MINAMI

観た映画について書きます。 残された人生で見られる作品は限られています。だから、ひとつひとつの作品と自分がどう交わったのかについて、真摯に向き合い、その格闘記録を残したいと思っています。 ときどき自分で作った作品もアップします。ぜひご感想などいただければ嬉しいです。

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  • 創作シナリオ集

    ラジオドラマなど、私が創作したシナリオを集めました。 せひとも、ご感想などいただけますと、うれしい限りです。

  • 映画レビュー集【洋画】

    アメリカ、ヨーロッパなどの映画作品についてかいたものを集めました。

  • 映画レビュー集【日本映画】

    日本映画の作品について書いたものを集めました。

  • 映画レビュー集【超おススメ映画】

    これはぜひ見てほしいと思う映画について書いた文章を集めました。

  • 映画レビュー集【アジア映画】

    韓国、中国、台湾など、アジアの映画作品について書いたものを集めました。

最近の記事

【創作シナリオ】短編ラジオドラマ『彼女は愛にあふれすぎている』

 人との距離感って難しいなとつくづく感じます。一人一人それぞれ、思いの強さやベクトルは違います。だから、自分の感覚は相手と合ってないのではと不安になります。いや、別の人間だから、合わなくて当然なのです。  それでも、人は人とのつながりを求めてしまう生き物。そして、食い違って、もがき苦しむ……そんな悩みに救いがあればと思って書きました。  某シナリオコンクールに応募しましたが、箸にも棒にもかからずでした…でも、よろしければ、ぜひ読んでみてくださいませ。 登場人物大島弘美(20

    • 【映画レビュー】『パラダイスの夕暮れ』:無口な曲者たちが輝く大人の映画

       出演者、配色、セリフの掛け合いなど、何もかもが好きと、マイベストに推された映画ファンの方がいらっしゃって、これはぜひ観なくてはと、久々にカウリスマキ作品を観た。  個性的な登場人物たちの世界に引き込まれる、カウリスマキ・ワールド全開の、とても素敵な作品だった… 曲者で笑わないのに、可愛くて温かい  出てくる人たちはみんな曲者だ。でも可愛い。  誰も笑わない。でも温かい。  いろんなギャップが素敵で魅力的な映画だ。  ドラマチックなストーリーがあるわけではない。  ごみ収

      • 【映画レビュー】『石がある』:何を見せられているのか? どこに連れていかれるのか?

         予告編では、若い女性がおじさんと一緒に石を探しながら川をさかのぼっていく話だと紹介されていた。それってどういうこと?と思ったが、その後、知人に強く勧められて、観ることにした。確かに予告編のとおりのストーリーでもあったが、作品自体は思っていたのとは全然違い、映画観を大きく揺るがすすごいものだった… 何を見せられているのかと…  映画が始まり、小川あん演じる主人公の女性が、河原で子供のサッカーになぜか参加してボールをやりとりしたり、例のおじさんと一緒に河原の砂に体重をかけて

        • 【映画レビュー】『マンチェスター・バイ・ザ・シー』:赦され、救われ、再生できるのか

           ものすごく静かで、揺れ動きが少なく、それでいて、ものすごく重くて根源的な苦しみをテーマにしているからか、感想やレビューを書くのがとても難しくて、なかなか筆が進まなかった。でも、そういう作品こそ、自分の目で見る価値のある、すばらしい映画なのかもしれないなと思った。  この作品も、マイベストワン作品にあげられた映画ファンの方が二人もいらっしゃって、それをきっかけに観ることができた。 なんの希望もなくただ生き延びている  主人公のリーは、便利屋として働いている男性である。画面

        • 【創作シナリオ】短編ラジオドラマ『彼女は愛にあふれすぎている』

        • 【映画レビュー】『パラダイスの夕暮れ』:無口な曲者たちが輝く大人の映画

        • 【映画レビュー】『石がある』:何を見せられているのか? どこに連れていかれるのか?

