、政治家達は頭を悩ませた。どんなことをしでかすか分からない連中にこれ以上好き勝手させられるわけにはいかない。だが、このまま奴らの指示に従わなければ国民からの反感をかいかねない。
「速報ですー。ルドラ後継者を名乗る連中が原子力発電所のジャックも行いました。」慌てて事務次官が対策本部に駆け込んできた。
「なんだと。」官房長官が叫ぶと同時に、対策本部内に戦慄が走った。奴らは水道によって手薄になった隙をつき、原子力発電所をも落としたと言うのか。
「奴ら、どこまでやる気なんだ。仔虫とでも思っていた連中が、ここまでとは。」警察庁長官が嘆いた。
「しかし、警察庁は何をやっているんですか。こんなふうに一方的にやられてしまっては、名が泣きますよ。」防衛大臣が言う。
「こんなに同時多発的に事件を起こされては、各種国の機関はパンクしてしまいますよ。県警間の中が悪いのは皆さんご存知でしょう。そこをうまくついてきた。情報の共有なんてできたもんじゃない。それに、水道やライフラインの管轄は国土交通省の管轄です。」警察庁長官が言った。
「いや、もうこれだけ後手に回されていてはパンクしていると言っても過言ではない。うちだって、こんなテロに対しての対策なんてできちゃいませんよ。テロは経済産業省とかの管轄でしょう。」国土交通大臣が言った。
「まあまあ、ここで責任のなすりつけ合いをしても仕方ない。それよりも今大事なのはこの事件を早急に鎮火することですよ。しかし、どうしてこうもるどらの後継者たるものがここまで現れたんだ。」総理が言う。
「奴の面会記録はどうなっている。」官房長官が尋ねた。
「それが、記録がないんです。」警察庁長官が答える。
「’’記録がない。’’だと。どういうことだ。」官房長官が唸る。
「えええ。誰一人とも面会していないということか。」厚生大臣が尋ねる。
「記録上はそうなっています。」警察庁長官が言う。
「くそ。捕まえてやってから、これほど時間差で仕掛けてくるとは。奴はどれほどまでに策士なんだ。」国土交通大臣がいう。
「本気で国家をつぶしに来ているのか。」総理が言った。
「たかが、いたずらだと思っていたが、ここまでくるともういたずらでは済まないな。」経済産業大臣が言う。
「スーパーやコンビニなどで水が消えたそうです。」事務次官がぼそっと言った。
「なんだと。」総理が言う。
「毒がいつ仕掛けられるかもしれない水道水なんて誰も飲みはしませんからね。」警察庁長官がいう。
「バカな国民が。全く。すぐにこうやって買い占め買い占めなんて行うからこんなことになるんだ。」官房長官が怒る。
「仕方ないですよ。買い占めは日本の文化です。江戸時代から米騒動とかあったじゃないですか。それからもオイルショックだなんだと。」文部科学大臣がいう。
「バカな遺伝子はここまで続いているということか。」経済産業大臣が言う。
「全く、井の中の蛙ですね。」誰かが言った。
「全くだ。」対策本部内のみんなが納得する。
「さて、そろそろ決断しなくてはならないな。我々の国家を守るために、尊い犠牲となってもらうか否か。」防衛大臣が言う。
「別に尊くはない。決断の余地はないだろう。」官房長官が言う。
「これは皆の総括ということで良いですかな。」総理が言う。
「総理、何をビビっているんんですか。これは大義だ。怖気付く必要はない。」官房長官が言う。
「そうですよ。我々の断固たる姿勢が逆に支持へと繋がる。」警察庁長官がいう。
「だな。我々の国を守るために。」総理が言う。
「では、ルドラ公開裁判を行うこととしましょう。」官房長官が締めの言葉を言った。
総理官邸前での緊急記者会見が行われた。
「ーであるから致しまして。国民の命を脅かす行為をやめていただきたい。そして、そのために公開裁判を行うことを我々はお約束いたします。ですので、直ちにこれらの行為をやめていただきたい。3日後の行われる裁判を必ず実施いたします。」総理は淡々とメーセージを伝えた。
