「やりたいことがない」若者を減らすには?
小中学生、高校生、大学生年代など、広い意味での「子ども」に関わる仕事をしていて思うことがあります。
全員ではありませんが、一様に「やりたいことがない」と言います。
僕は生きる上で、「やりたいこと」は必須ではないと思っています。
現在の社会全体で若者にやりたいことはないのか、と尋ねる
「やりたいことハラスメント」には僕もうんざりします。
そんな僕はやりたいことだらけで困っているのですが。
ともかく考え不足の僕たち大人はもっと考えないといけない。
子どもに「やりたいことは?」と聞く前に、
なぜ子どもたちにはやりたいことが無いのかを。
答えは簡単です。
幼い頃から「自分のやりたいことをやるという行為」を制限されて育つからです。
私は子どもにやりたいことは何でもやらせてきたつもりだ。
そう断言する親も多いでしょう。
しかし、こうも言っていませんか?
「好きなことばかりはしてはいけないよ」
「嫌いなこともしないといけないよ」と。
とにかく「ウチは好きなようにさせてきたつもり」でも、
どこかで子どもの興味や関心に蓋をしてきたことがあるのでは無いかと思います。
それなのに夢を持て、やりたいことを見つけろ、と言うのですから、
子どもたちからしたら「どの口が言う?」という心境だと思います。
「やりたいことがない」は、まだ小中学生の段階では直接の進路やその時の生活に影響を及ぼすようなものにはなり得ません。
しかし、実際に就職して働くということがリアルになってくる高校生や大学生なんかは特に、
この「やりたいことがない」は、厳密に言うと
「やりたいことが全くない」か、
「やりたいことはあるがそれでは稼げない」或いは
「やりたいことは既存の職業リストに当てはまらない」
などに分類することができると思います。
3つ目なんかは、新しい職業や業界を開拓する苦労を考えるとそこまでしてやりたくもない、という人もいるでしょう。
幼い頃には、きっと「やりたいこと」なんて腐るほどあるでしょう。
それが成長するにつれて少なく、そしてゼロになって行くのはなぜでしょうか。
それは、先ほど言ったような「興味関心への蓋」だけでなく、
成長に伴って、子どもの中の「やりたいこと」への理解が少しずつ変わって行くからでは無いでしょうか。
幼い頃に周囲の人から「やりたいことは?」とか「大きくなったら何になりたい?」
と聞かれているうちは、
「サッカー選手」「野球選手」「アイドル」「お花屋さん」
などと言っていれば、
「かわいいね〜」「すごいね〜」と言ってチヤホヤされたことでしょう。
そんな子供騙しに嫌気がさしている子どもも中にはいるでしょうが、
「やりたいこと」への認識はそのままストレートに「やりたいこと」のままでしょう。
それから小学校高学年や中学生、高校生になっていくと、周囲の大人の空気感から、
「どうやらやりたいことと言うのは稼げて食いっぱぐれない、という注釈がつくらしい」
と学ぶのです。
大人たちの「やりたいことハラスメント」に嫌気が差し始めるのもこの辺りからではないでしょうか。
僕はこの「やりたいことや夢=職業や地位」という考え方、そしてそれを当たり前として植え付ける教育がまずい、おかしいと思っています。
「やりたいことがない」を考えていく上でのヒントはここにあると思います。
ここで、1つの曲の歌詞を紹介します。
Bank Band with Salyuの「MESSAGE-メッセージ-」という曲に、こんな一節があります。
教室の隅 貼り出された 子どもの頃の夢には
職業の種類だけが 並んでた
でも本当は自分を ちゃんと愛せる自分に なることが
何よりも 大事だった
「やりたいこと」や「夢」というものが、「職業」「仕事」「お金」という言葉に結びつくと知った辺りから、
子どもたちの心は離れていくのでは無いでしょうか。
と同時に、なぜ「やりたいこと」や「夢」が職業と結びついている必要があるのでしょうか。
答えはきっと、学歴社会や資本主義ということにはなりそうですが、
それは今置いておいて、
僕からはこれから子どもたちには
「将来の夢は?」「大人になったら何になりたい?」「やりたいことは?」
と聞くのではなく
「どんな人になりたい?」
と聞くことを提案します。
もちろん、いきなりそんなことを聞かれても、子どもは困るでしょう。
しかし、時間をかけてゆっくりと、
「職業から人生を考えていく」のではなく、
「なりたい自分像」から生き方、仕事を考えていく。
その順番に変えていくことで、
子どもは、そしていつかの大人は、変わっていくのでは無いでしょうか。
「やりたいことがない」子どもと、
「やりたいこと」を探すのではなく、
順番を逆にして、
「どんな人になりたいか」「どんなふうに生きていきたいか」から考えていく。
そうすれば、「やりたいこと」がなくて苦しい思いをする、罪悪感を抱く、無力感や自己否定に陥る人は減っていくのでは無いでしょうか。
「私はこんな生き方をしたいから、この職業に就いています」と言える世の中の方が、
自分に嘘をつかずに生きていけるのでは無いでしょうか。
なぜなら、その考え方においては、
「お金が欲しいから」という答えも別に「アウト」な答えにはなりませんし、
「青臭い答え」という答えも無くなります。
その人が幼い頃から考えてきた「どう生きたいか」において本当に「お金があればそれでいい」のならば、それは正解でしか無いのです。
今回の「やりたいことがない」若者を減らすには?というタイトルの答えとしては、
①「やりたいこと=職業」という考えを辞める
②「何(職業)になりたいか」ではなく「どんな人になりたいか」を考える
ということになります。
この「やりたいこと」問題に関しては、私事ながら僕の卒論のテーマでもありましたし、今なお苦しんでいる人が多いテーマなのではと思うので、
これからも引き続き考えていきます。
それではまた。
小野トロ
以前の記事へはコチラからどうぞ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?