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空から落ちてきた

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ラジオのつまみをいじっていたら、心惹かれる曲が流れてきたり、手紙入りの瓶が流れてきて、直接語りかけてきたり、そんな瞬間がほしくて。 散文、ときに韻文。胸いっぱいのさびしさをあな…
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つばさよつばさ #短歌条例

つばさよつばさ #短歌条例

つばさ持ち切り取ってゆく輪郭を描くことなどもう嫌だけど、逃げられぬ定め宿命見えぬなら抗うこともできないわけで、希釈した悲しみなどを青空にさらに垂らして何も起こらず。風の音聴こえていても風が吹く土地の果てには辿り着けない。願うなら行えばいい。誰一人止める人などいないのだから。唱えても虚ろね。呪文の声調は誰も教えてくれないものね。とりあえず進むしかない道があり、後ろ姿は消えてしまった。笑おうかもしも私

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さみしさをかなぐり捨てて #短歌条例

さみしさをかなぐり捨てて #短歌条例

さみしさをかなぐり捨てて、今日の仕事の支度をしても、捨てたもの全てが意思を持つようで、縋る腕から逃れられずに、過去問を解き続けても今日に来る問に答える自信はなくて、微笑みを浮かべていても漆黒の重油のような膜は消えない。ひとつずつ罪の重さを数えては検算をして救われないで、この闇の吐き気のような気だるさに自分全てを委ねたくなる。敗北は誰かが勝手に決めるもの。私のことは放ってほしい。分銅に誰かが書いた目

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朝が来るから #短歌条例

朝が来るから #短歌条例

朝が来るから寂しいの?どうせまた使ってしまう時間だろうに。一日を積み重ねてはまた崩し、いつまで生きているつもりなの。鈍色の東の空に戻せない光を眺め傷ついている。そんな日もあるよと誤魔化せないほど、君の心は倦んでいるんだ。双子座の君と蟹座の私なら、いずれ笑って世界を壊す。そんなこと、疑わないで授業前、部室に行ってつかず離れず、クラシックギターの弦を弾いてはまた弾く爪じっと見ていた。さみしさが音に出る

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神様が忘れていった

神様が忘れていった

神様が忘れていった月や星、置き去りにして朝焼けを待つ。冷たい風が通り抜けていき、なけなしの体温を掠め取っていく。

頭の中、脳細胞が示している世界に過ぎないのに、ここに自分の全てを委ねて、いつの日か後悔する日がきっと来るのだ。

最果てですか?
いいえ、私は風です。

一秒ずつ削られていく寿命を誰も贖ってはくれない。手持ちのカードだけで歩いていく。切ったカードの補充はあてにできなくて。

朝焼けは

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さよなら

さよなら

何処かに行きたいと思っていても、その何処かなどどこにでもない土地でしかないことは分かっていて、しかしここではない何処かへの希求は容易に収まることはないのだ。

さよならを私自身に言いたくて屋上の鍵壊してみたい

無い土地にどのように行けるのか。そこまでの手段は? 方法は? そして意義は?
そんな自分のなけなしの理性を握りつぶしても、指の間から漏れ出るそれは私を解放してくれなくて、そしてそのことを私

