見出し画像

水×現代アート ~社会変革の”触媒”としての水~

水×現代アートの取り組み、社会へのインパクトを考察します。
今回は、デンマーク出身のアーティスト、オラファー・エリアソン(Olafur Eliasson)です。

■水の現代アーティスト、エリアソン

水のインスタレーション作品で、世界的に活躍するのアーティストです。アイスランドの自然に親しみ育ったエリアソンは、光や水といった自然現象への感性が非常に豊かであり、それらを重要な要素として作品に取り入れています。

作品を通じて、自然と人間の関係性、環境問題、人間の社会的、文化的規範に関心を向けるキッカケを提供しています。

オラファー・エリアソン 1967年、コペンハーゲン(デンマーク)生まれ。
Photo: Brigitte Lacombe, 2016 © 2016 Olafur Eliasson

■水×現代アートによる問題提起

エリアソンの作品と問題提起について、具体的な作品例を紹介しながら見ていきます。

①ときに川は橋となる

『オラファー・エリアソン ときに川は橋となる』展示風景 2020 東京都現代美術館
参照URL:https://fika.cinra.net/article/202004-olafur_myhrt

『ときに川は橋となる』は、コロナ禍初期の2020年に製作されました。

暗幕に囲まれた空間に設置された水のシャーレにスポットライトが向けられ、その反射が上部の円形スクリーンに投影されます。水面に起こるさざなみによって投影された「波」の反射は、絶えず形を変えて流れる「時間」を象徴しています。

「ときに川は橋となる」という作品タイトルには、見えないものを可視化するという意味が込められています。波のリフレクションという現象を通じて、容易に見ることが出来る「外側」だけではなく、不可視である自分自身の内面、移り行く時間、そして人生を顧みる重要性を訴えています。
コロナ禍真っただ中の社会に対して、重要な問いかけを行う作品でした。

②Riverbed (川底)

リバーベッド(2014) / オラファー・エリアソン / ルイジアナ近代美術館
参照URL:https://www.pen-online.jp/article/001619.html


美術館の内部空間に、人工的な川を再現したインスタレーション作品です。

実際に水が流れており、いっけん自然な川にも見えます。しかし、白い壁で囲われた空間に生命の気配は一切なく、不気味な空気が流れています。現代社会に溢れる「人工的な自然」の違和感に気づかされるとともに、間接的に自然の雄大さや畏怖の念を抱きます。

来館者は、川の流れに逆らうようにして上流に向かって歩いていきます。歩みを進めていくことが本作品の核となり、意識を美術館の内部から外の世界へと拡張し、人と自然の接続を想起させます。

③Waterfall

滝、2016年 ヴェルサイユ宮殿、写真: Anders Sune Berg


The New York City Waterfalls、2008年 マンハッタン、写真: Wikipedia


エリアソンの代表作です。巨大で人工的な滝を、ヴェルサイユ宮殿やニューヨークのど真ん中やなどで展示しています。自然の力強さと、その喪失の危機を視覚化する取り組みです。

同プロジェクトは作品展示に留まらず、地域の歴史・文化財団や環境保護団体と協力し、環境問題のリサーチや教育の機会創出など、従来のパブリック・アートが有する枠組みを大きく拡張する成果もありました。

■水×現代アートの可能性

エリアソンの水、光、自然景観といった要素を用いた作品の中で、人々は思い思いにからだを動かしてみたり、同じ空間を分かち合う他者、そして自分自身と交流します。

巨大な水のインスタレーション作品のなかで人々が得る気づき。そのひとつひとつのチカラは小さいかもしれません。しかし、自然、社会、文化との関係性のなかで生きる私たちのアイデンティティーの復興、そして、限りある水資源と人々の接続を再帰するような、社会変革の”触媒”としての水の価値を感じます。

水の重要性をアピールする活動は多々ありますが、感性に直接的に訴えかける水×現代アートのアプローチと絡めることで、影響力を強化できる気がします。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?