マガジンのカバー画像

サブカル大蔵経 異国編

262
運営しているクリエイター

#北海道

サブカル大蔵経942J・ウォーリー・ヒギンズ『総天然色 ヒギンズさんの北海道鉄道旅』(北海道新聞社)

サブカル大蔵経942J・ウォーリー・ヒギンズ『総天然色 ヒギンズさんの北海道鉄道旅』(北海道新聞社)

50年前、今は亡き旭川電気軌道に乗るためだけに旭川に来た生粋のマニアがいた。

米国の軍人、ヒギンスさん。彼のおかげで、貴重な資料が50年後の私たちに届けられました。

本書は、貴重なカラーフィルムを持っているただの金持ちが道楽で全道を観光したスナップの写真集ではありませんでした。

一枚一枚に、この風景を残しておこう!という意図が感じられる写真ばかりでした。

鉄道が消えていく運命ということを知

もっとみる
サブカル大蔵経862渡辺京二『黒船前夜』(洋泉社新書)

サブカル大蔵経862渡辺京二『黒船前夜』(洋泉社新書)

〈ロシア・アイヌ・日本の三国志〉

渡辺京二の澄んだ視点と粘り強い探索。

剥がされていく常識のレッテル。

アイヌはすでに11世紀ごろからサハリンへ進出し始めていたらしい。元がサハリンに兵を送ってアイヌと戦ったのは、元に服属していたギリヤークをアイヌが圧迫したからである。/アイヌがサハリンでギリヤークと争いを起こしたのは鷹や鷲の捕獲をめぐってであったらしい。p.180

「アイヌに攻め込まれて困

もっとみる
サブカル大蔵経31 中野美代子著『北方論』(新時代社)

サブカル大蔵経31 中野美代子著『北方論』(新時代社)

 中国学の泰斗、中野美代子先生の北海道に関しての文をまとめた50年前の本を読みました。

 北海道は、日本の辺境であり、外地であり、サブという感覚。辺境だからこそ内地を見てきたという認識。しかし、それは幻想で、中央とズブズブだったのでは…。

 札幌に全てが集中してきた現在、コロナで図らずも、札幌圏とそれ以外という色分けができつつある今、蘇る貴重な直言。また、開発・観光・経済という免罪符が全てを破

もっとみる
サブカル大蔵経95井上美香『北海道歴史ワンダーランド』(言視舎)

サブカル大蔵経95井上美香『北海道歴史ワンダーランド』(言視舎)

 国際地図で最後まで確定されなかった島、北海道。しかし今は日本の普通の地。住んでいる私も特段北海道に住んでいることを意識していない。本書はさまざまな角度から北海道人の常識に穴をあける。穴から何が見えるのか。懐かしい鷲田小弥太教授の弟子の著作。

あるときは地球儀の視野、あるときは日本。内地からの視点で。p.6

 地図もひっくり返して見ると、北海道は日本よりロシアや中国大陸に近い雰囲気。

松前藩

もっとみる
サブカル大蔵経163 天理教北海道教務支庁編『新・樺太伝道物語』(養徳社)

サブカル大蔵経163 天理教北海道教務支庁編『新・樺太伝道物語』(養徳社)

 北海道の先の日本、樺太を、天理教の記録資料で知る。なぜ天理教だけが資料を出版できたのか。なぜ既存宗派はないのか。樺太を植民化するため、国家の先兵として宗派が入植する。これは、北海道においても同じだった。天理教目線が遠隔地、北海道と樺太を繋ぐ。日本の写し絵、北海道と樺太。

日露戦争前に豊原地方に住んでいた一万人のロシア人は数十戸に減る。p.16

 住む人達の縁。樺太は日本人が入る前はアイヌやギ

もっとみる
サブカル大蔵経154海部陽介『日本人はどこから来たのか?』(文藝春秋)

サブカル大蔵経154海部陽介『日本人はどこから来たのか?』(文藝春秋)

 島国という概念を再考させる書籍。

 大海を小舟で泳ぎ切れるのか。その執念の記録でもあり、どこまでが学術的でどこからが冒険譚なのかあやふやな感じもしました。

 現在は文春文庫に入っています。

与那国島。今は日本列島の端といわれるが、当時この海峡は日本列島への入り口の1つだった。やってきたのは誰だったのか?明確に言えるのはアフリカからユーラシア大陸の東端までたどり着いたホモサピエンスの集団、つ

もっとみる
サブカル大蔵経145砂澤陣『北海道が危ない!』(育鵬社)

サブカル大蔵経145砂澤陣『北海道が危ない!』(育鵬社)

 広大な北海道のアイヌをひとくくりにはできない。和人とアイヌを分けない同じ土俵で生きる唯我独尊の上川アイヌの自己性が咆哮する。

 本書の内容は著者の思い込みなのかは、わかりません。しかし、みんな思い込みで生きています。いろんな考えがあっていいと思う。いや、そうあってほしい。それは、私たちが自分で考えていくきっかけにもなると思います。

 特に官邸肝いりの白老の共生地域施設ウポポイができた現在、そ

もっとみる
サブカル大蔵経65『松浦武四郎とアイヌの大地』(ダイアプレス)

サブカル大蔵経65『松浦武四郎とアイヌの大地』(ダイアプレス)

 執筆者・鈴木義昭の好仕事。乱立するアイヌムック本の中でも、偏った立場にならない稀に見るバランス感覚で紙面を編集。武四郎を通してアイヌも旭川もフューチャー。瀬川、本田両先生らのコメントも秀逸。武四郎の生涯、20年間アイヌ、その後死ぬまでガラクタ博物マンも、アウトサイダーアートマン的で非常に現代的。

武四郎は22歳から24歳まで平戸で臨済宗の寺の僧侶を務めていた。仏教への関心から、唐・天竺まで渡り

もっとみる
サブカル大蔵経2 ゴロヴニン著/井上満訳『日本幽囚記』(上中下巻 岩波文庫)

サブカル大蔵経2 ゴロヴニン著/井上満訳『日本幽囚記』(上中下巻 岩波文庫)

『日本幽囚記』(上中下巻 岩波文庫)を今日読了しました。ペリー来航以前の日本とロシアの出会い系物語でした。手堅い報告書を装いつつ、決死のサバイバル逃避行、仲間の裏切りやドラマチックな再会シーンもあり、欧州で子供たちも読んだベストセラーになったというのも首肯します。また、異国側として登場する日本側の役者も、松前奉行荒尾但馬守や高田屋嘉兵衛などは、今の日本人にこういう胆力のある人いるのか⁈と隔世の感を

もっとみる