自立とは依存先を増やすことである
東京大学先端科学技術研究センター准教授、医師で科学者の熊谷普一郎さんの言葉です。
生後間もなく脳性麻痺により手足が不自由となりながら、小学校から高校まで普通学校へ通い、東京大学に進学。医学部卒業後、小児科医として10年間病院に勤務。現在は障害と社会の関係について研究するとともに、月2回ほど診療現場に出ている熊谷さんは、当事者研究の第一人者とも言える方です。
そんな熊谷さんは、障害を抱えながらも大学時代に一人暮らしを始めます。
それまでは依存先は母親一人で、お母さまも熊谷さんが一人暮らしを始める際には大変心配されたそうです。
「社会は障碍者に冷たい」
そうお母さまは思っていたそうです。
しかし、いざ一人暮らしを始めてみると、大学の友人や時には見知らぬ人までも介助してくれるような経験を数多くした。
そして熊谷さんは「社会はそこまで冷たくないこと」を学び、自立して生きていける自信を得たと言います。
自立。
ここ3年ほどの僕の思考のテーマの1つでもありました。
僕もどこかで「自立とは依存しないこと」と思っていました。
しかし、この熊谷さんの話を読んで、そうではないことに気づかされました。
もとより人間と言う生き物は、依存せずには生きていけない。
人にだって物にだって、自然にも依存しないと生きていけない。
問題なのは誰か一人だけに依存すること。或いは依存先が少ないこと。
誰にも依存せずに生きていくことは絶対に不可能であって、
それは果たして自立と言えるのでしょうか。
それは「孤立」ではないでしょうか。
依存せずに生きていくのではなく、
より多くの依存先に自分の体積を少しずつ配って委ねていく。
その関係性を数多く作って保つこと。
それが本当の自立ではないでしょうか。
誰かが、例えば親が、例えば恋人が、例えば夫婦のどちらかが。
特定の依存先がいなくなってしまうと生きていけなくなる。
そういった事態を避けるためには、
もっといろんな人に依存すること。
もっと色んな人に頼ること。
もっと色んな人に迷惑をかけること。
そしてそれに罪悪感を感じない世界にすること。
また僕の、僕たちのやるべきことが増えたような気がします。
そしてその指針が明確に見えてきたような気がします。
熊谷さん、ありがとうございます。
小野トロ
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