「総理、これでルドラが収まるとでもお思いでしょうか。」一人の記者が言う。
「約束を破った場合。内閣を解散することをお約束いたします。」総理が言う。
「それはあまり意味のない行為ではないですか。」
「守らない前提だろ。」
「そんなんでルドラが止めるなら最初からこんなことしていないだろう。」
「そうだそうだ。」
「お前が辞めても意味がないんだぞ。」
どこからともなくとりとめのないヤジが飛んでくる。ここぞとばかりに国への不満が溢れている。群衆はどこか糸を引かれたおように国家へと不満を漏らしていく。全ては、国の対応やこれまでの行いが悪かったのだと。そんな総理の記者会見のルドラ後継者の返答は意外だった。彼らは、”今回の活動に参加したすべての人間を無罪とすることを追加の条件として公開裁判を行なってくれれば、今すぐにこの行為をやめる”と言うものだった。これには政府もSNSの人々も驚きを隠せなかった。本当に彼らの目的は公開裁判を行いたいことだったのだ。そう思わせた。なんだか、ここまで素直な人々を裏切っては、完全に政府が悪者になってしまう。さらに次は何をしでかすか分からない。それもあり、公開裁判は約束通り行われることとなった。
ー3日後の日曜日
日本中が注目する公開裁判が開かれた。生きた目も金属の眼も様々なレンズがこの公開裁判を注目していた。僕は、緊張はしていなかった。どこか落ち着いていた。いつかの自分が言っていた。自分が本当にやりたかったこと。それが今、行われようとしているのだ。
「それでは、ルドラに事件に関する公開裁判を開廷します。被告人は前に。」裁判長の言葉を合図に僕は前に出た。そこから簡単な質問が繰り広げられた。
「被告人は内乱を起こしたことに加え、さらに数多の国民を犠牲に水道と原子力爆弾を占拠するテロ行為を行いました。それについてお認めになりますか。」裁判官が言う。
「ええ、認めます。全ては、僕の言葉が小石となりました。」僕一呼吸した。
「小石とは?」裁判官が問う。
「今の日本をどう思いますか?総理。」僕が問うと総理にみんなの視線が映る。
「素晴らしい国だ。治安はいいし、ご飯も美味しい。それに人々が皆楽しそうに暮らしている。」総理は自信を持って答えた。
「そうでしょうか。少子高齢化の末期、上がらない賃金、停滞した経済、政治への無関心、裏金問題などなど、数えらばたくさんの問題が溢れているように思います。僕は、そんな問題に対して何か解決策を投じたかった。これから述べることは、僕の犯行動機です。いや、犯行と呼ぶのは相応しくない。これは、僕が奏でた音楽とでもいうべきでしょうか。それについて語らせていただきます。」
その言葉を一言一句として聞き逃さないようにして映像装置や録音装置に収めた。あるものは、その言葉を胸に収め、あるものはペンでそれを収めた。その感動的な音楽はさまざまな人の心を撃つソイストそのものだったと僕は自分で今の自分を想像しながら思った。僕は、音が誰かの心に沁みていくのがわかった。話している刹那、人々の顔が染まっていく。心を落としていく。どこか希望を持つような感覚にさせらて言っている。ああ、心地よい。そういう感情が僕の演奏を走り出させる。きっかけさえあれば、誰でも革命を奏でることできる。その背中を押すことをこの公開裁判によってー。
「ーこれが、僕の奏でた物語の全てです。」
30分を超える音楽を聴き終えた聴衆は誰もが立ち上がり、手を叩いた。鳴り止まない拍手の中、僕の無罪が鉄槌の音と共に告げられた。そうだ。
”革命は起こすものじゃない。紡ぐものなんだ。” 僕はそう言った。
