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子持ち鮎のコンフィと大人の味・苦味

季節ごとに訪れたくなるフレンチレストランがある。
そこのオープンキッチンのカウンターに座って、
シェフが手際よく料理する様を見ながら、
出てくるお皿を待つのがとっても好きだ。
こんなにガン見されてやりにくいかも、と思ったりするが、
シェフはお構いなしだ。
きっとそれだけ、やっているという自信と、
見られていることの適度な緊張感と、
おもてなしの心があるからなのだろう。
格好良すぎて見ずにはいられない。
という訳で、テーブル席もあるが、
気の合う友人と必ずカウンター席に座り、
シェフの仕事をガン見し、たまに手が空いたシェフやホール兼
ソムリエスタッフさんと会話をしながら美味しい料理とお酒を楽しむ。
贅沢な時間だ。ありがたい。

ここに来ると欲張りになる。
一人で作っているのに季節の素材を活かしたメニューが多すぎる。
欲張りになってもたくさん食べられないのが悩ましい・・・・。
スタッフさんと相談しながら旬の素材を活かした料理を選ぶ。
一緒に行く友人と好みが似ているのがありがたい。
遠慮せずに食べたいものが言える。

今回特に印象に残ったのが子持ち鮎のコンフィだ。
(*コンフィとは油に食材を浸してじっくりと煮る料理法のこと)
大きな子持ち鮎の身がしっとりふわふわで、
内臓の苦味と卵のプチプチ感もたまらない。
頭から尻尾までとても柔らかく、骨を食べている気がしなかった。
一匹丸ごとペロリだ。
油で3時間低温調理とのこと。
素材を活かした丁寧な一品だった。

友人と苦味について盛り上がった。
苦味が癖になるのは大人の証拠だね、と。
確かに子供の頃は、サンマの内臓や
ゴーヤ、菜の花、春菊、セロリ、茗荷、ピーマン、といった
苦味のある野菜は避ける傾向にあった。
それが今や、むしろ苦味や酸味など癖のある味を好む。

子供の野菜嫌いは仕方ない、歳を重ねると味覚は変わるよね、という話になり、
ヒトの発達と味覚(基本の五味:甘味、塩味、酸味、うま味、苦味)の
関係について改めて納得した。

甘味:エネルギーのシグナル
塩味:ミネラルのシグナル
うま味:タンパク質(アミノ酸)のシグナル
酸味:腐敗・発酵のシグナル
苦味:毒のシグナル

ヒトが本能的に甘味、うま味、塩味を好むのは
生きていく上で絶対に必要な栄養素と深く結びついているからだ。
ヒトが最初に口にする母乳やミルクから味覚が形成されるので
甘味、うま味、塩味は先に発達していく。
枝豆、とうもろこし、フライドポテトが子供受けするのも納得。
酸味や苦味は本能的に危険と捉えて発達が遅れるらしい。
酸味や苦味を口にしても危険ではないという確信と
経験値を積むことで、美味しいと感じるようになり少しずつ好まれていく。
大丈夫だという経験と記憶に基づくのだろう。

経験値を積んでいく際に、最初は苦手な苦味でも徐々に慣れていき
いつの間にか好むようになるのは、唾液に含まれるタンパク質の成分変化が
関係しているという報告があった。
米国パデュー大学の研究によると、苦味があるものを摂るほど、
唾液に含まれるアンチ苦味成分のタンパク質が増加し、
苦いという評価が弱まり美味しく感じられるようになるメカニズムが働くらしい。(Crawford & Running.2020.Physiology & Behavior. Vol225)

そういえば、経験上、味覚はシチュエーションや感情でも変わる。
疲れたりストレスを感じるときは、苦味が和らぐらしい。
唾液中の成分であるリン脂質が増えて味をマイルドにするからだそうだ。

なーる・・・・・。

ドラマ梨泰院クラス(日本版は六本木クラス)で、
主人公が初めて父とお酒を酌み交わすシーンがある。
そこで父から、「初めて飲む酒の味は?」と聞かれる。
人生でものすごいことがあった日の夜のことである。
(主人公はとっても疲れてストレス感じまくり)
息子は、「甘いよ。」と答える。
父は、「それは今日一日が衝撃的だったという証拠だ。」と返す。
改めてものすごく納得のいくセリフだった。
そっか、疲れている時はビールとかコーヒーがマイルドになって美味しんだわ。(唾液の成分変化だ)
加えて、苦味成分には抗酸化やデトックス、胃酸分泌促進作用があるから
生理的に体が欲するようになるのかな。
くーっ、苦味成分、大人の味だ。

それにしても、いつ頃から苦味や酸味の経験値が増したのだろう。
父はよく私に大人の食べ物を味見させた。
うげっ、となるようなものもあったが、好奇心が強かったのか
勧められると大抵食べた。
そこで経験値を積んで行ったのだろうか。
おかげで食への関心は常に刺激され、食べる食材の範囲は広がり
とっても食生活はカラフルで豊かになった。

酸味と苦味は、腐敗や毒のシグナルとして本能的に嫌うかもしれないが
人間の経験と知恵に基づき、美味しいもの・体にいいものをバランスよく
摂っていきたいな、とコンフィから味覚について深く考えた次第だ。

【ことわざ】
毒薬変じて薬となる。
薬も過ぎれば毒となる。

毒成分を含むことが多い苦味も実は少量なら体に良かったりする。
体に良いものも食べすぎると調子を崩す。

昔の人はこうしていろんなことを伝え教えてくれている😌🙏

カバー写真: 絶品子持ち鮎のコンフィ

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