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          【映画レビュー】『グリーンブック』:頑な心が少しずつ少しずつ解けていく

           観ようかなと何度も思いながら、後回しになっていた。  なんとなく、いい話すぎて、物足りないのではないかと勝手に思い込んでいて、観ようの一歩手前でいつも止まっていた気がする。  しかし、マイベストワン作品にあげられた映画ファンの方が二人もいらっしゃって、それをきっかけに観ることにした。そして、観てよかったと思った… 差別する・されるといった単純な構図ではない  非人間的なひどい差別を受けている黒人。アメリカではマイノリティの立場にいるイタリア移民。それぞれ立場や程度は違う

          【映画レビュー】『グリーンブック』:頑な心が少しずつ少しずつ解けていく

          遺言ではないけれど

          このnoteには暗いことや泣き言は書かないことに決めたのですが、自分の死について書くことにしました。これは決して後ろ向きな気持ちではなく、前を向くために必要なものだと思いました。 生きる意味  正直なところ、生きる意味を見いだせないまま、ずるずると生き延びています。ようやく最近、「このまま終わってたまるか」という気持ちが少し湧いてきて、それをスローガンに頑張ろうと思い始めています。 老いていく  ただ、しみじみ実感しているのは、年を取ると思うように体が動かなくなり、い

          遺言ではないけれど

          【映画レビュー】『あの夏、いちばん静かな海。』:静かな海からいつまでも届き続ける波の音と二人の姿

           主人公の青年・茂は耳が聞こえず、話すこともできない。ごみ収集の仕事をしているが、ふとしたことからサーフィンに興味を持ち、のめり込んでいく。  茂の彼女も、耳が聞こえず話すこともできない(真の主役は彼女だと思う)。  二人がどんな関係なのか、どういう経緯で一緒にいるのか、どんなふうに生活しているのか、などといったことは描かれない。  舞台となる街も、海沿いという以外には特徴のない没個性の町だ。おそらくあえて何も語るべきことがない設定になっている。  説明シーンはほとんどなく、

          【映画レビュー】『あの夏、いちばん静かな海。』:静かな海からいつまでも届き続ける波の音と二人の姿

          【映画レビュー】『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』:二人で街を歩くことは最高に楽しい

           気の合う人と散歩をするのは、本当に素敵なこと。  それが、友人でも、恋人でも、家族でもいい。  話をしたいなと思う人、話を聞きたいなと思う人と肩を並べて、気を遣わずに散歩している時間が、人生で一番幸せな時間かもしれない。  この映画を観て改めてそう思った… 朝までしかいられない…というロマンチックな舞台  同じ列車に乗ってたまたま出会った、アメリカの青年ジェシーと、フランス人女性のセリーヌ。  二人は、客席で会話を交わすうちに、意気投合し、ウィーンで途中下車して一緒に時

          【映画レビュー】『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』:二人で街を歩くことは最高に楽しい

          【映画レビュー】『リリィ・シュシュのすべて』:一筋の希望の光さえ見えない陰鬱な絶望の世界

           岩井俊二監督の作品では「ラブレター」がとても好きだ。悲しい話ではあるけれど、見た後に心がじわーっと温かくなる。  それに対して、この映画はどこまでも陰鬱にさせられる。まさに対極にある。  中学校での「いじめ」を題材としているが、そんな一言ではまったく片づけられない。人間の陰の部分が画面を支配する。  その暗闇の中には美しいものも存在してはいる。しかし、希望の光は最初から最後まで一筋さえも見えなかった。  こんなにも正反対の映画を、一人の監督が生み出し、しかもそれが見事に岩井

          【映画レビュー】『リリィ・シュシュのすべて』:一筋の希望の光さえ見えない陰鬱な絶望の世界

          【映画レビュー】『生きる』:もう少ししか生きられないと知っても生き方を変えられるだろうか

           主人公は、がんになって自分の余命が長くないと知った、市役所勤めの公務員。彼は、それをきっかけに、事なかれで生きてきた自分の人生を振り返り、残り短い人生を全力を尽くして悔いのないように生きることにする……というストーリーは多くの方がご存じだろう。  自分が主人公と近い年になってこの映画を改めて観てみると、若いときに観たときには気がつかなかったことがいろいろあった。 渡辺の人生は回想シーンで語られていた  最初に驚いたのは、映画の構成だ。  自分の死が遠くないことを知った市

