- 運営しているクリエイター
記事一覧
時間をあやつる女の物語
私は坂倉なぎさ、高校二年生で、野球部のマネージャーをしている。
野球部のマネージャーになったのは、大好きな佐藤光太郎君がエースで四番バッターだったから。
でも自分から話しかけることはできずに、いつもベンチから光太郎君の活躍する姿を応援するだけだった。
ある夕方、ユニフォームの洗濯をしているときに、光太郎君が私の側にやってきて、「いつもありがとう」と言ってくれた。私は顔を赤くしくてうつむいてしまっ
時間に追われる男の物語
「君、悪いけど明日の朝一番の会議資料を作ってくれないか。担当者別の顧客ランクを決めなければいけないんだ」
「わかりました」
男はそう返事をして、腕時計に目をやった。
時計の針は4時半を指している。会議資料を作るには最低でも4時間以上はかかる。
「今日も残業か。でも、久しぶりに終電前には帰れそうだ」
男は誰にも聞こえない声でつぶやいた。
男のスケジュール帳は、真っ黒に塗りつぶしてあるのではないかと
時間を切り貼りする男の物語
年甲斐もなく、大変恥ずかしいのですが、私の恋物語を聞いてください。
私はある会社の営業課長をしていました。当時の年齢は四十八歳で、まだ独身でした。別に結婚しない主義というわけではありません。ただ、若い頃からもてなかっただけの話です。
二十六歳の女性が、中途採用で私の部下として配属になったのが始まりでした。明るくてかわいらしい子だな、というのが第一印象だったのですが、一緒に仕事をしたり、会社帰り
時間を暖める女の物語
私は三十六歳で結婚しました。相手は会社に出入りしていた取引先の営業担当者で、私より二つ年上です。彼が子供を欲しがっていたので、付き合い始めて半年で結婚しました。しかし、結婚して二年が過ぎても、なかなか子供に恵まれませんでした。医者にも相談したのですが、夫婦ともに問題はないようなのです。子作りにご利益のある神社にも参拝しました。やはり駄目でした。もうすぐ四十歳になります。残された時間は少ししかありま
もっとみる時間を貯める男の物語
<これも『時間にまつわる物語』の番外編です。実経験から作りました。>
僕が時間を貯めようと思ったのは、まだ僕が二十歳を超えたばかりの、ある出来事がきっかけだった。
ある朝、僕は通勤のため最寄り駅まで歩いていた。すると、身長が2メートルはあるかという大男が僕を抜き去っていった。
よし、同じペースで歩いてみよう。気まぐれにそう思った。右足、左足と、大男と同じリズムを刻みながら、僕は歩いた。イチ、
時間を繰り返す女の物語
<『時間にまつわる物語』(『「本当の自分」殺人事件』の中の短編小説)の番外編です。もし気に入ってもらえたら、是非『時間にまつわる物語』も読んでみてください。よろしくお願いします。>
あの日に戻りたい。
誰もがそんなことを思ったことがあるでしょう。
あの日に戻って初恋の人に自分の気持ちを伝えたいだとか、あの日に戻って喧嘩別れした友人に謝りたいだとか、あるいはあの日を境に自分の人生がうまくいかなく