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蛟#17時毎日投稿
2021年2月12日 16:07
アルが消えてから五年間は、それまでの生活となんらかわることはなかった。アルの家は鍵が空いたままだったので、勝手に私が管理していた。 アルがいなくなっても同じように家にいき、本を読み続けた。なにか特別なことがあったと言えば、12歳の春頃だったか、この家を出入りする子供が一人増えたことだろう。 彼は門番の子供で、幼いときから親から剣をならって過ごす。私と真反対の境遇の男だった。唯一の共通点は外
2021年1月3日 12:37
目を背けたくて背けたくて背けたくて。どうしようもなく、あなたが怖かった。あの日、いつかを誓った貴方と別れた日。こうやって、死ぬほど死ぬ気で生きているのに。このひとつの失敗はあまりに大きすぎた。暗い冷たく現実のものとは到底思えないこの檻の中は、皮肉にも太陽が当たれば、透明できれいな水が薄汚い自分を写す。いかにも、あの方は私を殺す気はないと。ああ、弱味を握り、心を握り、命を握る。
2020年12月23日 15:31
〿〿〿の続き少し筆が走りそうだったので、書いてみた。書けそうなら、もう少しこのあとも続くかもしれないです。御付き合い頂ければ幸いです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー またやり直す。またやり直す。またやり直す。 明日が来ようと、天気が変わろうと私には関係ない。 ちゃんとここまで走ってきたというのに。 今、貴殿はどこにいるのか。知らせる鳥はどこで死んでしま
2020年12月22日 14:44
死出の旅だと、そういったはずだ。 逃げ出したあの日のことはもう記憶にはなく、あれからどれほどたったのか、もはや今となっては興味すら湧かない。 若いうちに死ねるのなら本望である。きょうび希望など持ち合わせている者の方が少数であろう。 ここから抜け出せることができるとしても、その後のことは何も思い浮かばない。 君のように鋼のごとき鱗も曲がりなき忠誠心もなく、軟弱な体と虚仮の一