ひとはみな、存在しているだけで何者である。
「何者かになりたい」
数年前から、こんな言葉をよく聞くようになりました。SNSをはじめとしたメディアには、「◯◯の人」と言ったネーミングに溢れ、「自分に固有のハッシュタグをつけよ」「自分自身をマーケティングする個の時代だ」と言われます。
こういう情報を日々目の当たりにしていると、「私は一体何者なんだろう」と誰もが一度は思うでしょう。私も、そう思い悩み、その結果(?)今となっては「コーチングお姉さん」として活動しています。(ネーミングをつけることがやや恥ずかしくもあります)
「自分は平凡だ」
「自分には特異なハッシュタグなんてない」
と、悩む方へお伝えしたいことがあり、今日は筆を取っています。
ひとはみな、存在しているだけですでに何者である。
何者、ハッシュタグというのは最近流行りのワードで置き換えているだけで、端的に言えば個性ですよね。
個性って、なんでしょう。
個人または個体・個物に備わった、そのもの特有の性質。個人性。パーソナリティー。(goo辞書)
人と違うこと?秀でていること?特有のこと?
隣を見回してみると、この個性という概念がいかにあやふやなものかに気付きます。私たちは、「個性的だね」などというとき、「ほかの人と違っているね」「普通じゃないね」といったニュアンスがあるように捉えてしまいます。人によっては個性的である=道を外れているなどネガティブな印象を持たれる方もいるでしょう。
誰一人として同じ人はいませんよね。全く同じ顔もいなければ、全く同じ経験をした人もいません。自分は普通に大学出て、就職して、特別なことは何一つしてないと言う方は、どんな学生生活を送り、何を思考し、感じ、行動してきたかを振り返ってみてください。
そしてそのひとつひとつが、誰かと全く同じものであるかどうかに思いを馳せてみて下さい。
秀でているか、尖っているかも、何と比較し、そう捉えるかによって、優劣や尖りなどはあるようものだとわかります。ほとんどは、社会的に構成された意味(常識、平均など)でしかありません。
こう考えてみると、ひとはみな、自分だけのオリジナルな個性が当たり前にあって、それぞれにこれまで歩んできた物語があると理解できます。
「平均」という概念も、数学的概念であり、物質的世界に「平均」も「平凡」もありません。
つまり、「自分は何者でもない。」と思うのは、「誰かと比較し、自身でジャッジメントしているから」そう思い込んでいるだけなのです。
これまでの物語を構成するのは自分自身
人は存在しているだけですでにそれぞれの人生の主人公です。今この瞬間、自分の人生をどう捉えているか。どんな出来事が記憶に残っていて、自分はどんな役割を担いたくて、今でも感情が揺さぶられる(自分にとって響く)キーワードは何か。
このように問いを向け、言語化していくことで、人は自分の物語を構成していけます。
そして、様々な環境変化や転機などによって、そのストーリーは脱構成→再構成を繰り返していくのです。
今までがむしゃらにやってきて、楽しめていた仕事に違和感がある
信じて疑わなかった人間関係が、物足りなく感じる
などのサイン(違和感)によって、「脱構成」のタイミングは訪れます。この「モヤモヤ期」は、誰にでも訪れるものなので、もし悩んでいる方がいればご安心ください。それは自分自身の変化・成長の第一段階かもしれません。
人生の物語は映画や小説などと違い、いくらでも書き換え(リフレーミング)、書き足すことが出来るのです。しかも今この瞬間から。
変化は、人が心から求めたタイミングで必ず起こせます。自分は変われないと思う方は、変わり方を知らないだけかもしれません。もしくは、今がそのタイミングではないのかもしれません。
脱構成、再構成、そして共構成
先述してきた脱構成、再構成は人によっては自分一人だけで出来るものです。(自己分析、セルフコーチングなど)
ここでお伝えしたいことは、物語(またはアイデンティティ)の共構成という方法もあるという視点です。
近年、ビジネス(特に人事領域)においてもナラティブ・アプローチという概念が普及してきました。
元々は臨床カウンセリングの現場で活用されていた対話を通じて、ひとりひとりの物語を構成していく手法です。
私はコーチングや、キャリアカウンセリングでこのナラティブ・アプローチを応用しています。
クライアントさんの人生を「物語」に見立て、幼少期〜現在までの記憶の断片や、好きな映画のシーン、主人公などからキャラクターアークして問いを立てる手法なども用いています。
このように、誰かとの対話を通じて物語を構成していくことを共構成と呼んでいます。
自分自身で認知していることは、自分にとっては当たり前になり、知らぬ間に潜在意識化していきます。そして強固な物語として構成されています。自分のことは自分が1番よくわかっているからこそ、それはいつの間にか無意識の領域で捉えてしまい、ほかの選択肢との境目がわからなくなっていくのです。
コーチやカウンセラーが、潜在意識に問いを投げ込み、クライアントさんご自身で言葉に出してみると、物語の輪郭がはっきりし、「自分でいることへの納得感」が生まれるケースもあります。
そういう意味で、コーチやキャリアカウンセラーは、唯一無二の物語を構成する際に効果的かもしれませんし、共にこれからのアクションのアイデア出しや、解釈の多様性を与えてくれる存在として価値があると思っています。
私もキャリアカウンセリング、コーチングを受け付けておりますので、ご関心のある方はお気軽にお問い合わせ下さい。
“自分”でいることは尊くて難しい
自分を生きていると、自分はどれだけすごい存在なんだ…とふと思ってしまうほど、自分の物語(エピソード)に捉われます。
「私は大した人間じゃないし」
「同僚のアイツと比べたら俺なんてまだまだだ」
などといった強固な物語は、「自分でいること」から遠ざけてしまいます。ひとりひとりが自分でいることを受容し、納得していければ、ほかの誰かにも自然とやさしさでつながれる、私はその世界観を信じてコーチングをお届けしています。
「自分でいることを受容」とは、自己肯定感や自己効力感を高めることではありません。むしろ、「自己肯定感が低い自分でもいいじゃん」「失敗したってOK」と自分自身で納得できることが自己受容だと思っています。
自分を、出来事をありのままに見つめる。
それはとてもシンプルで、難しくて、尊いことだと思っています。どんなあなたでも、ありのままでいい。ありのままがいい。
そんなことを本記事で、少しでも感じて頂けたら私もうれしいです。
絶えずあなたを何者かに変えようとする世界の中で、
自分らしくあり続けること。
それが最も素晴らしい偉業である。
ーラルフ・ワルド・エマーソン
以下、ありのままを観察する手段のひとつとして、マインドフルネスの研究と実践の第一人者ジェレミーハンターさんのtedもおすすめです。
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コーチとして活動しています。
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