【カサンドラ】 ~第2章~ 12.1996-夢薬
頻りに後ろを振り返りながら、なんとか自宅の玄関の前に辿り着いた。
震える手で真鍮の丸いドアノブを掴み視線を左に動かすと、
姿形のはっきりとしない黒い影が被さるように私の頭上を覆った。
急いでドアを開け玄関の中に入ったが、何度鍵を閉めてもドアが開いてしまう。
壁に足を掛けながらドアを引っ張り、中央にある四角い小窓から外を覗くと
先ほどの大きな影が次第にはっきりとした人の形となり姿を映した。
不意に外側から強い力でドアを引かれ、私の体はフワッと浮き
もうダメだと諦めた瞬間警報のよ