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水木三甫の心葉♡♧詩集

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心葉♡♧詩集では、心に感じたままを言葉に置き換えて表現した詩を掲載します。 まだまだ表現力不足で、うまく伝えられない未熟な僕ですが、進化していく姿を追いかけていただき、感想などを…
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記事一覧

嘘に消える《詩》 ー夢野久作『少女地獄』を読んでー

嘘に消える《詩》 ー夢野久作『少女地獄』を読んでー

嘘が降る
劣等感の上に嘘が落ちる
虚栄心の上に嘘が積もる
嫌な部分が嘘に埋まっていく
嘘が少女を守ってくれる
嘘が段々と重なっていく
嘘が少女の肩まで積もる
それでも嘘は降り止まない
やがて少女は嘘の中に消えていく
真実を告げる口はもう地上にはない
少女はもはや息もしていない

春を待つ《詩》

春を待つ《詩》

冬がギザギザに過ぎていく
風が肌に張りつく
へばりついた風を剥がすように
僕は足を早める
風に引きずられた雲が僕を追いかける
肌の冷たさと体の熱さとの温度差は
体の中にも風を吹かせる
僕はギザギザになった道を
ギザギザに歩く
春がギザギザな心を滑らかにしてくれるまで

迷子《詩》

迷子《詩》

僕は一人で待っている
僕は誰かを待っている
僕は何かを待っている
小さい頃、迷子になったら動き回らずに、その場でじっと待ってなさい
母さんによく言われたのを思い出す
母さんはもういないけど
僕は一人で待っている
僕は誰かを待っている
僕は何かを待っている

強風《詩》

強風《詩》

風が急いでいる
季節にしがみつくように
風が急いでいる
季節の歩幅に負けないように
そして私は風に急かされている
遠い景色を見失わぬように
背中を押す風が強くなる

運命論 ―自業自得の地獄―《詩》

運命論 ―自業自得の地獄―《詩》

天国への階段を慎重に登る
階段には手すりがなくて
落ちれば地獄が待っている
下をのぞくと暗黒の炎が
風に靡きながら大きく揺れている
天国へ行くべき人々は
すでに天国の門前に集まっている
地獄の焔が足元まで迫り
僕は階段を慌てて登る
運命に逆らうのが僕の運命だった
だから僕は階段を踏み外し
地獄に落ちるだろう
それが運命から逃げ出した僕の罪だから
自業自得の地獄が口を開けて待っている

ないない節《詩》

ないない節《詩》

夢を見るよな柄じゃない
今生きるしか道がない
だけど私にゃわからない
何がしたいかわからない
何をすべきかわからない
だから1日何もしない
明日もなけりゃ未来もない
過去はあるけど見たくない
今日も1日何もしない
ないない節は終わらない

生まれ変わり《詩》

生まれ変わり《詩》

眠りの国が呼んでいる
こっちにおいでと呼んでいる
そっちは苦しいばかりでしょ
だからこっちにおいでよと
眠りの姫が呼んでいる

夢の国には姫がいて
僕は姫に恋をする
でも姫には彼がいて
僕を苦しくさせるから
僕は泣きながら目を覚ます

僕の国には苦しみも多い
僕の国には悲しみも多い
でも眠りの国だって苦しみは多いし
夢の国だって悲しみは多い
だから僕は目を覚ます

僕の国で彼女ができて
僕の国に喜

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青になりたい《詩》

青になりたい《詩》

歩きながら夢を見る。
空の青と水面の青のあいだで僕は浮かんでいる。まるでそこだけが僕の居場所であるかのように。
三々波が青を揺らし、緩い風が青を流す。
僕は急いで橋を渡る。
ただ青になりたくて。

オリオン・ザ・ロック《詩》

オリオン・ザ・ロック《詩》

真冬のビルの屋上で
ダウンジャケットと手袋を身に着けて
ウイスキーのボトルを開ける
グラスには宇宙みたいに球体な氷を入れて
指2本分だけ氷が琥珀色に染まり
宇宙を回すようにグラスを回す
冷たい音が空に響く
酒を一口含んで空を見上げる
夜空にはきれいなオリオン座

スズメの合唱団《詩》

千鳥ヶ淵のベンチに腰かけたら
スズメがたくさん寄ってきた
みんながいっせいに鳴き出した
まるで僕に伝えたいことがあるみたいに
隣の声に負けないようにスズメたちは自己主張を繰り返す
柵が一杯になると近くの枝にもスズメは鈴なりになった
僕と友だちになりたいの?
ただ日向ぼっこしてるだけなの?
何を言ってるの?
スズメの合唱団の歌声はなかなかやまない
最後まで聴いてあげたかったけど
寒くなったから僕は立

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青い引力《詩》

青い引力《詩》

青には引力がある。
雲が途切れ途切れになると、青が空いっぱいに広がる。そして地上にあるものすべてを引き込もうとする。
橋の上は特に青に近い。
僕は青を見つめ、青に体を預ける。
両手を広げ、両足でジャンプする。
「引力には逆らえないよ」
僕が大きな声で言うと、まわりのみんなも手を広げ始める。
あっという間に空は人でいっぱいになる。
「何をしているんだい? さあ、君も早く手を広げて」
「青に身を任せて

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思考の旅《詩》

思考の旅《詩》

形や意味のない世界を探すのに
時間が必要になるなんておかしいから
真冬に黄金の薔薇を見つけるようなアドベンチャーはしたくない
壁のない地平線だけの世界にだって形を見つけたがるのが人間ならば
僕はヒトデナシの世界を目指していく
島も見えない水平線だけの世界にだって意味を見つけたがるのが人間ならば
僕は境い目のない世界を歩いていく
地平線と水平線が垂直に交わる一点こそが旅のゴールなのだ
そこには孤独す

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ソーシャルディスタンス《詩》

ソーシャルディスタンス《詩》

太陽の日差しが宇宙の冷凍まで連れてきて

地球の表面を包みこんでしまう。

集団にならなければ生きられなかった人類は束縛から逃れてそれぞれが氷の立像になる。

これ以上近づくと怪我するよと、凍った指先が訴える。

吹雪に覆われて、姿を消した個象の群れは、やがて春を迎えて森林に変わってゆく。

新しい朝(詩)

新しい朝(詩)

新しい空
新しい風
新しい雲
新しい一年の新しい朝

そして、昨日よりたった一日だけ新しい僕