裁判で無罪を瞬間、全ての書店や電子書籍のサイトに【黄昏の黙示録】という書籍が並べられた。露祺セレンまたの名をルドラ。いや、テルルともいう。太陽と月を一つにしたようなそんな語り手の革命が日本中に届けられた。人々は急いでそれを買い求めた。無罪を勝ち取り、勝ち誇った表情を浮かべるフォローワー達。それは、まるでオリンピックで日本代表が金メダルを獲得したものに近かった。そこに記者達が駆け寄ってきて、今回の裁判についてや数々の事件について尋ねてきた。僕は、それらは全て【黄昏の黙示録】に書いてあると告げた。もし質問があるようなら改めてアポを取ってください。と付け加え。次の瞬間、突風が吹いた。
「ルドラ、お前のせいで私は全てを失った。株価の暴落。彼がルドラに酔狂して警察に捕まり、私は。私は。私わあああああ。」くたびれたスーツの女が僕の間にやってきた。女はひどく興奮していた。覚醒剤でも服用しているのだろうか。
「…。」
「黙ってないでなんとか言えよ。彼の心まで奪っておいて、ダンマリなんてあんまりじゃない。」女は激怒していた。
「…。」僕は彼女の様子を見ていた。
「くそ。何も言わないからってお前の罪は消えない。殺してやるううう。」そう言って女は僕に向かって刃物を突き刺した。僕はきっと避けることもできた刃物だったが、そうすることをしなかった。グサリというオノマトペが似合うような鈍い一撃が僕の臓器を突き刺した。傷口がヒリヒリと火傷のように痛むのを感じた。
「お前何やってんだ。」ルドラのフォローワーが女を取り押さえた。
「いやだ、死なないで。」
「救急車を早く呼んでくれ。」
「医者はいないのか。誰か我々の希望を救ってくれ。」
「その女をぶち殺せ。」
ルドラのフォローワーが女を取り囲んだ。復讐の眼をした集団に女はすでに腰が抜けていた。
「そいつがいけないんだ。そいつのせいで。」
女が錯乱した様子で叫んだが、誰もその女の言葉に耳を傾けはしなかった。僕は、その様子を他所に、イヤモニをつけて男がターゲットクリアという口の動きをしているのが見えた。公安かー。僕はその一部始終を見ながら自分の血が流れている地面を見た。
「皆さん。これは革命の始まりだ。僕を失っていてもあなた達は立派に革命の炎を途絶えさせる事はなく成し遂げたではありませんか。僕が居なくても皆さんならできる。僕はこの本に紡いだ。この本の続きを描くのは皆さんだー。」
僕は、今叫ぶことができる精一杯の声で青空に叫んだ。それを聞いいたフォローワー達は叫んだ。それは、どこかのライブフェスのクライマックスとでもいうかのように。色々な感情がこもった声が響き渡った。血の流れはとまらない。群衆の叫びも鳴り止まない。
ーこれで物語は本当の意味で始まったのだ。僕はどこか死場所を探していた。どこかの物語の主人公と同じような。
”君のやりたかったことは、英雄になって死ぬことだったんだね。”
「そうだよ。太く短い人生が過ごしたかった。細く長くただ摩耗していくだけの人生じゃなく。人生100年なんて世間では言われているが、そんなに生きたくはなかった。死に様は桜のように美しく侘しくかっこよく。」
”これからの僕の紡いだ革命はどうなるだろうか?”
「そうだね。きっと、これからカオスな時代がやってくる。明治維新のような新たな夜明けがやってくるよ。これから変わる世界に干渉できないことは少し残念だけど。」
”でも僕が作った黙示録は必ず小石になる。”
「もちろん。そのための黙示録だ。獄中でゆっくり描かせてもらったからね。だからあとは、ゆっくりとあの世で見物させてもらうとしようか。」
”そうだね。やっと帰れるんだもん”
「そう。帰れる。」
まだ夏の暑さを捨てきれていない秋の青空だったが、急に風が冷たく冬の気配を感じた。それと同時に僕は眠りに落ちるような感覚に襲われた。周りがだいぶ騒がしいはずなのに、今やその音すら心地よいレクイエムのようだった。下校のチャイムが僕の帰りを知らせている。
僕の死から三日後ー。日本は革命を紡ぎ始めた。