          【映画レビュー】『生きる』:もう少ししか生きられないと知っても生き方を変えられるだろうか

          【映画レビュー】『街の上で』:人との距離感の難しさが風景に溶け込んでふわふわ揺れる

           下北沢の街、いいなあ、住んでみたいなあ、と思った。  と同時に、人との人との距離感って難しいなとも思った。近づきすぎるとだめになるし、かといって遠すぎてもつまらないし……  この映画では、人と人との距離感の謎が、街の風景に溶け込んでいるようだ。ゆったり流れるけど、その中にえぐりだされるような痛みもあった… 「こういう距離感のまま付き合っていくことってできへんのかな」  主人公の青は、古着屋で働いている。お客も(おそらく)多くなく、いつも本を読んでいる。  その姿に目をつ

          【映画レビュー】『街の上で』:人との距離感の難しさが風景に溶け込んでふわふわ揺れる

          【映画レビュー】『夜明けのすべて』:職場での生活をきちんと描いた稀有な作品

           先にこの映画を観た人から、「職場や仕事をきちんと描いているところがいい」という話を聞いた。  もともと見に行きたいと思っていたのだが、そんな映画だったっけ?と思った。  でも、その話を聞いて、ますます興味を引かれて…… 職場は生活の中で大きな位置を占める  確かに、そのとおりだと思った。職場はこの映画の鍵となっている。  仕事は生活の大きな部分を占める。友人とは月に1回しか会わなくても、職場の同僚とは毎日会って、会話も交わす。ときには同じ業務・目標に向かって一緒に力を合

          【映画レビュー】『夜明けのすべて』:職場での生活をきちんと描いた稀有な作品

          【映画レビュー】『ブルーバレンタイン』:「計算されつくした」映画が見せる「計算不能」な愛の苦しみ

          「あんなに愛し合ったのに…」  どこかで聞いたようなセリフだが、この言葉が訴えかけることは、人間が永遠に解決できない問題であるような気がする。  この映画は、ある夫婦の今の日常を映し出すところから始まる。  そして、その男女が「最初に出会ってから今にいたるドラマ」と、「今から破局に向かっていくドラマ」が並行して映し出される。  見ている者は、男女が熱狂的な恋に落ちていく様子と、その二人が通じ合わなくなっていく様子を同時に見せられるのである。  ものすごく計算しつくされた、ある

          【映画レビュー】『ブルーバレンタイン』:「計算されつくした」映画が見せる「計算不能」な愛の苦しみ

          【映画レビュー】『永い言い訳』:何重にも深い人間の愚かさの闇

           「自分のことを大事にしてくれる人を手離してはいけない。失うときは一瞬だから」   妻が事故で死んだときに別の女性と浮気していた主人公の男性が、時間を経て語った悔恨の言葉である。  本当に彼の言うとおりだと思った。だから、今自分のことを思ってくれる人のことをずっと大切にしよう、と私も思った。  いや、でも…… 思ってくれる人を大事にできない  主人公の幸夫が映画の最後のほうで語った「自分のことを大事に思ってくれる人のことを、手放してはいけないと」という言葉。これは、幸夫が

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          【映画レビュー】『水深ゼロメートルから』:露わな二本の脚が投げかけてくるもの

           チラシやポスターを観ると、女子高生たちの二本の脚に目が行く。形がいいとか、すらりとしているとか、そういう美的対象としての脚ではない。生々しくむき出しになった、加工されていない生の肉体としての脚である。  自分がそこにエロスを感じていない自信はない。それは、最初に自白しておく。どこまでがエロスでどこからそうでないかを線引きするのは難しい。  ただ、しかし、この映画は、そんな言い訳など吹き飛ばすように、二本の脚が「女らしさ」の視点で見られてしまうことに挑む。ひと言でいうなら、そ

          【映画レビュー】『水深ゼロメートルから』:露わな二本の脚が投げかけてくるもの

          【映画レビュー】『君たちはどう生きるか』:見たまま受け取るべき作品なのでは

           内容についての詳細が伏せられていたので、どんな映画かわからないまま観に行った。ほかの作品でそんなことをすることはまずないが、宮崎駿の最後の作品かもしれないと言われていたので、観ておかなくてはと思った。  しかし、実際に観てみて、どういう作品なのかを説明するのは難しいと感じた。だから、内容を伏せていたわけではないと思うが……  説明するのは難しいけれども、自分の中で整理して何かを語っておかなくてはいけない作品であるとも思った。というわけで、自己満足的な動機なのだが、この作品の

          【映画レビュー】『君たちはどう生きるか』:見たまま受け取るべき作品なのでは