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存在を薄めることで

存在を薄めることで

存在を薄めることで、誰の邪魔にもならないように好きに生きたいと考えたりしても、結局どこにもいけない自分を選択していることは変わりなくて。

息が苦しい。

お決まりのさみしさがある。魂がおひとりだからやむを得ないね。そんなことを考え、アンドロギュノスを夢想しながら歩いている。

世界に何も刻みつけられないまま終わるのは、嫌だ。

ガスの膜のような睡魔に触れられて、何か新しい扉を開くわけでなく、ひた

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黄昏に棲む

黄昏に棲む

手放したものたちが棲む黄昏が爪立てるから胸が苦しい。明くる日も、その明くる日も過去からは逃げることができない。

忘れてしまえば、楽になれるのか。
解き放たれるときが、いつか来るのか。

雲の羽毛に覆われた太陽は、私の苦痛を覗こうともせずに、微睡みの中、死に惹かれている。
彼ならば生まれては死に、また生まれては死ぬ私のことを滑稽に思うだろうか。

結局のところ星屑にすぎない。いずれ彼も同じ運命を辿

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崩壊

崩壊

緩慢な崩壊の音を聴いている。それらは小川のささやきのように、いつも私達の鼓膜をか細く震わせている。心地よい記憶が喪失していくような、柔らかなうねりの中で、さやさやと、さやさやさやとそよいでいるのだ。

空は、終わったね。
海も、終わったよ。
大地は?

ささやきには誰も答えないでいる。鈍色の太陽が優しく包む。風が遠ざかりながら、救いの名前を置き去りにしてゆく。

崩壊の音はいずれそれだけで世界を覆

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刻まれて

刻まれて

刻まれた影の深さに戦いて安定剤を放り込むだけ。崩れ去るものたちのため何故ここで無駄な努力を続けているか。救われる者と救われない者をコインを投げて神が決めても、生真面目に生きようとする救われぬ者はいつまで足掻くのだろう。決められた因果の波に乗せられてたゆたうだけの人生ならば、何もかも無秩序である骰子と大して変わることはないのだ。密やかに忍びよるからあの窓のアオスジアゲハは全て知ってる。もういいよ。吐

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指先

指先

指先が冷たいゆえに、ひとりでに歯車砕け白く輝き、散らばった破片を集め糊をつけ元の姿にしようとしても、つけるたびこぼれてしまう砂に似た、機械は自分自身の鏡。きらきらと光るだけなら、そのままにしといた方が綺麗なのにね。

歯車は、歯車として一生を終えるのだから仕方ないよね。こわばった微笑み残しいつまでも明けぬ闇夜に砕け散りたい。

隔壁

隔壁

この壁で君と私を隔てよう。
眠るときには外してもいい。
そう言った君の横顔、逆光で見えてなかった。笑っていたのか?

いつまでも届かぬような手紙待ち、ここで待ちつづけてもいいのか。待ちつづけ、決して届かぬ封筒の、幻影を見て生きていくのか。判断は脳細胞がすることで、心臓などは加味していない。

カーテンの細い隙間に降り注ぐ西日のような恋だったのか。冷え切ったコーヒー含み、苦味などありふれすぎて分から

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異界

異界

どんなところにも異界への窓は開かれていて、周波数が合う人間がそれに気づくのを待ち構えている。さびしさや虚しさ、気づかなければ幸せな諸々の感情。それらが軋み、人間の閾値を超えたとき、彼らはその窓から身を投げるのだ。

窓にも異界にもなんの責任はない。それらは単にそこにあるものとして存在しているのだから。その選択肢に気づき、選んでしまうのは限られた人間だ。その血肉を糧として今日も窓は澄み切っている。

遠い街

遠い街

遠い渚のある街でした。彼らはいのちを食べていました。魂を売り肉体を買い、僅かな時間を息していました。
渚はいつもそよいでいました。たぷたぷ笑い、くぷりと眠り、砂浜を撫でて過ごしていました。
何にも意味はないことでした。空から闇が降り注ぎました。喇叭が響き、星まで震え、全ての者は並んでいました。
食べたいのちと生かしたいのち、さいころ一つで数えられても、彼らは何にも言いません。諦めすらも感じられずに

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闇に向かって

闇に向かって

死ぬために走り続ける肉体を持て余してて何か生まなきゃ。そんなこと考えてても神様の確率論は誰も知らない。どこにでも行くなら行ける鎖など自分でつけるものにすぎない。最果てを見たらその地は最果てで無くなるゆえに見には行かない。辿り着くための土地などまやかしの運命論でしかないものを。生まれ来るまでに46億年経ってしまって何ができるの。これからの将来未来誰だって分からないから知らなくていい。